イベントレポート詳細Details of an event

第93回AGC Studioデザインフォーラム トークセッション
「ガラスの新たな可能性を探る」

2018年2月22日(木)
講演会/セミナー

弱くて、脆くて、だけど強いという、難しく魅力あるもの

 

木田 最後に、木原さんが手掛けられた建築のガラス施工例を少し解説いただけますか? お聞きしたら、非常に面白いものがあるので。

 

木原 ご紹介するのは、私がアイデアをバンバン出してデザイナーとしてつくったものというよりは、いろんなご要望や提案をいただいて、ソリューションしていった施工例の一部です。例えば、これは、あるお寺の八角堂です。この八角堂の丸い窓ですが、八角堂ですから内側に8面の壁があるわけですね。この丸い窓から光が差し込んだ時に、「八面をすべて照らせるガラスはないのか?」というお話をいただいたのです。製品としてはそういうものはないので、社内へいろいろ相談した後、若い建築家の方、久保津島建築設計事務所の久保さんと話して八方に広がる光を実現しよう、ということになりました。通常だと丸窓にガラスを入れたら、日が差し込んで向こう側の壁に光が当たるだけなんです。また光を拡散させる特殊なガラスもあるのですが、ぼんやりと拡散させるだけで、お堂の中がほんのり明るくなるだけなのです。ですから、いかにして8面の壁に光を分散させられるかが、ソリューションです。次の画像にありますように、ガラスの小口を斜めにカットして、先ほどの合わせガラスの要領で、くっつけたのです(板ガラスの小口の積層で面にする)。そうすると、入ってくる光が、ガラスと空気の屈折率の違いで、ある方向に曲がるのです。この画像は光を懐中電灯で小口方向へ入れた時のものですが、このように屈折させる角度を緻密に計算して加工すると、八角堂の全面に光が行きわたるだろう、と考えたわけです。緻密な計算をしてもらいました。で、これが出来上がったものです。灯台のレンズみたいになってしまったんですが、春分と秋分の日に直達した光が、お堂の中(の八面)に設置された仏像すべてをまんべんなく照らすという状況をつくりだしました。

 

木田 それはすごいですね。どこにあるんですか?

 

木原 東京都の港区にあるお寺です。

 

木田 その次の、この画像の事例は?

 

木原 これは私が開発に関わったものですが、古い民家だけに限らず、現在、耐力壁を増やして耐震性を高めるなどのことが行われております。それで、光も入れながら家を補強できないか、というテーマに挑んだものです。私どもの関係会社でAGCマテックスというところがあります。FRPのグレーチングですね、こういう格子状のものをつくって販売しており、これは建築家の方々にご好評で、いろんなところに使われています。その製品に、耐力壁と同じ壁倍率をとろうとしたものです。お見せしている画像は築150年の古民家ですが、こういうところに使っています。明かりをとりながら補強をする。通常、こういうところを補強する際は、壁をどんどん増やして、ますます薄暗くなってしまうものですが、こういうガラスを補強材として使えるわけです。これはいま、補強材として販売をしております。この延長線上に例えば、ガラスの耐力壁というものが近い将来、出てくるのではないかと思っています。

 

木田 ありがとうございます。そろそろ時間となりましたので、この辺で締めようかと思いますが、こうやって無事にできただけでもおめでたいと感じるチャレンジングなプロジェクトだったと思います。佐野さんはこれからもっとガラスと付き合われると思うので、何か、メッセージはありますか。

 

佐野 ガラスは、弱くて、脆くて、だけど強いという、難しく魅力あるものだと思います。やはり、きれいな素材なので、チャレンジしながら付き合っていけたらと思っています。

 

木原 ガラスというのは割れて、怖いものというイメージがまだまだあると思いますし、このショールームでご説明しておりますと、まだまだ知られていないと感じることが多いので、もっともっとガラスを知っていただきたい。先ほど、加工の基本というお話をしましたが、そういう加工のことをまとめた「アイデア・オン・ガラス・ディテール」という小冊子を、デザイナーさんのための情報をまとめてありますので、帰りがけ、お持ち帰りいただけたら、と思います。繰り返しますが、もっともっとガラスを知っていただきたい。

 

木田 そのためのショールームですものね。とくに1階の展示に呼び入れられて、中央のガラスのらせん階段を上ると、さらに詳しい知識を得られる。どんどん活用していただきたいと思います。本日はご来場いただき、どうもありがとうございました。

 

 

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