イベントレポート詳細Details of an event

第93回AGC Studioデザインフォーラム トークセッション
「ガラスの新たな可能性を探る」

2018年2月22日(木)
講演会/セミナー

ガラスであるとは、何なのか?

 

木田 今や、ガラス加工のことまで佐野さんは学ばれたと思うので、これからいろんなことができてきそうですね。日本の建築技術を使いながらも、ガラスがそこにうまく溶け込んでいく。それからnendoの作品もいくつか展示されており、この画像などもそうですよね。木原さんから見た場合「ああ、こう来たか!」みたいな部分がありますか? 技術的に。

 

木原 こちらの黒いガラスについては、もともと黒いガラスですね、熱線吸収する……。そういった成分、黒い発色するものをガラスの中へ練り込んでいるのだろうと思います。日本で、こういう真っ黒なガラスは売っていないのですけれども……。

 

木田 特注したら、旭硝子さんでもできますか?

 

木原 まぁ、たぶん。これは外国のものでしょう。それから、次のブルーの作品は、先ほどから何度も出ているカラーの合わせガラスですね。やはり、このグラデーションを出すために中間膜を工夫しています。この中間膜は、挟む枚数によって濃淡が付けられます。ですから、こういうグラデーションのバリエーションをつくることもできるわけです。これも特注仕様のガラスだと思います。

 

木田 これも初めてミラノで見た時、きれいだなぁー、と思いました。それと、これは?

 

木原 これもそうですね。先ほどご説明しましたがマットな仕上げといいますか、ガラスを摺りガラス調に加工して、小口接着の際に色を差している、という気がします。

 

木田 そしてこのガラスだけでできた椅子(FIAM社製)は、FacebookとInstagramに載せるために、ここに座ったのですが、最初はおっかなびっくりで(笑)、割れたら、どうしよう、と思って座ったのです。非常にスリリングな椅子でもありますが、チャーミングでもありますよね。ガラスは、こういう加工も可能なんですね。

 

木原 そうですね。これは、真っ平なガラスを、柔らかくなる軟化点といいますか、高い温度まで熱して、700℃くらいですかね。ガラスはその倍の1400℃くらいにすると、どろどろに溶けるんですが、いったんできたガラスを700℃前後に温め、おそらく型の上に置いて馴染まして、後ろの背もたれなどの部分には微妙な切れ込みを入れているんだろうと思います。

 

木田 本当にきれいな椅子ですけれど、奥行きがあり過ぎて、どこまでいっても背もたれがこないのです。私がちっちゃいから(笑)。佐野さんくらいの方が座られたらちょうどいいのかもしれませんが。でも、これだけ透明な椅子だと、すごく美しい木造の日本建築に入れたくなるような美しさがありますね。

 

佐野 150キロくらいまでは大丈夫と聞いています。

 

木田 ひやひやしながら座るのもまた楽しい。たぶん、ドーンと座ってみても大丈夫なんでしょうね。

 

木原 大丈夫でしょうが、例えば、ジーンズの後ろポケットにとんがった金具などが付いているような、そんな方はお断りしたい(笑)。

 

木田 ああー、そうですね。

 

木原 一応、申し上げますと、この作品はAGCで購入した椅子です(笑)。

 

木田 ただ、このガラスはAGCさんがつくられた……、

 

木原 そうですね。AGCのグラス・ヨーロッパから(FIAM社へ)供給したものです。

 

木田 ですから、この椅子を見て、AGCさんがいかに透明なかたちで世界に入っていっているのかが、よくわかると思いました。まさに世界企業ですよね。さて、これからのガラスの可能性をどうやっていけばいいのか、ということなんですが、佐野さんは「こんなガラスがあったらいいのに」と思われることはありますか?

 

佐野 もちろん、割れないガラスがあるといいんでしょうけれど。

 

木田 でも、それはガラスじゃない(笑)。

 

佐野 そうなんです。割れないのはガラスでない。今回、最初に考えたのは「ガラスであるとは、何なのか?」という根源的な問いでした。アクリルやポリカのように透明ながら割れない、あるいは軽くて曲がる材料などがある中で、ガラスらしさは何か、を考えたのです。いろいろなアイデアを出す中で、割れる、ということがガラスの面白さ、特長だと気づかされ、その割れ方みたいなものを製作すると面白いかもしれない、という気がします。

 

木田 そうですね、透明という可能性だけだったら、他の素材でもいい。なぜ、ガラスでなければいけないかのかを考えながら、クリエイターはいろんな思いを木原さんにぶつける、と(笑)。で、木原さんの側は、ちょっと困りながらも応えようとする。グラス・エディーダは、そんな構想なのかなぁと思います。

 

木原 佐野さんが「割れ方」と言われましたけれど、割れたガラスを展示するのは、相当困りますね(笑)。メーカーとしてはタブーな領域です。ただ、割れるとか、割れないという際、先ほど小口について「折って割る」というようなことを言いましたね。(人が触れられない)磨く前のガラスというのも、非常に魅力的なんですね。ガラスが自然に割れた部分、割れた部分というのは表現的に悪いかもしれませんが、その切り口は、一度見ていただきたいという気がします。原石みたいな、ダイアモンドを磨く前の、きれいな石みたいな感覚です。

 

木田 ここまで聞いてきただけでも、ガラスは、音との関りとか、映像との関りとか、あるいは、もっと触れていくことの可能性を探ってみたりとか、私たちが思っている以上にガラスの方からいろんな提案をしてくれている。今、そういう時代なのかなぁ、という感じがすごくしましたね。

 

佐野 実はほとんど意識されていないけれど、けっこう使われている。

 

木田 まず、スマホで、どれだけお世話になっているか。私も、おっちょこちょいだから、落としたりしてヒビが入って、すぐまた新しいものにしたりしますけれど。1日に何度、この上で指を躍らせているかわからない。

 

木原 このショールームをつくりかえたコンセプトでもあるのですが、やはり、いろいろなものをお見せして、デザイナーさんをはじめとした皆さんのインスピレーションを刺激するといいますか、最近は言い古された言葉ですが、ソリューションといいますか、何か困ったこと、あるいは何か作りたいものに対する、解決方法を展示してありますので、「こんなことができないか?」を見てもらう場でもあると思います。

 

木田 ちょっとくらいわがまま言っても、相談には乗っていただける?

 

木原 こちらへ来ていただいて「こんなことできないか?」と言っていただければ……。互いに、そういう課題があると、新しいものへの突破口になる。

1 2 3 4 5 6 7 8