イベントレポート詳細Details of an event

第93回AGC Studioデザインフォーラム トークセッション
「ガラスの新たな可能性を探る」

2018年2月22日(木)
講演会/セミナー

発想するのと、それをかたちにするのとの間にある、ものすごいロング・ワインディング・ロード

 

木田 で、付き合ってみてどうでした、佐野さん? ヒノキはものすごく親しんでいらっしゃる材料だから、暴れるなら暴れる、おとなしいならおとなしく、その性質を扱いなれていらっしゃると思うのですが、ガラスは?

 

佐野 やっぱり、木田さんのご指摘にあったように、ガラスはデリケートなので難しい。それこそ、うまく合わせてあげないといけない。

 

木田 なんか、気の強い女子みたいなものですよね。

 

佐野 ええ、だから、(精度を追求するために)ガラスが現場に来てから、ヒノキの細かい加工を合わせていく。それと、斜めのラインを出すのが難しいので、

 

木田 それはガラスの安定性の問題で、ですか?

 

佐野 いや、加工性ですね。斜めの面を極力出さないように形を変更したりしました。そういうデリケートな部分を、他の部分でカバーするかとか、それを何とかして見せる方法、例えば傾いて見せる方法ですね。この継ぎ手もそうですが、この形にカットすることは難しいのです。ですから、長方形のガラスを何枚も貼り合わせていくことで、横から見るとこのように見えますが、やっていること自体は普通の四角いガラスを貼っているんですね。そうやってできる形に合わせていくことで、対応できるんだなぁと。

 

木田 もし、もっと時間があったら、今のように暴れる状態でない木を使ってつくることもできる、ということですよね。

 

佐野 もちろん。

 

木田 これはすごくきれいなオブジェなので、欲しいという人がいるような気がする。時々、込み栓を抜いて、ヒノキの香りを嗅いだり、と。むちゃくちゃロマンチックな感じがするんですけれどね。例えば、マイアミなんかには欲しがる人がいっぱいいる。皆さん、マイアミっていうのは、デザイン・マイアミという、超富裕層向けのデザイン・フェアがあって、日本ではほとんど取材に行く人がいなくて、私は幸いなことに毎年、うかがっているんですけれども、ああいうところに買いに行く日本人がもっと増えてくれたらいいなぁ、と思うと同時に、これは外国の方にものすごく「欲しい」と思ってもらえるようなものだと思います。

 

佐野 そうであれば嬉しいですね。

 

木田 もう少し技術的なところを、皆さんはお知りになりたいと思うので、木原さんもう一度、そのあたりをお話しいただけますか? 佐野さんのオブジェに使われている技術について。

 

木原 よく見ていただければ、お分かりになると思うのですが、UV接着は光で接着剤が固まるので、位置決めや合わせに関しては、一般的な接着剤のように、一度付いてしまったからダメ、というのではなく、そういう手順に関しては時間的な余裕があります。最終的に決まってから光を当てるので、製作もの、一品ものでは非常に重要度の高い接着法だと思います。ただ、それを恒久的なものに使うとか、屋外で長く使うとか、あるいは衝撃が加わるような、例えばガラスの取っ手を付けるなどの使い方にはちょっと弱い部分もありますので、確認を要します。先ほど(ガラスの柱)のように中間膜で合わせガラスをつくるほど膜が厚くないので、ガラスとガラスが本当にくっつく。これはアクリルでも使える加工法ですけれど、ガラスとガラスが本当にくっついて、接着の厚みを感じさせないため、美術的な用途にはよく使われる接着法です。

 

木田 本当に美しいと思いましたが、こんなに技術の粋を集めた状態で、ようやくかたちになるものなんだなぁーと。良かったですね、佐野さん。

 

佐野 何とか出来上がって、本当に良かったです。

 

木田 発想するのと、それをかたちにするのとの間にある、ものすごいロング・ワインディング・ロードがあり、一緒に苦労していくという感じが今回は半端なかった。それから、木原さん、カラーガラスについても少し解説をお願いします。

 

木原 付け加えますと、今日、みなさま方が座っておられるこの会議室の向こう側の赤と、奥にはブルーのガラスがございます。これは「ラコベル」というガラス製品で、2階部分は「ラコベル・プリュム」という2ミリ厚のガラスなんですね。裏打ちをしてありますが、厚さ2ミリのガラスに色を付けています。裏側に塗料を塗っていますので、透けるという透明性を重要視したガラスの使い方をする時ではなく、壁として、壁装材として使うタイプのガラスです。それから、マットな感じのつや消しガラスを「マテラック」という名称で出しております。これも、館内では階段突き当り奥の応接室の壁などに使っています。金属質のものに見えます。それから、先ほどの中間膜などで色を付けたガラスを使いますと、「ラミトーン」という透明性のある色ガラスになります。さらに、このフロストガラスとか、つや消し、曇りガラス的な半透視型のものも出しております。適材適所で使っていただきたい。

 

木田 すごく豊富にあるんですね。ここのショールームは2階部分を歩くだけでもものすごく可能性を発見できますよね。

 

木原 他にも調光ガラスといって、電気によって透明度を変化させられる製品もあります。このスタジオは10時から18時までオープンにしていますので、明るい時に来ていただけると、そういう調光ガラスなども含め、じっくり見ていただくことができます。

 

木田 それと、旭硝子さんとエル・デコが、なぜ親しくなったかというと、ミラノという接点があったわけなんです。去年の秋に表参道ヒルズで、旭硝子さんがこれまでミラノ・サローネに出展なさった作品をまとめて展示するというエキシビジョンがあったのですけれど、私もそれを見て「ガラスって、こんなにいろんなことができるのか!」と驚きました。何か新しい可能性を秘めた、新しいガラスの可能性をミラノ・サローネにご出展なさっているわけですよね。木原さん、それを簡単にご説明いただけますか?

 

木原 この会議室の、こちらの壁にも3年分の写真を掲げておりますけれど、2015年からミラノ・サローネに参加するようになりました。1年目のテーマとしては「GLACIER FORMATION」という、氷河というか、氷のようなインスタレーションを、アーテンバークの川島範久さんと佐藤桂火さんがデザインされたものです。建築デザインではもちろんガラスを使うのですが、弊社は自動車や鉄道などにもガラスを供給しておりますし、家電、テレビやパソコン、あるいはスマートフォンなどにも供給しております。こういう製品では必ずデザイナーさんが関わるのですね。工業的なデザイナーさん、照明のデザイナーさんなどガラスに関わるデザイナーさんが多くいらっしゃる。実は、このショールームも建築系のプロのデザイナーさん向けに設けたという経緯がありますけれど、もう少し広いデザイナーさんと交流をしていきたい、広い分野への情報発信をしていきたいということでリニューアルをしたわけです。それで、この2016年の作品は非常に薄いガラスを使っています。スマートフォンなどの表面に使うような薄いガラスにコーティングをして、いろんな波長の光を反射するものですとか。今日は技術的なご説明をしませんが、いろんな波長の電磁波(光)を反射するコーティング技術も進化しておりますので、そういった技術を使っています。これは上から吊り下げているのですが、細かいガラスを、

 

木田 そうですね。こんな繊細な、風に揺れるようなガラスの姿は非常に新鮮でした。

 

木原 これは「Amorphous」という表題で、非結晶といいますか、一定の形を持たないガラスの分子構造とその多様性みたいなものを表現しています。デザイナーは太刀川瑛弼さん、ライティングは岡安泉さんですね。これは、2枚のガラスの間に、光を反射する中間膜を入れまして、映像を投影しますと、こちら側がスクリーン状になります。これらをいろいろな角度で立てて、いろいろな方向から映像を投影するというもので、その中を人が回遊していくというものです。

 

木田 私も回遊してみました。ちょっとおもしろい体験でした。ガラスがこういう風に語りかけてくることがあるのか、と。佐野さんに、この薄いガラスを使って何かつくってくださいとお願いすれば、また違ったアイデアになりました。

 

佐野 ああ、タッチがこれをやっているのか(笑)、と。

 

木田 タッチ、というと太刀川さん。

 

佐野 ええ、こういうものをやりたいな、と思っていたら、先に同じようなものがあって、「ああ、あの時に見たやつか」と思われないようにと意識したところはありました。

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