イベントレポート詳細Details of an event

第49回 AGC studioデザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.11連動企画
「安全・快適マンションライフの新技術ワークショップ」

2014年10月18日(土)
講演会/セミナー

はじめに

 

 

鍵屋 みなさんこんにちは、鍵屋でございます。今日は、新しい技術の紹介をしながら、安全で快適なマンションをみんなでつくるワークショップも開催します。
まず紹介するのは、私が実際に見て、話をして、凄いな!と感じた2社の技術です。ベンチャーとして成功するのが1000社に3つと言われる世界の中で、言葉では尽くせない努力を続けられて、見事に花を咲かせられた企業で、よくぞこの時代に、この技術を拓いてくださったというものです。

 

最初は、白いポリエステル繊維で、柱を包帯のように巻くことによって耐震性を高めるというような新技術です。実際にこの技術で既存の古いマンションの耐震性を高めて、東日本大震災でも多くの建物を守った実績があります。今日は、それを開発なさった構造品質保証研究所の五十嵐社長に来ていただきました。
また、もう1つの技術は、JAXAの宇宙ロケットに使用する断熱技術を応用した、ガイナという塗材です。塗料業界の革命児とも呼ばれる、日進産業の石子社長です。それでは、五十嵐社長から発表をお願いします。

 

「建築物+SRF」

 

 

五十嵐 今日は「建築物+SRF」というテーマでお話しいたします。SRF(Super Reinforcement with Flexibility/包帯補強)という技術について、および現代の建築物の問題点、さらにこの2つを足した場合に起きることを簡単にご説明します。
まず、現代の建築物は耐震補強がかなり実施されています。しかし、耐震補強が済んでいたにも関わらず、結局、取り壊しになった例が多くあります。さらに鉄板を巻いたり、鉄骨のブレースなどで補強したりしても逆効果になる事例もあります。
こちらの写真は、東北大学の建物です。1970年頃に竣工して、78年の宮城県沖地震では十分耐えました。しかし、今回の東日本大震災を受け、取り壊しになっています。ただこの建物は2000年に耐震診断をして、現行基準を超えるような耐震補強が完了しております。こちらの壁を厚くして、鉄骨ブレースをたくさん入れて補強したのですが、実際にはこのように柱が壊れてしまい、中はこのような状況です。見ての通り、ぐちゃぐちゃの状況になりました。当時、東北大学の井上総長がコメントを出されて「確かに倒壊しなかったのは良かったのだが、このような内部になるなら、研究施設としては使えない」と。その後、東北大学として6階建て以上は、鉄筋コンクリートで建てない、しかも免震構造にする、と明言されて、この棟を含め、たくさんの建物の上層階を切ったり、解体したりして、立て直し工事が行われております。

 

またこの写真は栃木県の中学校です。これは震災の前の年くらいに耐震補強が完了していました。2年かけてブレースを入れるなどの工事をした後、東日本大震災が起こりました。このようにガラスが割れて、柱にもひびが入っています。教室も写真のように酷い状況になりました。専門家にしてみれば、耐震補強をしていた建物だったので、すぐ現地へ確認に入りました。その結論としては「柱にひびが入っただけである」「窓ガラスが割れただけである」「蛍光灯が落ちただけ」「だから(今後も)大丈夫だろう。補修しよう」という結論になって、文科省は補修の予算を付けたそうです。ところが町長や教育委員会としては「一度生徒たちが逃げ出したところへ、もう一度入ってくれとは言えない」「怖くて、生徒たちが中に入れない」ということで、町が、取り壊しを決断しました。これは今年、お伺いした状況です。3階建てを取り壊して、この春から2階建ての新しい校舎に入っておられます。予算としては補修分しか出なかったのですが、町の予算で、解体・新築を行ったのです。

 

 さて、「免震」や「制振」というのは現在の先端技術であると見られていますけれど、実際にはかなりの被害が起きています。これはマンションの例ですが、このように制振のブレースがたくさん入っていますね。これだけの大きなマンションで、ここだけに制振装置を設置して効くのか、と思いますが、構造計算をすると「これでいい」ということになるのです。

 

結果、どうなったかというと、これが震災後の写真です。制振ブレースはほとんど壊れていません。ところが、壁にひびが入ってしまい、入居者の方々はいったん退去して、大規模修繕ということになりました。専門家が調査に入ると、このひびの入った壁は「雑壁である」と。「雑壁であるからこの壁が壊れても仕方がない」と専門家は評価します。しかし居住者にしてみると、この壁にひびが入ったことにより、ドアは開閉をできなくなる、すきま風が入って来る、鳥が巣を作る。雑壁が壊れた結果、マンションとして使えなくなってしまうのです。
実際、現代の耐震技術というのは建物の一部に装置を突っ込むというものです。例えば鉄骨ブレース、あるいは外付けのブレースなど。そういう制振装置を入れる。ところがそういう装置は、可動方向と直角の動きに対しては効かない。また免震装置でも横揺れには効いても縦揺れには効かないというものもあります。写真のブレースは、油圧で揺れを和らげるものですが、東北工業大学で、大震災の時、たまたまこのブレースの動きを見ていた先生がいらっしゃいます。やはり、想定された面内方向の揺れについては効いたのですが、方向の異なる面外にはギシギシと、効かなかったと言っておられます。
 それから、非構造部材についてですが、これまでの耐震計算というのは主な柱や主な壁しかカウントしない。つまり開口部や雑壁などは考えませんでした。しかしそれが壊れてしまうと住まいは成り立たない。「命だけ助かればいいだろう」という耐震基準の問題があります。
もっと大事なことがありまして、現代の建築技術は材料が基本です。ですから、材料がどの程度丈夫なのかと考えた際、例えば、この図は柱を横に切って上から見た図なのですが、こう鉄筋が入っていて、その周りにコンクリートの「かぶり」がある。この「かぶり」がないと鉄筋がさびてしまったりする。力を伝えるためにも、設計基準では4センチくらい表面にかぶりを設けることになっています。しかし、その内側にはもう鉄筋が入っていないので、揺れが続くとかぶりが落っこちてしまう。時間が経つと外側の表面から劣化して行きますので、表面的にはコンクリートがあるように見えて、こうなってしまう。この実験動画にあるように、揺らして行くと(動画の紹介)、こうなります。つまり、いくら鉄筋がたくさん入っていても、いくら丈夫なコンクリートを使っていても、4センチのかぶりが剥がれてしまえば(強度的に)終わり、というのが現代の耐震設計なわけです。

 

仮に東日本大震災と同じくマグニチュード9クラスの地震が来たら、(しかも関東平野の特性もあって)、長い時間揺れ続けることが想定されます。以前なら、阪神大震災のようなせいぜい1分~2分の揺れだったのが、今度は5分、10分と続く揺れに耐えなければなりません。しかしながら、揺らされる回数・時間が増えると、このかぶりが剥がされてしまう。今回、東北で被害が大きかったのは、そういう特性も関係しているとされます。
これは壁ですが(動画で実験を紹介)、こうやって壊れてしまいます。耐震補強では、ブレースを入れたり、壁を入れたりしますけれど、壁というのはある限界まで非常に丈夫ですが、そこを超えたら一気に壊れてしまう。中に鉄筋が入っていますが、鉄というのは繰り返し曲げたり伸ばしたりすると、だんだん形が元に戻らなく、いわゆる「塑性化」という現象が起きます。1回、2回の揺れはいいですが、100回とか200回も揺さぶり続けられるようなことがあると、だんだん形がおかしくなる。コンクリートの中の鉄筋が曲がって、中からコンクリートを壊して押し広げるということまで起きてしまいます。そういうメカニズムです。

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