イベントレポート詳細Details of an event

第51回 AGC studio デザインフォーラム
AGC studio Exhibition No.12 「新しい建築の楽しさ2014」展連動企画
「リノベーションは多様化する」

2014年11月20日(木)
講演会/セミナー

 

中崎 モデレーターの中崎です。

 

これから第51回のデザインフォーラムを開催します。これは1階で開催中の「新しい建築の楽しさ2014」と連動したフォーラムになります。出展作家の方々が2組から3組に分かれ、共通のテーマに沿って話します。まず、その1回目として、多様化するリノベーションというテーマを取り上げました。では、栗田さんの「HS project」の発表からお願いします。

 

 



栗田 まず、このプロジェクトの話をするにあたって、(13年に設立した)私の事務所の前の段階のことに触れておく必要があります。この「HS project」は、天王洲の敷地で実施しているのですが、私が、この天王洲から東品川あたりのプロジェクトに関わらせていただいたのは、以前勤めていた隈研吾建築都市設計事務所の時なのです。地図のちょうどここに、TYハーバーという有名な水辺レストランがあるのですが、そこを運営している寺田倉庫さんが隈事務所に「天王洲エリアのブランド価値を上げるためにどうすればいいか?」という相談に来られました。それを担当したのが私でして、それがきっかけで天王洲のマスタープランを描かせていただいたわけです。その際、天王洲をエコアイルにしようなど、方向性を考えるような話をしていました。

 

もちろん、実際に細かいところは思い通りに行かないのですが、それに取り組んできて一段落した頃に、ちょうど私も独立しようという相談を隈さんとしていたわけです。その独立の挨拶を寺田倉庫さんにしたところ「ちょうどレストランの対岸にリノベーションをしたいという物件があるのだけれど、隈さんには小さすぎるから、君、やってくれない?」という軽いノリで話をいただきまして、天王洲のマスタープランの一部を引き継ぐことになりました。もちろん、隈さんにも了解を得て(笑)、やることになりました。

 

 これが天王洲周辺の航空写真です。真ん中の島が天王洲アイルで、今回の敷地がこの赤い部分です。現在、ここの建物はある企業の施設になっておりますが、規模を縮小することが決まっており、先々、近隣の敷地と合わせて一帯を再開発するかもしれない、ということらしいのです。それで、まずはこの水辺の場所をリノベーションしたい、ということです。

 

今回の敷地は、この写真の通り、そのレストランから見えるこの部分ですが、運河に向かって完全に壁になっています。これを見ると、20年前、天王洲周辺のまちづくりにおいて、運河というものがポジティブな要素として捉えられていなかったことがわかります。このようにみんな壁になり、フェンスを張ってあります。これが今回の敷地の図面と写真です。これは道路側から見たその建物の外観ですが、まさにバブル期のユニークな造形をしておりまして、これを現代風にすることも課題として与えられました。このままでは借り手が付かないだろう、と。ちなみにこのプロジェクトで手をつけられるのは、外装と外構だけでした。その部分のリノベーションのみで、人が集まるような空間にしたい、ということです。建物の中はテナントが入った後にやる、という、まさに若手に振られそうなプロジェクトです。

 




これが提出した模型なのですが、大きく3つの要素を考えています。1つは、水辺に賑わいを戻す、水辺に積極的な居場所をつくる、ということ。強い日射しもあるので、軒など日除け、日陰になるような空間をデザインする。2つ目は、対岸からどのように見えるのか? という問題です。クライアントは対岸にレストランを持っているので、そこから見える景色が重要になります。対岸が良くなることで、全体のブランド価値も上がるわけですね。近距離から見たデザインに加え、中距離から見た風景も大事になります。

 

ところでこの一帯は昔、この写真にあるように貯木場でした。丸太がたくさん浮いていたわけですよね。そういう歴史があるので、雑然とした木の置き方をデザインに取り入れ、日除けのためのルーバーをパネル状にして並べました。3つ目の課題として、先ほどのユニークな形状の建物を空間としてリッチなものに変容させる必要があります。水辺のほうで組み上げた木のデザインを、内側まで入れ込むのですが、建物にべったりと付けるのではなく、僅かずつ隙間をつくっておき、その隙間をうまくデザインするというようなことを考えました。このプランで見ますと、こちらが道路側なのですが、3mくらいのスペースを空け、斜めに立て掛けるようなスクリーンをつけていきました。ここから海に向かうエントランスアプローチになっています。これまでは、ここに遮るようなものがあったのですが、それを取り外して、道路側からも海が見えるプランにしてあります。

 

先ほど言いましたような貯木場のイメージをファサードに付け、それを運河の方にも延伸させて、人をそこに誘うようデザインしています。そのように、これまで壁だった水辺へ人が出るようになれば、水上交通が盛んになるでしょう、と。そして天王洲の周りをぐるぐる回るような船が出てきてもいいですし、それを発展させると「妄想だ」と言われるかもしれませんが、この地図に示すような東京湾を回る「海の手ライン」みたいなものがあってもいいのではないか、と思います。このくらいの距離だと、JR山手線のように1時間で1周できるようなものになるのではないか、と、そういうことも話しながら、将来的には港湾関係の方々と相談して、それができるようになればいいね、とポジティブに考えております。

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