イベントレポート詳細Details of an event

第50回 AGC studioデザインフォーラム
U-35設計競技 「多様な光のあるガラス建築」 公開審査

2014年10月17日(金)
講演会/セミナー

「primitive(glass)hut」プレゼンテーション 高栄智史氏

 

高栄 高栄です。よろしくお願いします。
僕らが廃墟や遺跡などを想像した時、石で造られたものであったり、最近ではコンクリートで造られたものであったりします。そこで、窓などに使われていたガラスは真っ先に割れ落ちてしまって、もっともプリミティブな形だけが(この写真のように)残っている。まぁ、これはこれで美しいと思うのですが、これから何千年も経って、文明がなくなってしまったとして、例えば地球外から知的生物がやってきた時、コンクリートや石だけしか残っていなかったとしたら、人類としてあまりにも悲しいと思います。それで、ガラスというもので建築を、廃墟にも遺跡にもなり得る建築をつくれないか、と考えました。Primitive(glass)hutという名称をつけましたが「ガラスの無垢材」をコンセプトにしています

 

ここでちょっとガラスの歴史に触れておくと、紀元前3000年くらいからガラスが使われ始めて、大量生産できる製造法も開発され、建築にもガラスが大量に使われるようになり、フロートガラスというものが多く使われるようになっています。この製造方法を確立して行く中で、ガラスがインビジブルなものとして使われている。でもガラスが当初、使われ始めた時というのは、完全に透明なものはつくれずに、ステンドグラスで空間をつくっていた職人さんなどは、間違いなくガラスをインビジブルとしてではなく、ビジブルなものとして捉えていて、それで空間をつくっていた。インビジブルとしてのガラスの使い方は面白いと思うのですが、今回は、ビジブルなものとしてのガラス建築を考えています。

 

このコンペの歴代の受賞者の方々の展示は、総じて薄いガラスを使って、その繊細さであったり、脆さや儚さを掬いとっておられます。ちょっと残念だな、と思ったのは、最優秀作品の展示が終わった後に、それらが破棄されているということでした。せっかく200万円以上もの資金をかけてつくるのですから、やはり残る建築をつくりたいし、それを目指しています。

 

建築基準法を参考にすると、ガラスは透明材で唯一、不燃材として使うことができています。他の透明材は、例えばアクリルなどは何らかの処理をして建築に使わなければなりません。ガラスという素材を強くする方法は2通りあります。通常のガラスと強化ガラスがあり、強化ガラスはその加工した影響もあって、割れた時に一気に崩れてしまう特性があります。ガラスとしては強いのですが、無垢なガラスとして建築物をつくった時に、何千年という期間の中で、部分的に傷ついた場合、その建築がすべて壊れ落ちてしまうかもしれません。そうだとすれば、通常のガラスを厚くしていくことで強度を出すという考え方もできます。ガラスは、本来、割れても美しいものだと思っており、そういう(経年的な)割れも、デザインの中に取り込んでしまえばいい。ただし、薄いガラスだと、傷を超えて割れてしまいそうですが、分厚いガラスだと、力が分散されガラスの表面が欠けるだけでおさまるかもしれません。今回、提案しているガラスに厚みを加えるという建築は、薄い部分は割れても、厚い部分は欠けるだけで済むという仕組みです。

 

また、ガラスの透過性は90%と言われ、100%ではないところがミソで、どんどん厚くしていくと、光の透過性も少なくなっていきます。だから、厚みを変えると影の変化や透過性の変化も生まれます。これは厚みを変えた場合の変化を示した図です。厚みを変えていくと、厚さにより、どのように鏡面反射が起きるかを示してあります。このように厚みが変わり、それを見る人が動いたり、ガラスを見る角度が変わったりすると、ガラスの表情が変化していきます。これは実際に検証した画像です。厚みによってこれだけ違います。またこちらはプリズムを通した光の表情です。

 

今回の提案ではどのようなガラスを使うかについて検討しており、通常に使われるようなガラスではなく、オパールガラスや熱線吸収ガラスなども使おうと考えています。というのも、限られた厚みの制限の中で、その効果を最大限に発揮させるには、その2種類が有効だと思うからです。オパールでは表情が白っぽくなり、熱線吸収ガラスでは黒っぽい表情になります。

 

さて、実際にガラスの塊をつくるのに際して、今回は2つ用意しており、1つのやり方としては耐火石膏の型枠をつくり、そこにガラスを流し込んでつくるパターン。もう1つは厚みのあるフロートガラスを重ねていくというパターンです。ガラスをつくる時には冷却するための時間が必要になるので、ある程度低温度で融解するようなガラスを使い、もともとの製造にかかる基準温度を下げて製造期間を短くしようと思います。またフロートガラスを重ねるタイプに関しては、接着にさまざまな種類があり、それは追って検討する予定です。

 

展示に関しては、2カ所を予定しています。東京のこのスタジオで展示させていただいた後に、大阪での展示も予定されているということなので、移動させる手段も考えておかねばなりません。東京、大阪の次に、残すためのサイトとして、どこかへ移築することも考えておかねばなりません。いずれにせよ展示会場を移動することになるので、搬入出の方法まで考えねばなりません。搬入のクレーンが入れる重量は、最大2tまでらしいので、1ピースを2tで計算しながら建築の形をつくってあります。実際の作り方としては、450の幅のフロートガラスを、50のピッチを空けて敷き詰め、そこにクレーンで移動していきます。建築を移動するということは、移動するための利便性も考えなければならず、一方、建築を長い間維持するためには、そのための考えも必要になります。その2つを深く考えていくと、最終的にはすごくシンプルなものに行き着くのではないかと思いまして、それでこういうモノを積み重ねるだけの構成をとっております。

 

これは、今回の展示会場を想定したプランです。このような配置にしております。予算も限られた中で実行していくので、クラウドファンディングも考えておりまして、その特典としては最小限の茶室として使っていただくということも考え、茶道の専門家にも相談しながら、この図のように、最小限に収まる茶室空間を構成しています。建物をこちらに置いて、床の一部に荷重が集中しないよう計算してあります。今日は、構造担当者も来るはずだったのですが、仕事でこられなくなったので、代わりに少し説明しますと、長期荷重は抜群に保ちます。荷重が長期的にこうかかると、端から欠けていく(かもしれない)のですが、それにより角が丸くなり、構造が安定するということです。こういう屋根のところも、この解析図のようになっております。

 

最後に、AGCさんが長年培われてきた技術で、ガラスの性能が上がり、薄いガラスがさまざまな用途に使われるようになったのですが、逆に言うと、それによってガラス本来の良さや魅力が見えにくくなっている側面もあると思います。それをもう一度見直すような、僕たちがガラスという建築を残していくために、こういう提案も意味があるのではないかと思っております。

 

質疑応答)

 

佐藤審査員 塊のガラスというのは非常に魅力的で、いいと思うのです。積層ではなく塊でできるならいいと思うのですが、技術的には、これも相当の難問です。冷却のことを気にしているようなので、多少はご存知なのでしょうが、30cmとか50cmの塊になると、冷却に2カ月程度かかる可能性があるのではないかと思います。で、失敗できないでしょう? 冷却の途中で割れてしまうこともあり得ますよね。できるといいなぁ、という魅力を感じつつ、相当な難問だ、と思っています。だからといって単純に積層させるのも良くないと感じており、何か他に考えてみた代案はありませんか?

 

高栄 積層の接着する手法がいくつかあるので、接着する際に、それがあまり分からないような、小口が美しく見えるようにつくる、という手はあると思うのですが、今のAGCさんの25㎜厚のフロートガラスでつくるのが可能なので、選択肢として積層がいいのかな、と思っております。逆に、何かアイデアがあれば、恐縮ですがご教示いただきたいのですが。

 

佐藤審査員 ガラスを融かして塊をつくること自体は試されたのですか?

 

高栄 ちょっとそこまではやっていません。

 

佐藤審査員 あと解析も気になるのですが、こう建てた状態で、角の強度がもたなくて欠けるのですか?

 

高栄 長期的に荷重がかかっていた時に、ガラスが端から割れていくということを想定していて、それなら、割れた時にどのくらいの強度があるかを計算したということです。

 

佐藤審査員 解析のモデルの作り方にもよるのですが、応力集中するので、実際にはほんの少し面取りをすれば大丈夫とか、そういうこともあります。材料のリサイクルなど社会性についてはよく考えているな、と思いました。

 

平沼審査員 無垢のガラスといっても、一次審査のときとは違い、今日のプレゼンの画像を見ているとレイヤー的なものに変わってしまっていますね。移設のことまで分かっておられるのに、まさか2tというのは(笑)。重いですよね。移設と相反しているというか……。他の方々はSPOOLやLeoflexなど超薄くて、軽くて強くて、結果的に安全だ、というガラスを使おうとしている。ところが、まったく逆の、重くて、つくるのが大変で、危険かもしれない、という(笑)。ただし、佐藤さんが言われたように魅力はあるんですよ。その重さを違う手法で、提案して欲しかったような気もします。

 

高栄 ガラスのことを知らない人は、軽いと思っていますよね。でも、本当はかなり重い。19㎜のフロートなども、ものすごく重い。でも、その重さがいいと思うのです。その重さを表現したい。移動することに関しては、一応、4tトラックで全部積んで運べるように計算しています。それをしてでも、ガラスというものが本来もつ本質、例えば肌で触れた時に何かひんやりしているとか、尖って見えるとか、先ほど「危ない」と言われましたが、確かにそういうものだと思うのですが、そこに魅力があるのだ、とそういうところまで表現できればいいと思っています。

 

相武審査員 今年は特に薄いものや厚いものにこだわらずに、という条件になっていますが、薄いガラスがたくさん出てきて、1つだけガラスの塊感、存在感と言ったほうがいいのでしょうか、そういう点では非常に面白い提案をしていただいたと思っています。今、薄い商品が脚光を浴びていますので、薄いガラスが(いい提案で)売れたら確かにありがたいのですが、ガラスを製造するガラス屋としては、薄いものも厚いものもそれぞれに魅了を感じています。確かに佐藤先生が指摘されたように、あの大きさの塊をつくるのはかなり大変です。例えば、カメラのレンズも壷みたいなものに入れて、1カ月2カ月というオーダーでゆっくり冷やしたうえで、その中からすごく出来のいいものだけを取り出すということをやっています。そういう作り方だと、このスタジオに持ってくるのは厳しいかな、と思います。しかし、積層にするとその提案された魅力はかなり落ちてしまいますし、可能性が無いことはないのですが現実的にどうやってつくるか、を考えてしまう。25㎜厚の積層のもうちょっと上のサイズを考えてみるなど、何かいいアイデアはないかな、と考えてしまいますね。

 

*この後、一度中断し、別室で最終審査が行われた。

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