イベントレポート詳細Details of an event

第50回 AGC studioデザインフォーラム
U-35設計競技 「多様な光のあるガラス建築」 公開審査

2014年10月17日(金)
講演会/セミナー

「木漏れ日のテント」プレゼンテーション 岩田知洋氏+山上弘氏

 

岩田 岩田+山上建築設計事務所の岩田と申します。今日は、代表して私がプレゼンを行います。

 

まず、ガラスについて少し話しますと、ガラスは建築において外と内の境界を分ける透明な板状のものとして使われることがほとんどです。ガラスは視覚的には透明で、内外が連続して見えるなど「存在していないようで、実は存在している」ものであります。その透明さが都合良く利用されてきたとのイメージがあります。また、ガラスは硬質的なもので、従来のガラスには「硬い」との印象があります。そこで、今回は、ガラスのその透明さと硬さについて再考し、硬いものと柔らかいものが共存できる空間について考えました。

 

今回、提案する建築は、布のように編み込まれたガラスと、それらを支える支柱で構成されています。この「編み込まれたガラス」とは、ガラスを細い短冊状に割き、縦と横に均一に編み込むことで1枚の布のような状態のガラスをつくります。硬いイメージのガラスが布のようになることで、硬さと柔らかさが共存できる状態をつくりだしています

 

画像にありますように、0.05㎜厚のアルミロール板をガラスの代用品とし、編みガラスの検討を行ってみました。実際に使用するのは旭硝子製の「SPOOL」0.05㎜厚の予定です。こちらが、それによって構成する建築です。その布のようなガラスを支えるやぐらは組み立て式とし、単純な構成にし、4本のスチールパイプを使用しています。これをやぐら形状に組み、柱の先端に十字にフラットバーを架けてあります。それらのフラットバーは両端がフリーになっており、自重で垂れ下がります。これによって、布のように変容した編みガラスの形状を支えます。

 

次の写真と図は、ガラスを編むことによって起きる光と影の関係です。布のように編み込むことで短冊状の1枚1枚のガラスがそれぞれ光を反射し、1枚のガラスの反射では見られないような反射を見せます。こちらの写真は、2枚の板ガラスを縦方向に重ねて検討を行ったものです。自然光の下、かざしてみて、光の反射の検討を行いました。0.05㎜厚というガラスでは検討をできなかったので、2㎜厚の板ガラスで行っています。このように編むことによってたくさんの小口が縦横に発生し、それらがきらめくような様子が見られます。

 

また、次の画像にあるように、こちらではガラスの反射と木漏れ日について検討を行っています。実際には表面が曲面になるので、風景はさまざまな方向へ反射され、一方、木漏れ日のほうは直線状ではなく湾曲した状態で柔らかく降り注ぎます。実際に使用する超薄板ガラスSPOOLは、非常に柔らかく薄いのですが、今回は安全性を考え、0.05㎜のものを2枚合わせた「合わせガラス」にしてから編んでいます。つまり、0.1㎜厚くらいになり、イメージとしては(飲料等の)アルミ缶で使われる厚さや、人間の髪の毛の太さが、だいたいそれくらいになります。

 

今回はそのような合わせの編みガラスを3m四方に組み上げてガラスの布のような状態をつくります。重量については非常に軽く、3m×3mで約2.25kgとなります。こちらが平面図で、右が断面図です。展示形状は3m四方に編み込んだガラスを支柱に架け渡すことで形状をつくっております。実際には、垂れ下がった形状の十字の方向から人が中に入られるように高さを設定しております。人は、この中に入ったり出たりしながら編んだガラスの光を体感することになります。

 

ガラスの小口に関しては、ガラスを2枚使用しますので、交互に編み込んだエンド部分は両面テープで納める形になっており、編み込んだガラスがバラバラにならないようにします。(こうした展示により)反射や透明などガラスのネガティブあるいはポジティブな捉え方を、一度リセットして、建材としての新しい使い方のきっかけにできるのではないかと考えております。

 

質疑応答)

 

佐藤審査員 私は構造家の立場から技術的なことや構造のアイデア面などを注目しています。この案では真ん中を支えとして両端を1.5mのキャンチとして空間を覆うように設置していますが、その端を垂らす意図はどのようなものですか?

 

岩田 ガラスを布のように扱いたかったので、硬かったガラスを、布のように柔らかく扱うことで、硬いものと柔らかいものを同時に存在させたい、と考えています。そういう狙いから、人間が入れる程度のテントのような形をつくり出す時に、真ん中を持ち上げて、エンドの部分がカーブを描くようにしました。

 

佐藤審査員 1.5mをキャンチとして出せるとすれば、例えば4m四方を覆うドーム状のものもできると思います。編むという構造を提案しているので、さまざまな曲面を形成できるはずで、その特長を活かすといいかな、と思います。ちなみに、今、ちょっと計算してみたのですが、0.05㎜厚のガラスで単純に1.5mのキャンチを出すと、厚さが10倍くらい足りないと思います。この形状にすることでかなり強くなると思うのですが、それで強度を補えるという検証をしていますか? 例えば、これはアルミで検証しているようですが、これは実物大ですか?

 

岩田 このアルミのモックアップは、実際手に入る大きさの40cm角で検討しました。このアルミで検討をした後、構造の専門家に相談してモデル解析を行いました。実際は、真ん中を1本の支柱だけで支えて垂らしてみたところ、本当にすぐ垂れてきてしまって、キャンチという形状は無理だと。そこで、5㎜くらいまで厚さを増して検討しても、同じように垂れてしまったので、四方が垂れるようなこの形状に均一に編み込むことで四つ角が垂れたのではないかと考えています。1枚ではこういう形状にならなかったものが、編むことで、こういった形状になると考えています。ただ、ガラスが薄いことによって、すぐ垂れてしまうことを補うために、このようなフラットバーを使って支えるという構想になりました。

 

佐藤審査員 まだまだ柔らかいですよね。それと、折れるかどうかは検討してみましたか? 2枚の合わせガラスが0.1㎜厚として完全に働いたとしても、まだ強度が足りないと思うので、形状の検討はもっと必要だと思います。

 

太田審査員 最初のパネル発表(一次審査)のイメージとだいぶ違うので、「あれ?」という印象を持ちました。そうなった理由を知りたいのです。編み方も変更していますよね。それから、これは展示のコンペでもあるので、下の展示スペースに設置した際に、京橋交差点を歩く人の注意を引けるか、スタジオに入ってきてくれるか、ということも気になります。展示した際のアピールポイントはどこにありますか?

 

岩田 まず編み方について、一次審査時の3方向から編む手法は、日本の竹かごの編み方をイメージし、参考にしたのですが、実際にその編み方を調べていくと、編む際にガラスを折り曲げて捻らなければならないということが判明しまして、ガラスで行うのはかなり難しいと判断しました。そこで、より単純な縦と横方向で組むことにしたのですが、それによって小口がたくさん発生し、曲線を描いていることからキラキラと反射する効果を出せると思います。また展示については、ガラスが垂れることに対して、人のアイレベルでその編み込んだものが目に入ってくることで、その沿道を歩く人から見ると、人の動きにつられてガラスの煌めきを感じることができると思います。

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