イベントレポート詳細Details of an event

第45回 AGC studioデザインフォーラム
コミュニティ・アーキテクトによる子ども教育セミナー
~未来への防災まちづくり~

2014年6月21日(土)
講演会/セミナー

平田 こうした活動を通じて、地域の大人から子どもまで一緒に取り組んでいるのですが、次に、建築関係者が活躍している避難所の例をご紹介します。

 

この方は、横浜市あざみ野で地区の町会長をやっておられます。かつて建築学科を卒業し、建築業界で働かれてリタイアなさった方ですが、地域デビューして現在、活躍なさっています。すごく対策が進んだ避難所になっていると思います。今、「避難所」と呼びましたが、この「あざみ野第二小学校」は正式には避難所ではなく「地域防災拠点」と呼ばれています。この地域の方々に、先ほど紹介した「家族で取り組む防災ワークブック」を使って運営の工夫をなさっています。このエリアは約3680世帯、約1万人の方が住んでいるコミュニティです。

 

ここが進んでいるのは、こうしたいろいろな専門家の方々を呼んできて訓練し、実践的なことまで取り組んでいるのですが、このような訓練メニュー、スケジュールを立案しているところがすばらしいのです。建築出身の方は全体をコーディネートする力がありますので、訓練のシナリオを作られるのですね。このようにシナリオをつくって、実際に多くの人が動いていきます。その参謀役みたいな役割ですね。

 

もちろん子どもたちもこのシナリオに組み込んでいます。文字が小さくて恐縮なのですが、大きく分けて3つあります。まずは、地域防災拠点を運営するための実践的な訓練、これはオーソドックスな訓練です。もう1つは、災害時要援護者と呼ばれる方たちがおられますが、地域の福祉関係の施設、男女共同参画センターを巻き込んで「要援護者」への対処も訓練しているのですね。一般の防災活動では、防災と避難を分けて考えがちなんですが、この方々たちは、けが人が早く搬送されなくてはいけないということにも注目して、運ぶ技術に加え、アマチュア無線の愛好家の方々に、そこへ行ってもらって情報発信、伝達をするようにしているのです(発災直後は携帯電話を使えない可能性が高い)。

 

文京区の進んだエリアもそうなのですが、緊急時の連絡手段と体制を整えている特長があります。あざみ野では、さらに医師や歯科医師、薬剤師、看護師といった専門家と一緒になって効果的な訓練をされています。もちろん、これがすぐにできたわけではありませんし、立案直後は学校側の理解もあまり得られませんでしたので苦労なさったのですね。少しずつ進められて、2010年に医療関係者やアマチュア無線の方々と連携し、2012年には小学校を巻き込んで、子育て世代を取り込んでいきました。また2013年には「女性の視点で災害弱者を考える会」をつくり、要援護者への取り組みや高齢者施設のスタッフ、男女共同参画センターとも連携しています。避難所で女性の意見が取り入れられず問題になったことはご存知と思いますが、そういう理由から男女共同参画センターにも入ってもらっているわけです。

 

このようにさまざまな問題点に踏み込んで行った結果、ネットワーク力があるのですね。それをコーディネートして訓練している。訓練内容も大切なのですが、ネットワークをつくるのが大事で、これは建築関係者が得意とするところですし、図面を描いて説明できます。住民の中には、こうした集まりに出た時にカッターナイフすら、うまく操れない人がいるのです。そうなると、避難所の通路の設営などできません。そうしたことに対して建築の方々は図面を描いて、指導・訓練することもできます。

 

この写真をご覧ください。これは備蓄品です。みなさんの最寄りの避難所に行かれると、こういう備蓄品はまずありません。ここは簡単な外科手術ができるほど高度な医療器機類、滅菌された医療材料等がここに入っています。そして地元の医師の方々がきちんと訓練時に参加して、住民に挨拶しているのです。こういうお医者さんですよ、と予めコミュニケーションをとっている。したがってこういう訓練に参加しても、おみやげなど何ももらえないのですが、高い参加率になっています。それから、これはトリアージの訓練風景です。結局、何が市民参加度を高めているのか、正確には分かりませんが、例えば、一般市民の方々は町内行事のバーベキューなどに数百人単位で参加しておられます。また簡単な講習を受けて防災知識と行動を知った「家庭防災員」という方々を各町内で養成しています。その上に防災リーダーとしての自治会がいる、という三層構造になっているわけです。こういう層の厚い構造になっている地域は多くないと思います。

 

以上のようなことを考えてきますと、みなさんのような「中間支援者」が活躍してくださることにより、活動を担う若い世代の活用も可能になります。文京区の防災訓練に参加していますと、70代の方が一生懸命に取り組んでおられて、それで大丈夫なんだろうか、と思います。やはり、建築出身者の方に専門知識を活かしてもらいたいのです。
また周辺の事業所・施設とも連携することも重要で、そういう人たちの力を借りないとやっていけません。先ほど言ったように避難所が人で溢れてしまう可能性もあり、そういう場合は代替施設を見つけなければならなくなります。そうした時に、建築の方など地図を正確に読める人、あるいは、ここだったら水を得られる、などすぐ分かる人、そういう人たちが本当に必要です。

 

訓練内容を高度にすることも必要なのですが、あざみ野のように、多くの人を巻き込んで行くことが大事になります。そういうコミュニケーションをとっていただく活動をしてもらい、日常からのコミュニティ活動を維持・活性化するようにしてください。防災時だけ急にコミュニケーションがうまくいくようになることはありません。コミュニティ・アーキテクトの方々の力を必要としているところがたくさんあります。地域が自分たちで考え、動いてみるような支援をしてください。そうすることで、地震後の立ち上がりが非常に早くなります。

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