イベントレポート詳細Details of an event

第45回 AGC studioデザインフォーラム
コミュニティ・アーキテクトによる子ども教育セミナー
~未来への防災まちづくり~

2014年6月21日(土)
講演会/セミナー

平田 さて次は、首都直下地震のタイプを分類したものです。
首都直下地震とは、都市の真下で起きる地震のことを言っています。ご存知かもしれませんが、地震には2つのタイプがあり、東日本大震災のような海溝型地震と、阪神淡路大震災のような活断層型地震があります。首都圏の場合は地下構造が複雑とされ、この2つのタイプともに起こり得るとされています。関東地方南部のいずれかの地域を震源域として、マグニチュード7クラスの地震が数十年間隔で発生しています。1855年、安政2年に起きた安政江戸地震のタイプが、もっとも起こりやすいタイプの地震と考えられています。どこで、どのように起こるかも分かりませんので、現在、東京都あるいは中央防災会議が、その想定をしております。

 

震源の位置と地震の規模によって被害も変化するのですが、現在、23区の被害が最も大きくなるのが、東京湾北部地震と考えられています。東京都の算定によると、おおよその地域が震度6強になります。3.11以降、地震の活動期が終わったかのように誤解されて方々も多いのですが、その考えを改めてもらわなければなりません。

 

また震災による経済的な被災額を計算、試算した数値もあります。阪神淡路大震災は、当時、世界で一番多いとされる被害額でしたが約10兆円の被害。また東日本大震災では約17兆円だった、と。これだけでも巨大な損失で、それにより私たちの生活と国の借金や経済がどのように変わったかを、身をもってご存知と思います。しかし、もし、東京湾北部を震源とする首都直下地震が起きますと、推定で約112兆円という、ひとけた違う莫大な被害額になります。これは国家予算の約1.4倍にあたります。

 

さらに、これと同時に南海トラフを震源とする東海・東南海・南海地震が連動して起きますと、その被害額は約81兆円と推定されていますので、合計で約200兆円という、国家予算の2倍もの、日本政府の借金として返しきれないくらいの損失が発生するかもしれません。どうにかして、その被害を減らさなくてはならない、そのためには防災を徹底することが必要です

 

そうするにあたり、建築物を安全にしていくことが一番の近道なのですが、それを考える際の事例として、この資料を持ってきました。
JSCAが出している「目標耐震性能」のメニューです。建築基準法クラスですと、だいたい震度6強が目安になりますし、建物のグレードによって被害が変わるわけですね。

 

こういうものは建築界の中では常識ですが、現実には大破することを許容していることになります。建築基準法は大地震後の無被害を保証するものではありません。だから基準法が守られた建物でも被害が出ます。しかし、一般の建築主の方々は大破を想定していないので、そうなった場合、建築主の方々は非常に悲しみや怒りなどの感情を持つという結果になります。だからこそ、事前に知っておいた方がいいのですけれど、現在は専門家と建築主の間にギャップがある状態です。そこで、コミュニケーター、設計者はそれに適していると思うのですが、コミュニケートする人が特に必要です。

 

 ただ、今回のように子ども向けのことを考えるなら、注意事項があります。お子さんにいろいろ教えるわけですが、例えば高校生に対して授業をした時、あの年代はアニメのゲームなどに非常に高い関心を示します。それと関連させて、住宅のインテリアなどに対して非常な盛り上がりを見せてくれることもあるのですが、自分たち自身が住宅を建てるとか、買うということの意識がほとんどなく、話を聞いてくれないことが多いです。ですから、彼らの興味を引きつけるためには工夫が必要と思います。

 

 さて、防災の基本的な要素は何でしょうか。それには大地震発生前段階として2つの要素があると考えます。
1つが被害を小さくすること、被害抑止です。例えば、合わせガラスにするなど設備を強化することなども大切です。一方で人間の防災意識や知識も高まっていかないと、うまく防ぐことはできません。被害を小さくするハード的なことと、人間の意識を向上させるソフト面の強化、の2つを同時に行うことが大切です。被害抑止は専門家や行政が主体となって取り組み、一方、住民の方々が主体的に訓練に取り組むなどしなければなりません。

 

そして、災害が発生してからは、もう2つのファクターがあります。1つは社会の回復力にかかっており、1人ひとりの力、また地域コミュニティの力が問われます。もう1つは支援体制で、行政なら支援物資を運んで来るなどのバックアップ体制が問われます。東日本大震災では、このバックアップ体制が、日本では強かったので、日本の底力と言われましたが、今述べた4つの要素を揃える必要があります。
特に、この住民側の意識・知識を上げないと、どんなに建物の安全性を上げても命を守ることはできません。日本人は地震に関する相当な知識がありますし、地震速報や津波警報など世界にはない情報手段を持っており、すぐれた国民性があると思いますけれど、それでもなお大きなリスクを抱えているので、回復力と普段の意識を高めておくことが必要です。

 

そのように大地震に対する被害を想定しているわけですが、そういう大地震ではさまざまなことが同時多発的に起こりますので、役所や消防、警察など行政の対処には限界があります。そこで、住民サイドもただ待っているのではなく、地域コミュニティが自立して行動できる力を付ける必要があり、その力が、今、一番足りないところだと思います。
そもそもかつて地域コミュニティに存在した力が、しがらみが薄くなるにつれ希薄化していますし、23区では高齢化も進んでいます。ただ一方で、アンケート調査などをすると、防災に興味を示してくれるのは40代以上の方々が中心で、働き盛りとか遊び盛りの成人は、あまり興味を示してくれません。そして日中、その地域コミュニティに残っているのは、お年寄りと子どもと主婦層しかいないのです。
ですから、専門知識を持つみなさんが働きかけて、住民にリスクを正しく評価してもらう必要があります。一般の方々にリスクのことを説明していくと、誤解される方、客観的に捉えられない方もいらっしゃいますので、そういうコミュニティのサポートをする中間支援者が必要で、その部分を建築関係者に期待しています。模型を作られる、図面を読めるなどみなさんの技能と力は地域コミュニティにすごく有効です。ですから、まずは地域の状況や課題を見極めていただくことが大切になります

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