イベントレポート詳細Details of an event

第45回 AGC studioデザインフォーラム
コミュニティ・アーキテクトによる子ども教育セミナー
~未来への防災まちづくり~

2014年6月21日(土)
講演会/セミナー

第一部 講演 「コミュニティ・アーキテクトによる子ども教育~未来への防災まちづくり~」

 

 

平田 こんにちは。日本女子大学の平田と申します。
まず「コミュニティ・アーキテクト」について簡単にご説明します。 すでにご存知かもしれませんが、この言葉は最近、よく使われる言葉ですが、サスティナブル・デザインやコミュニティ・デザインという文脈の中で問われてきた流れがあります。
日本建築学会が行った特別研究では「地域にサスティナブルなエリアのデザインを提案する時に、そのコミュニティ・デザインの担い手をコミュニティ・アーキテクトとした」とあります。ですので、タウン・アーキテクトや一般のアーキテクトと違うのは、、建築のデザインもするけれども、地域診断からまちづくりまでを一貫して行う人材のことをコミュニティ・アーキテクトである、と定義しています。

 

他にもいろいろな定義があります。実際にはもっと広い意味で使われていますが、コミュニティ・アーキテクトに期待される役割は2つありまして、最近、行政は小さな政府を目指しており、どちらかというと、住民が自主的、自律的に動くために、役所の専門官が果たしてきた役割を相当程度民間側でカバーする必要性が生じているわけです。

 

また、住民の自助活動やコミュニティビジネスとしてのまちづくりの支援が求められています。近藤民代先生は、コミュニティ・アーキテクトについて、①コミュニティという物理的な地域生活空間を対象として、あるいは②コミュニティをクライアント・パートナーとして、③コミュニティを活動拠点として、建築の計画・設計や都市デザインを行う建築家、と定義しています。おおよそこれでお分かりと思いますが、こうした特徴を持った、コミュニティと一緒に仕事をするような、そして道具として、それが成り立つようにする、ということも指摘されています。
このようなコミュニティ・アーキテクトになりますと、コミュニティと一緒に動くために、地域と共に動く必要が出てきます。

 

そして今回のテーマは防災ですので、防災の面で地域コミュニティを支援していくために、動き出す前に大事なことがあります。

 

1つは、地震などの災害リスクの想定を適切に行うことがとくに重要です。やみくもに備えればいいのではなく、コストパフォーマンスを考えた適切な認識が重要です
もう1つは、私たちは地域の大人たちが抱えている実際の問題をご紹介していきますので、大人の目から、子どものためにはどういうシステムが必要で、何ができるか、を考えてもらいたいと思います。その正解を子どもに押し付ける必要はありませんので、みなさんが建築家として発想していただくことが必要だと思います。
特に新築が減少しているこれからの社会では建築家の職能もまた変化する、ということがあると思います。つまり、まちに入り、まちで見捨てられていたものに価値を見出し、新しくデザインして蘇らせる。こうした新しい取り組みが行われています。そうした力を育てるには、みなさん各人の発想力が重要になります。その発想力を育てるためにも、本日の事例を紹介していく中から、みなさんが判断して構築する、ということをしてみてください。建築家というのは、英語で言うとアーキテクトですよね。建築者、構築していく人、という意味です。この、構築していくということを大切にしていただきたいと思います。

 

では事例を紹介します。まずは「地震の被害を適切に想定する」です。一般の方々と防災活動をしていてすごく困るのは、怖がって過剰に反応されるということです。大切なのは、どの地震に対してどのように備えるのか、ということです。

 

この図は、日本政府が検討しているこれから起きる大地震に関するものです。震源が赤で示してあります。みなさんもご存知のように、首都圏で一番恐れられているのは、首都直下地震です。30年以内に70%程度の発生確率とされています。これが50年以内だと90%の発生確率になります。ということは、ほぼ起こるだろう、と言えます。
もう一つ知られているのは、震源が南海トラフ沿いにある、南海地震、東南海・南海地震という3つが連動する危険性が指摘されていますね。この場合は死者が30万人を超えるのではないか、と推測されています。
それ以外にも、阪神淡路大震災と同じエリアの地震活動は収束していませんので、このエリアの地震、それから北海道と東北を対象とする、1000年に1度くらいしか起きない大きな地震、これが前の発生からすでに1000年が経っていますので、津波が心配されています。この津波が、先の震災と同じエリアにまた押し寄せるかもしれない、といったことなどを政府は検討しています。

 

で、その中で発生確率、ハザードと言いますが、ハザードが東海地震ですと30年以内の発生確率が87%あります。これは単独で起きる場合もありますが、東南海や南海と連動する可能性が高いと考えられています。またその影響を受けて関東大震災までが引き起こされると考える人もいます。30年以内では南海トラフで大地震が起きる可能性が60~70%、というハザードに達しています。
みなさんは一か八かという言葉が示す確率が50%であることをご存知と思います。その一か八かを超えているという認識を持たねばなりません。確率というものはなかなか認識しにくいですし、みなさんの中で死亡する確率を認識するのは、誰にでも難しいことだと思います。だれしも死んだことが無いので、そういう未経験のことについては、現実感を持って認識するのは難しいのです。こうしたリスクを想定して適切に対処する必要があります。

 

この図は、大地震の歴史を見たものです。東日本大震災と同じ規模で同じ地域を襲った大地震がおよそ1000年前、西暦869年にありました。その前後に起きた地震や火山噴火を年表でまとめたものです。まず、869年に三陸沖で起きた地震は、貞観地震津波と呼ばれています。その直前に富士山が噴火しています。このように辿っていきますと、いろいろな噴火が続いていることが分かります。
今までマグニチュード9クラスの大地震で火山の噴火を伴わなかったことはないのです。ですから、今回の東日本大震災では、それがまだ起こっていないのかもしれません。ただ、小笠原の西ノ島で海底火山噴火から新しく島ができましたね。あれが、関連噴火であってくれればいいのですが、何か別の形で噴火が起こるかもしれません。過去の歴史と同じようなことが繰り返される恐れもあります。恐ろしいことに、その869年の9年後に、関東地方で大地震が起こっています。つまり、次の大地震に備えて私たちの防災に残された時間は、実はわずかかもしれないということです。
歴史が繰り返すかどうかはまだわかりませんが、その18年後には京都で大地震が起こった記録がありまして、これを南海トラフでの地震と考えている研究者もいます。やはり、私たちにはあまり時間的な余裕がないかもしれないのです。特にお子さんを相手にする場合には、それらに対して備えて生きて行くしかない、と。先ほどの震源で見ていただいたように、西日本を含め、日本のどこにいても自然災害が起き得る、ということを私たちは考えなければならない時代になっています。

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