イベントレポート詳細Details of an event

第43回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念トークイベント

2014年4月25日(金)
講演会/セミナー

●ディスカッション

 

 

太田 ディスカッションということで、ここにいるメンバーと岩瀬さんを交えてお話したいのですが、まず佐藤さんからお話があります。

 

 

佐藤 佐藤です。よろしくお願いします。
今日は、乾さんと岩瀬さんの話があれば十分かなと思っていたのですが、話題提供したいと思います。
私の研究室及び事務所で、ガラスの構造を実現したり、もしくはガラスの研究をしていますので、少し紹介したいと思います。

 

ガラスの構造の実現した例としては、2008年のベネチア・ビエンナーレで温室のプロジェクト(注:建築家・石上純也氏とのコラボ)をしました。「EXTREME NATURE」といって、3か月の展示ですが、鉄骨の細いフレームとガラスで覆われたボックスです。大体4mで、背の高いものは6mで温室をつくりました。
この時ガラスは水平力で、地震はあまりないので、風に対して薄いガラスが引っ張りブレースとして効かせています。

 

こちらは、「iz house」(注:建築家・藤本壮介氏とのコラボ)というプロジェクトです。
小さいのは別荘のプロジェクトですが、木のスラブを置いて、その上にガラスとアクリルを建てて、また木をおくと、そういう積み重ね方で実現しています。
ガラスとアクリルを混ぜ、ガラスが割れると崩落してしまうので、アクリルを入れておいて、冗長性を持たせています。実験も行い、大臣認定取得というところまできましたが、実は完成せずに終わった残念なプロジェクトだったのですが、そういったものもやってみていました。

 

こちらは「クリスタル・ブリック」(注:建築家・山下保博/アトリエ・天工人とのコラボ)というプロジェクトですが、ガラスブロックを耐震壁に使おうというものです。
目地の中にフラットバーのフレームを押し込み、ガラスに脆性的な材料なガラスとフレームの組み合わせで、変形能力を持たせています。ガラスブロックがはまって、目地にシーリングがされてしまうと、ガラスブロックだけでできている様に見える耐震壁です。

 

次は、こちらのAGC studioにあり、みなさま登ってこられたかと思いますが、「STEPS IN THE AIR」というガラスの階段です。太田先生と一緒につくったものです。
こういったガラスのプロジェクトをやっているなかで、ガラスの魅力、構造のエンジニアリングの立場として、ガラスの最大の魅力と思う部分は圧倒的に固いということです。透明な材料の中で、ダイヤモンドを除いて、アクリルやポリカなどに比べて30倍以上固く、圧縮に使うのにかなりふさわしい材料だと感じています。
こういうテンセグリティのような構造に、圧縮材として使うと、こういうガラスブロックもそうですが、圧縮として効くので、使うのがふさわしい材料の1つかなと思っています。
一方、ペラペラなものを引っ張りに使うというケースもあり、引っ張りに決して弱いわけではないので、脆性的に壊れることを注意すると、こういうこともできます。ガラスの特性の活かし方が様々提案できているかなと思います。

 

こういったことに関連して、研究室ではステンドグラス状の構造を研究しています。
実験風景なのでわかりにくいですが、細い鉄骨のフレームにガラスが拘束されていて、ガラスが耐震要素としても効くという構造です。小さなH型の断面に、片方のフランジは押し縁的にビスで止められるようにして、ガラスが交換できるようにも考えていて、これで耐震壁として成立します。
自由な曲線にしていますが、より強い模様があるのではと、全体の座屈をコントロールするために、この模様をどうすするか、横に目地が通らないようにすることがこつですが、そういった形態も探れるかなと思って研究しているところです。

 

そうやって、ステンドグラス状の構造を1つ思いついたので、最初折りたたまれているものが、飛び出す絵本の様に開くと、立ち上がり成立するというものを、研究室でつくり、展示しました。「ステンドグラスポップアップ」と名付けたものです。
これは、安全性のためにアクリルにしていますが、将来的にはこれをガラスに置き換えたいと思っています。これは幾何学的にも非常に興味深い構造で、展開構造物、研究されている先生方も多いです。まず折りたためるために、折れ線が1点で交わることと、折りたたんだときに同じレイヤーに来るもの同士がぶつかってはいけないということなので、非常に幾何学的なのも難しい問題ですが、そういったことにもつながる構造です。

 

最近特に力を入れているのが、板ガラスを溶着することです。
ガラスの魅力のもう1つとして、溶かして自由な形状で使えるということがあるかと思います。板ガラスを溶着するために局所的に加熱すると、割れてしまいますが、全体を加熱すると溶着でき、将来的には大判で10m角とか、そういうガラスを現場でつくれないかなと考えています。もしくは多面体、ガラスのドームだとか、そういうシームレスなものをつくれないかということにつながると思っています。

 

ガラスを一旦溶かすと、難しいのは冷却です。非常に長い時間をかけて、なおかつ、温度コントロールが難しくて、だいたい540℃くらいで1時間くらいキープしないといけない時間帯を設けなければならなくて、これをアニーリングと呼びます。やりたいのは、そういった温度コントロールを経て、この溶着部だけを加熱して、少し離れた部分、まだ何十センチか判明していないのですが、何十センチか離れたところから向うは常温でいいという状態にすることです。これができれば、現場で目地だけ加熱すれば、大判のガラスがつくれるということを考えています。

成功したのがこのような例です。熱が伝わるので、端部が溶ける程の温度になった時でも、端部が常温というところまでまだいっていないのですが、基本的に530度を下回っていれば、分子の移動は起きないという性質があります。
このときに、エッジが490度くらいまでしか到達しないという状況をつくることができ、この時点でこの部分では分子が動いていないということになりますので、もう少し離れた位置で常温にできる可能性は大いに示されたということになりました。
歪みをカラーで表示するセナルモン法で見ると、まだまだ残留歪みは多いですが、ゆくゆくはそれをなじませて、うまく温度コントロールできるようになりたいといいうのを目論んでいるところです。

 

去年、単なる板をくっつけただけですが、箱をつくることをうちの学生がチャレンジしました。加熱装置をつくり、穴からバーナーで炙り、まだ少しクラックは入るのですが、とりあえず形にはできました。溶けすぎて、グニッと曲がってしまったりしていますが、大いに可能性はありそうだと感じています。

 

溶かしてガラスを使うことを含めて、塊のガラス等もつくれないかと思っていて、40cmキューブや60cmキューブをできるだけ早くつくる方法を考えたいのですが、それくらいの大きさになると冷却に2か月くらいかけないといけないそうです。こうしてガラスが自由に扱えるようになると、乾さんや岩瀬さんからも話があったように、ディテールが非常に難しいです。ガラスの扱いが非常に難しくて、金属に触れるとすぐ割れてしまうというところがあります。

 

先ほどのベネチアのプロジェクトでも、何枚も割れてしまったので、少し油断し、緩衝材を入れそこなったために、何枚か割れてしまったということが発生しました。ガラスブロックのときも、緩衝材として何をいれるかと、十分硬いものでありながら、割れない程度ということか、ステンドグラス状の構造で、スズを挟むのがいいということを見つけました。

 

最近これをずっと提案していますが、そういったディテールを、実用化するときにはここにも緩衝材が必要だなということがあります。非常に難しいので溶かすことも含めてガラスをいかに自由に扱って、なおかつガラスの特性を満たした形態を生み出すということをやっていきたいと思っています。
私はガラスのそういう溶かしたものを扱う究極は江戸風鈴だなと思い、研究室で、江戸風鈴をつくれるよう、道具とかを準備しようとして進めているところです。
以上、少しですが私の活動の状況でした。ありがとうございました。

 

太田 ありがとうございました。

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