イベントレポート詳細Details of an event

第43回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念トークイベント

2014年4月25日(金)
講演会/セミナー

●乾久美子氏のレクチャー

 

 

 こんばんは、乾です。
実を言うと、ガラスですごい試みをしている方ではないなと、自分では思っております。
それこそ太田先生のガラスの階段とか、本当に先進的な技術で難しいことを実現しようとされています。岩瀬さんの今日の作品みたいに、あり得ないぐらいに綺麗なものをつくるよりは、ガラスは、普通に建物をつくるときにも、頻繁に出てくるものです。
それを少し工夫して、少しだけ綺麗につかってみようぐらいの感じの試みなので、可能性という意味ではあまり期待して聞いていただくと少し辛いかなという内容になっております(笑)。 今日は30分ぐらいなので、本当に簡単な内容にしようと思っています。事務所の方で、ガラスを大々的に使ったものについて説明させていただきます。

 

まずは日比谷公園のものです。
日比谷門という門がありまして、その入り口の所にお花屋さんを改築したいということなので、このような姿の建物を建てました。非常に小さい小屋のような建物を集めたものなのですが、異常に背が高いというような、少しプロポーションが変わった建物を集合させるというものです。
ガラスの透明度がとても重要だと思いましたので、ここでは高透過ガラスを使っております。ここの高透過ガラスは、旭硝子さんのものを使っておりまして、最後のロットのガラスを押さえて、実現したプロジェクトです。
高透過ガラスなので、青みがほとんどなく本当に綺麗で、ガラスというよりはプラスチックのような透明感が出て、非常にありがたいと思って、使わせていただいたものです。
フロートガラスだと見た目が青く、影は緑色になってしまうことがあるのですが、高透過にすると影も透明で日光の色そのものに近いものになります。日光を浴びている感じが味わえるような建物になっております。
ガラスがメインの素材になるということもありますが、パッと見たときにガラスを何重も続けてみるというインテリアになります。ここでフロートガラスを使ってしまうと、向こう側に見える公園の風景が緑になることがどうしても辛く思えたので、お店ですし、見た目重視であることをお施主さんにご納得いただいて使わせていただきました。

 

次は大学の、増築のような建築です。
片廊下型の建物をピタッとくっつけたような建物をつくっています。ガラスも多用しています。両側にガラスを使っていたり、あるいは廊下の部分をすべてトップライトにしています。
大学ということもありまして、そんなに見た目を優先するように予算を組むことはできない施設でしたので、フロートの板ガラスを使うということにせざるを得ないという状況でした。結果、緑色になってしまい、やや悲しかったです。
竣工してからみてみると、たまたま桜が咲いているシーズンに撮影したからか、うぐいす色になっているガラスの感じが悪くないと思いました。建物の中に直射日光が入るとかなり明るくなるので、ガラスの緑が嫌じゃないものとして見えてくると思います。完成するまではフロートガラスにしたことを後悔しながら、工事を進めていましたが、実際にみると、これだったらなんとかなるかなと思った感じですね。
それぐらいガラスというものは建築物をデザインする上で神経をすり減らすところでして、(どんなガラスを使うかによって)印象が決まってしまうので、出来あがるまでヒヤヒヤしながら現場を進めています。
そして、廊下の部分はトップライトを全面的に入れておりまして、光が降り注ぐように建築全体が明るい雰囲気になっています。これにより、ファサード部分の緑になっているガラスがそんなに気にならなくなっていると思います。
竣工写真をみてもわかりますが、インテリアから見る限りフロートなのか高透過なのかは、ほとんど気にならないです。外観が出来た段階で、下手をするとすごく緑なものをつくってしまったと後悔する類のものですね。

 

ちなみに、青木淳さんのモアレシリーズと言うルイ・ヴィトン名古屋のファサードがありますが、フロート板ガラスなので、かなり真緑です。それができた時、青木さんはものすごくショックを受けられて、ガラスをものすごく勉強なされて、それ以降のルイ・ヴィトンのモアレシリーズは美しい効果を発揮するようになったようです。その風景を横で見ていたので、ガラスというのはなかなか勉強して使わないといけないと学びました。
とにかく、光が燦々と降り注ぐトップライトのお陰で、どこもかしこも光でいっぱいです。ガラスは透明という印象があるので、できるだけ透明にしたいという欲が出る素材だと思います。実際には透明でもない、いらない時に反射し、扱いづらい素材でもあると思っています

 

次は、このAGC studio様です。
向こう側の内装は太田先生がされて、今皆さんがいらっしゃるところが私の事務所で担当させていただきました。
これをつくる時、ガラスの透明感はどのように追求していいものだろうと考えました。太田先生のデザインヌーブさんとのコラボレーションでして、透明感を追求される、あるいはガラスの無垢な印象をつくることを模型で検討しました。
同じ透明感で違う設計者がデザインすると、お互いを打ち消し合うのではと思い、透明感を違う次元で何か感じられるものはないものかと考えました。
これは、青とオレンジのガラスを合わせるインテリアをしてみるとどうかと思い、組み合わせていくことをしています。この色は補色になっていて、青とオレンジの2枚を重ねるとお互いが色を打ち消し合って、青もオレンジも感じることがなく、透明ではないですがグリーンくらいの色になるような調整をする2色のガラスになっています。
これは青いガラスの向こうに、オレンジのガラスがあって、その奥には外の風景が広がっています。奥の外の風景はいわゆる天然カラーになっていて、ガラスの手前の空間がオレンジ色染まっていて、その手前の今我々がいる空間は青く染まっています。
錯覚ではないですが、このように透明感を変わった感じでつくり出すと、透明ではないような気もするし、透明なような気もするし、感覚が鋭くなることが起きるのではないかと期待しました。そうすることで、意識の上だけで生まれる透明感がつくり合わせれば面白いかなと思いました。
太田先生の方は無垢な白い空間になっており、ものすごくイキイキとして白さが際立っています。私の方はカラフルに仕上げております。
技術的にはガラスとガラスの間に中間膜を貼って、カラーフィルムを挟み込んで、色を出しています。
何重にも親密にフィルムを重ねて色をつくっています。この2つのガラスが重なったところが無色になります。奥にある執務室を隠すと狭い雰囲気になりますので、見せようと思いました。
あまりにも透明だと身も蓋もない感じになってしまいますので、少し色をかけて、見えてはいても意識の上ではそこまで気にならないように、カラーガラスでつくりたいというデザインにする理由の1つでした。

 

この他の例としては、ルイ・ヴィトンのファサードを作らせて頂きました。
ガラスという素材は、高級感を感じさせたり、フレッシュな印象をつくり出すのにかなり有効な素材なので、ブランドのファサードをつくる時に、多用しています。
ただガラスは、完璧な透明は絶対に手に入らないのです。ブランドのファサードをつくる時にガラスだけに頼ると、何か限界にぶち当たるような気がしていましたので、例えばこのルイ・ヴィトンだと、ガラスがあって、ここにステンレスの鏡面でつくった格子が建てこんであります。更にその奥にパターンを施した壁があるという、3層構造になっています。
それにより、ガラスのミラーの効果で、透明感が感覚としてより一層増すというようなデザインが出来ないかと思いました。ガラスだけだと感じないような、感覚の中でしか生まれ得ないような、極端に純度の高い透明感が意識の中で現れるということはどうなのだろうかと考えてつくったファサードです。
ここでは高透過のガラスを使わせて頂きました。
こうしたファサードをつくる場合、高透過であっても緑が少し残る問題があるものですから、何重も重ねるようなファサードの場合はその奥にある壁を少しピンクにするとか、あるいは照明の色温度をピンクかけることによって色を調整しています。

 

今後こういうガラスの建物をつくりたいと思います。
宮崎県の延岡駅で、市民が集まる駅前をつくろうということで、途中段階の設計です。室内と屋外を組み合わせて、市民の方が遊べる場をつくたいと思いました。梁と柱があって、ガラスの全体が開けられるようにして、人がわさわさと、外と中を使っていろいろ活動ができるようなものを試みました。

 

今の悩みは、おおらかなサイズのガラスを使いたいですが、当然このような大きなガラスをつくると、かなり重いことです。ガラスは大きければ大きい程開放感がありますが、ガラスは比重が相当に大きいので、そこにジレンマがあると思っています。

 

常にガラスは、ガラスだけだとなかなか成立しない問題があって、例えば今日の岩瀬さんの作品だと、最低限クリップなど二次的なパーツというものがどうしても必要な素材であると、とにかく何かを支えないと、ガラスはどうしようもないものであるということだと思います。

 

こちらは、このAGC studioのスライディングドアのディティールです。こうしたディティールのレベルで、どこまで工夫が出来るのかが重要な素材だと感じています。
当たり前のディティールからスタートして、どこまで当たり前じゃない見え方をするのかを追求出来るのかが、結構ポイントだと思っている次第です。大学では、なぜか材料という授業を受け持っています(笑)。
材料は、通常工学系の先生がいらっしゃって、科学的な特性をお話されたりする授業が前期にありますが、それだけだと飽きるので、後期に材料の使い方の楽しいことを教えなくてはいけないのではないかというところを担当しています。

 

例えば、こういう異素材だとこういう表現があるよと、1つ1つ説明していく授業で、最初は講義スタイルで説明しましたが、2年前から実際にディティールを描いてもらうようにしました。課題を与えてディティールを描いてもらって、講評会でその授業をするというスタイルにしたところ、なかなか皆さん楽しんでディティールを描いてくれます。

 

古谷先生のご自宅、ジグザグハウスのガラスのディティールが特殊で、ほとんどインテリアと家具のディティールなのではないかというぐらい、ものすごいディティールで外部のガラスを抑えられています。写真だけ見せてこれを一体どうやって収めているのかをクイズ形式で考えてもらう課題を出しました。
その時、構造シールにはこういうものがありますよとか、アングルでおさえる簡単なレクチャーをして、ジグザクハウスは開口部があるので、これで開口部つくるとどうなるのかを考えてみる課題を与えました。すると皆さん、知恵を絞ってディティールを考えてきます。
何が言いたかったかというと、ガラスは、本当に多様性のある素材だと思います。透明であったり、不透明であったり、軽そうでありながら、とてつもなく重たかったりするという問題があり、透明だと言われつつも不透明な素材なので、それをどう工夫していくのかを考えなくてはならない。そこで考えても考えても正解に至らない素材で、手強いなと思っています。
その一方で、ガラスは破損すると危ない問題があるので、新しいことをしようとすると勇気が必要な素材です。変なことをすると全部透明なので、隠しようがない、全てがあからさまになるという素材です。
デザイナーにとっては、興味深くチャレンジする甲斐のある素材だと思っています。日本は地震があって、構造的に検討しなければいけないことが多い国ですね。
例えば、アメリカで留学している時に受けた構造の授業でガラスの構造体の構造計算をやらされたことがありまして、横揺れを考えなくて良いからと、ものすごく単純な設定で構造計算をしたところ、意外と持ちましたね。それでその授業をもって初めてガラスは、単に板として使わなくていいことに気づく機会を与えていただきました。
そのように可能性があって、面白いと思っているということで、終わらせて頂きます。

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