イベントレポート詳細Details of an event

第41回 AGC studioデザインフォーラム
陸前高田発 震災から3年、いま覚悟をもって明日へ

2014年3月20日(木)
講演会/セミナー

 

「次世代の地域定住に向けた活動」

 

伊藤 みなさん、おばんでございます。親子の広場「きらりんきっず」の代表を務めております伊藤と申します。
全国のみなさまに助けていただいてここまでやってこられました。ありがとうございます。また、このような機会をいただいてとても感謝しております。

 

さて、みなさんは、お子さんがいらっしゃいますか? 「親子の広場」というものをご存知でしょうか? 「親子の広場」は、未就学の在宅児童を対象にした地域の子育て支援、居場所づくりの活動です。
私自身が子育て支援に関わったのは、長女の出産を機に初めての子育てにおける不安や負担、子どもと2人きりになって丸1日他の人とほとんど喋らないような日ができるとか、そういう母親としての負担・不安を感じたからです。それで、市内の乳幼児学級などに通って、子育て支援と関わってきました。
専業主婦でありながらサークルを立ち上げていった中で、平成18年8月に子育て支援の仲間とともに気仙地域子育てネットワーク「Wa-I」(わい)を結成しました。
その時はボランティアでニュースペーパーをつくったり、イベントを開催したりしていました。ずっと子育てしながら、コツコツ活動していくうち市から委託事業も請けまして、研修やワークショップなどを開催しました。駅通りにあるシャッターが閉まっていた建物を改装し、親子の広場を開所しました。
その頃から子どもの数が目に見えて少なくなってきて、アンケートをとった結果、土日に「内陸のイオンに遊びに行く」という状況が分かりまして、子どもたちが歩かないような街では寂しくなると考え、「子育て支援をしながら地域交流や地域活性の一助になればいいな」とスタッフ4名で始めました。

 

陸前高田市はこのように子育てがしやすい温暖な地域でした。7万5000本もの松がある高田松原が子育てにも密着した場所だったのです。
過去3回、地震や津波に襲われましたが、その都度、立ち上がって参りました。しかし、普通に生活している私たちにこのような大きな災害が降りかかるとは思いもよりませんでした。
すごく揺れた時に、私の借りていた家が古いにも関わらず倒れなかったのです。外に飛び出したら、建物はほとんど壊れていませんでした。ですので、その後の津波が全てをさらっていってしまったのでしょう。
スタッフも全員被災してしまいました。家も流され、活動の場所も流されてしまいました。利用者さんへの連絡もつかず、悲しい現実もありました。

 

陸前高田市は建物がほとんど残らなかったので、こんなときだからこそ、親子の居場所が必要なんじゃないかと思い、避難所にもなった高田一中にそういう場所が残っているかもしれないと考え、アポイントなしで飛び込みました。旧知の市役所の人に声をかけたところ「親子の居場所は避難所でも必要だと思っていた」という展開になり、急遽、図書室を使わせていただくことになったのです。
みんな避難生活なので最初はスタッフもいない状況でしたが、私独りだけでも始めようと考えました。その頃には携帯電話だけは使えましたので、そのネットワークを使って、盛岡の保育士さんや大船渡の方からおもちゃを借りたり、マットの支援をしていただき活動を始めました(平成23年4月14日~)。
この時は、絵本、おもちゃ、お母さんの衣類、赤ちゃんの衣類など、いろんなものを配ったり、情報交換をしたり、とりあえずお互い寄り添える居場所があるということで貴重な場所になりました。中学校の再開後も、生徒さんたちの邪魔をしないように活動をしました。

 

その後、仮設住宅が建ち始めて中学校が通常の機能に戻るという時に、震災前に市街地にあった店舗のご厚意により、仮設の店舗の一部を使わせていただくことになりました(平成23年8月1日~)。すごく小さな仮設のプレハブなのですが、そこがあったおかげで、季節行事だったり、身体を動かすリフレッシュだったり、お餅をつくなど地域の皆さんと交流活動をできるようになりました。

 

次に移ったのが、中小企業基盤整備機構の仮設施設整備事業の中で10数件の商店や私たちのような市民団体が集まった仮設の「高田大隈つどいの丘商店街」です。そこへ入って、ようやく元に戻ったような感じがしておりますけれど、この場所は5年の利用期限があります。あと2年経ったその時に、そこを引き渡して、家主さんがこの建物を買い取って、私たちが新たに賃貸契約をするか、それとも中心市街地に移るかを考えなければなりません。
仮に移ったとしても土地の購入や建物の建設という問題があり、昨年の12月にNPO法人になったのですが、子育て支援は利用料を徴収する事業ではありませんので、投資主体および事業の継続性に課題を抱えています
そのように現在は将来の展開がまったく見えておりません。私たちのような任意団体には国や復興庁のようなところからもまったく資金援助を受けられない状況です。

 

そのような「きらりんきっず」ではここに示すような活動をしています。とにかく、子どもたちと親御さんに体験をしてもらうことが大事です。
子育てには不安や孤立感などがありますけれど、一歩、外に出れば、がれきだったり、行き交うトラックだったり、非常に危険な状況があり、買い物もままならないような非日常を過ごすことになります。そういう中で、きらりんきっずに来れば、ホッとできる、安心できる場所として大事な役割を担っているのではないかと思っています。
そういう状況でここに示すようなさまざまな体験をすることでお母さんの笑顔をたくさんつくって、子育てにゆとりを持っていただき、それが子どもたちの笑顔になればいいと思っています。
平成25年度の活動としてはさまざまなことをやっています。「じゃがいも収穫体験」という食育だったり、「ママのたこ焼きパーティー」だったり、開所1周年記念として地域のイベントに参加します。
また「男の料理教室」は震災で父子家庭が多くなったので、24年1月から研修を受けて「パパ・ステーション」という活動も展開しています。夕涼み会や親向けの子育て講座なども継続的に開いています。さらに行政と連携して次世代育成に向けてボランティアの受け入れもします。(スライドで活動内容を詳しく紹介)

 

さて、震災によってもともと少子高齢化の地域だったところが、よりいっそう特化された地域になりました。
1町に1校、計8つの小学校がありますけれど、1学年に5人とか8人といったクラスもあり、今後、どのように少子化を止めるかという課題が浮き彫りになっています。その中で私たちの活動は、若い世代のお母さんたちが、子どもを産み育ててくれる支えになります。
私が高田一中で活動していた時に、1時間半かけて実家から通ってきたお母さんから「こんな状況で第2子を産むことなど諦めざるを得ない」と言われた時に、本当に悲しくなりました。震災によって、そういう状況が生まれるのは非常に悔しく感じます。私たちの活動があななたちを支えるから、そんなように思わないで欲しい、と思いました。
その方が、まだ通い続けてくれているのですが、2年目になって「子ども(第二子)ができました」と仰って、すごく嬉しかったのです。子育て支援(の効果は)は、なかなか目に見えにくいですけれど、そういう風に支えることで「じゃあ、次も産んでみようか」と思ってもらえると、本当に嬉しいです。
そのお母さんの話では、家を再建しようと前向きに考えられるようになった理由の一つに「男の子、男の子と続いたので3人目に女の子が欲しいと思った」から、もあるようで、やはり、こういう居場所があって子育てを支えてあげられることは、そういうことにもつながってくると感じています。

 

若い世代が「高田に住みたい」と定住してくれる環境をつくっていくこと。10年後、20年後の陸前高田を支えていくのは子どもたちなので、私たちができるいちばんの支援は、そういう定住に向けた支援だ、と思っています。
私たちは「安心・安全の心地いい居場所づくり」を目指しているのですが、仮設住宅での子育ては本当に大変な状況です。
震災とはまったく関係なく都会からお嫁さんとして高田に来られて、仮設で同居して本当に大変な子育てをしている若いお母さんがいます。あまり居場所がなくて、車で地域をドライブしながら気持ちを落ち着かそうとしていらっしゃるのですが、その車の中で子どもが泣いて、どこへ行っていいかわからず、たまたま私たちの仮設店舗の駐車場に入られて、親子の広場の看板を見つけてくださったのです。
「もしかしたら、おむつを替えたり、授乳してあげられるかもしれない」
と飛び込んで来られたのです。
そうすると子育て中の仲間たちが温かく迎い入れてくれて、「涙が出るほど嬉しかった」と言ってくださったのです。
利用者同士がお互い様で、子育てしている者同士の共通理解や共感があり、助け合ったり、励まし合ったりして過ごしています。そのお母さんは、毎日のようにここ来て、お喋りできるとか、元気になるとか、心の休まる非常にいい空間になれたと思います。子どもにとって1日1日は非常に大切で、時間は待っていられません。

 

海の恩恵もかけがえのない宝物なのですが、子どもたちに未来を託すということが私たちの大事な課題になってきています。人は、人でしか支えられない、ということを実感しています
お互い様で、地域の中で支え合い、子育てをしていけたらいい、と思っております。将来、このまちを支えていく子どもたちが、多くの仲間たちの温かいまなざしの中で安心して伸び伸びと遊び、成長していける地域をつくっていかなければならないと考え、活動しています。

 

ご清聴ありがとうございました。

 

城本 どうもありがとうございます。
先ほどの武蔵さんは起業して、仕事の場をつくり、未来を託そう、と。そして伊藤さんは、もちろん子育て支援を通じてお母さんたち、子どもたちを笑顔にし、地域の未来もつくる、という話でした。
今日のテーマは、おそらく震災後3年を過ぎ、住宅の再建は遅れておりますが始まっており、残された課題としては仕事であったり、子育てであったり、元の生活を取り戻して、地域のコミュニティをどう再生していくかだと思いますが、そういう人と人のつながりをつくるには情報が大切になります。

 

続いてはコミュニティFMで情報発信とともにコミュニティを守る活動をしていらっしゃる安倍裕美さんの話を聞こうと思います。

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