イベントレポート詳細Details of an event

第41回 AGC studioデザインフォーラム
陸前高田発 震災から3年、いま覚悟をもって明日へ

2014年3月20日(木)
講演会/セミナー

 

「地域再生のための新たな産業創出」

 

武蔵和敏 みなさんこんにちは。陸前高田市からやってきた武蔵和敏と申します。
毎年、こういう場を設けていただいている旭硝子さんに、たいへん感謝しております。
さて、あの震災から3年が経ちました。我々はこの間、必死で生き抜いてきたというのが正直な感想です。ただ、ここに紹介する写真の通り、これは上京する直前に撮った写真ですが、住宅の再建などまだまだ先の話で、中心市街地の復興に関してもまだ、このような状況(=手つかず)になっております。

 

これは、かつて高田松原があった近辺の風景なのですが、そこは山を削り取るためにこの巨大なベルトコンベアーが設置され、当初は盛り土をダンプで運ぶのに8年かかるだろうと言われたところを、このコンベアーによって3年で運べるということで、非常に巨額の公共事業が展開されています。そして、ここには高さ12.5mという巨大な防潮堤が建設される予定で、一方、こちらには高台へつながる広い避難道が山へ抜けていくということになっています。

 

この中心市街地は、がれきこそ片付きましたが、いまだに復興しておりません
これが現状です。陸前高田市は1700名以上の市民が津波の犠牲になりました。まだ250名近くの人が行方不明です。
私のサッカー仲間でも、多くの先輩や同級生、後輩が地震からほんの30分後に姿を消しました。私以上にご家族が本当に辛い思いをなさりました。

 

私は20数年間、建設業のサラリーマンとして住宅や道路、橋などをつくって糧を得てきました。そして、震災後にがれきの撤去を見るにつけ、そういう建物で大事な人たちを守れなかった、私がつくっていた住宅では津波から守れなかったというのが、非常に残念でした。
そして、大きな避難所になった母校である高田第一中学の体育館に炊き出しが来ました。1000人規模の避難所ですが、みんなそこでかけうどんをいただいたのです。みんな「この素うどんは一生忘れない」と思いながら食べたのです。その、命をつなぐうどんを目の当たりにした時に、「食が人の心をつなぐ」と感銘しました。
それから、食というもので全国への発信をしたいと思い、模索していた時に、昨年のこのデザインフォーラムにも来ていただいたバンザイ・ファクトリーの高橋和良さんと連携することを思いついたのです。高橋さんは有名なので、ご存知の方もおられるでしょうが、震災後にわざわざ陸前高田へ来てパスタの製麺工場を建てた、という起業家の方です。自らの資産をはたいて、かつて世話になった陸前高田を何とかしよう、という方です。
その人と出会いまして、昨年、ここで一緒に講演とディスカッションをしたのです。その時に、自分ができることについてようやく気付かされたのです。その経緯を簡単にご説明します。

 

私は今後、高橋さんたちの作るパスタを売っていきたいな、と思っています。バンザイ・ファクトリーのおばちゃんたちが製造するパスタを売っていくつもりです。そのビジョンとミッションを説明します。

 

まず、「陸前高田から笑顔が溢れる美しく健康的な生パスタを全国のみなさまにお届けいたします」というのがビジョンです。ミッションとしては、
①当社は、全国の皆様に向けておいしく健康的なパスタメニューを開発し、お手頃な価格で提供いたします。
②岩手県産品の素材と生パスタをマッチングし、世界に誇る食のブランドを目指します。
③起業を通じて三陸の若者に夢と希望を与え、後継が育つ土壌づくりに貢献いたします。
ということになります。

 

先ほどから申し上げているバンザイ・ファクトリーさんから商材として製麺された生パスタを仕入れます。また同社とは資本の提携を結んでおります。それが私の起業した(株)カメリアン・プロダクツサービスです。
事業目標として、7カ年7期では目標売上高6億円、経常利益で9000万円を目指しております。初年度の資本は、東京の財団から3000万円の出資をいただきました。
また地方の第一地銀から3000万円の借り入れをしまして起業いたしました。それを手当に今後事業を展開し3期目に1400万円、4期目2000万円、5期目には3000万円という増資も計画しております。人員としては第7期目で正社員、パート、製麺工場の工場員数を含めて160名の雇用を創出いたします。
そういう私たちがまず出店するのはイオン・フードコートです。
陸前高田市の商材を発信する方法について、かなり悩みました。我々は、飲食の事業をやった経験がありません。まるっきりしろうとです。
しかし、この事業について情熱的に語ると振り向いてくださる方がいらっしゃいまして、それがイオンさんでした。
我々はメニュー開発であったり、店舗開発であったり、店舗運営、マーケティング、社員教育などをやっていきます。そして各イオンに出店していきます。
イオンの強みは、やはり全国に多数の店舗展開をしているところです。そのイオンに出店することによって建物を建てることなく、うまくいけば全国に出店できる可能性があります。顧客対象は主婦や若い女性のグループというイオンで買い物をする方々です。6月には一関店への出店、7月には陸前高田店、その後に水沢江刺店が控えており、今年度中に3店舗を出店する予定です。

 

ここに第1ステップから第3ステップまで書いてありますが、2019年10月までは先ほど申しましたように売上高で6億円、フードコートで21店舗開店と大都市圏への進出を考えております。そういう私たちの麺のアイテムとしては現在3つあり、断面が星型という世界初で唯一の技術を誇っています。また丸形の細麺、フィッットチーネを使ったバジルパスタを提供します。
それから、高齢化という問題に向けて、実は陸前高田市の震災後のブランド米として「たかたのゆめ」という米があります。この米を米粉にしまして、パスタに混ぜ込んで「たかたのゆめ麺」として売り出します。
また冷麺も提供致します。メニューとしてはボロネーゼ、バジルパスタ、たかたのゆめ麺はうどん風にして出します。そして三陸海鮮冷麺としまして、メカブやワカメといった三陸の商材をふんだんに使用したものを提供していくつもりです。
価格帯は600円前後にしてまさにフードコートの店舗として常識的な価格帯に設定します。

 

実は、イオンさんは被災地をかなり支援しておられて、陸前地高田市でもすぐに仮店舗を設置しており、我々のニーズとイオンさんの思いがマッチしたというところが、こういう事業に結びついているわけであります。
イオンさんの「被災地から被災者を出店させたい」というご要望がありまして、我々は一関フードコート店にある全店を調べたところ、私たちが唯一の地元岩手からの出店になるということであります。

 

最後になりますけれど、私の10年後の夢と想いをご紹介します。
10年後はフードコート50店舗を実現して株式公開を目指しております。そして私が本当にやりたいのは「熱血気仙塾」の創設であります。熱血気仙塾はすでに動いていますが、しっかりした形に10年後はしたい。
今日、集まっているこの4人もそうなのですが、横のつながりはすごく大切で、陸前高田市は市といいながら人口が2万人を切っており、どんどん人がいなくなっていく状況です。
今日、陸前高田から一緒に来た4人は、震災後からずっとたいへんな思いでいろんな活動をしてきた仲間です。その仲間たちとしっかり手を取り合って、陸前高田市がどういう街になればいいのか、そしてどのような将来像を描けるのかを必死で模索しながら、あと7年、頑張っていきたいと思っております。
いろんな方々にもたくさんの支援をいただいております。私は、この事業を必ず成功させて被災した地方都市の見本になる、こうすれば立ち上がれる、というのを全国の皆さんへと発信していきます
陸前高田市の子どもたちが将来、大人になった時、こういう企業ができて全国でも有名になれた、というバトンを譲りたい。この子たちが希望を持てて、生まれ育ったところで生活できるようになっていくことが、本当の私の夢であり、震災で生き残った私の使命である、と思っています。

 

ご静聴ありがとうございました。

 

城本 武蔵さん、ありがとうございました。
3年前にお会いした時は、住宅再建のために闘っていらっしゃいまして、熱血漢であるということも分かっていたのですが、とうとう起業なさって、大きな夢をいだかれている。産業というか、職を地元に創っていくという話を、また後で話し合ってみたいと思います。

 

続いて、伊藤昌子さんの発表です。伊藤さんは子育て支援の活動をなさっています。次世代の地域定住に向けたお話をお願いします。

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