イベントレポート詳細Details of an event

第83回 AGC Studio Design Forum
AGC リノベーション展+DESIGN セミナー
「魅せる・仕切る − 空間におけるガラスの役割」

2017年11月2日(木)
講演会/セミナー

ガラスは幅広い用途が可能なマテリアル

 

恭: 次の事例は、東京建物の「ブリリア稲毛海浜公園」です。
 稲毛海岸駅から徒歩20分の海沿いのロケーションに建つ、2008年に手がけたマンションです。着工前、東京建物が考えたターゲットとしては、「都心で働き、かつ自然を愛していて、電車で通える範囲で、家族と共に海を感じながら暮らしたい人」でした。そういう人たちが好きなのは、北欧的なライフスタイルなのではないか、という話になったようで、僕たちがマリメッコの仕事をしていたので、依頼がきたという流れです。
 これはロビーの写真です。ヤコブセンの椅子など北欧的なイメージの家具を置いたり、木を使ったり、海辺を感じさせる模様の手焼きタイルを配したりして、空間を構成しています。こちらは、ライブラリーやサービスカウンターが併設されているラウンジで、フィン・ユールなどの椅子を使い、床や天井にはバーチ材を用いて、ナチュラルで清潔感がある優しい空間を設計しています。

 

 上層階には、海が見えるゲストルームがあります。マンションの住人の方のゲストが泊れる部屋で、ここにも北欧家具を配していて、テーブルなどは僕たちが設計した造作になります。奥にはバスルームがあり、海を見ながらお風呂に入れる空間です。ここは、空間をいっそう広く見せるために、調光ガラスを用いてコントロールしています。お風呂に入っていないときはガラスが透明で、入っているときは磨りガラスになるかたちです。
空間を広く見せたい、かつ空間を閉じたいときもある」という際には、こういう曇りガラスを使うことがあります。空間を仕切るとき、透明感があることで空間を広く見せられる。また、磨りガラスを使うと、視線の遮断が可能になる。ガラスは、そういう幅広い用途が可能なマテリアルだと思い、多用しています。

 
 
マナ: 次の事例は、少し趣が変わって、伊勢神宮の内宮への参道にある「伊勢ゑびや大食堂・ゑびや商店」の改装時の設計です。
 元は食堂だけの店舗だったのですが、「商店」を追加したいということで、全体の改装を手がけました。伊勢という場所柄、何度も訪れる人が多く、そのときにハレの食事を出したい、ということで、「大食堂」は松坂牛を使った料理などを提供しています。その一画に土産物のスペースを併設したいということで、この左側を「商店」として改装しました。
 什器の上部を、伊勢神宮にある宇治橋を模した形にして、ここでしか見られない店づくりをしています。こちらの提灯は店の目印になるもので、伊勢の特産品などを描いた絵を配しています。

 

 大食堂は、入ってすぐのところにガラスのパーティションを設け、そこに店名とロゴの大きなエビの絵をエッチングで入れています。ガラスを削ってつくる手法です。グラデーションも入れていて、ガラスの両面からエッチングをするのは不可能ということで、裏面には、グラデーション入りのスモークシートを貼っています。
 ガラス越しに店内を見ると、この写真のようになります。視線をバランスよく隠しながら、中も見せたいということで、座って食事している方々の姿は見えないのですが、天井から吊るしている提灯などは、きれいに見えるように整えています。こちらのグラフィックデザインは、6Dの木住野さんにまとめていただいています。

 

 私たちは「中川政七商店」の設計を手がけていて、先程紹介した「伊勢ゑびや大食堂・ゑびや商店」の食事メニューや土産物は、中川政七商店のディレクションになります。
 伊勢ゑびや大食堂・ゑびや商店は、伊勢の仲間見世(なかまみせ)の一軒です。その地域で、長年お店をやられている方が、中川さんのところに相談に行き、一緒に考えながら新しくブランディングしていくかたちをとっています。私たちが手がけたものとしては、太宰府天満宮、城崎温泉などに5店舗あり、各土地に合わせた見せ方を考えて設計を進めています。

 

恭: 地方に根ざした「いけてるお土産屋をつくろう」というのが大きなコンセプトで、それを中川さんが企画されています。毎回いろいろな地域ネタを取り込みながら、ゼロからやっているので、なかなか大変ではあるのですが、日本各地の様々なものに出会いながら、楽しく進めています。

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