イベントレポート詳細Details of an event

第83回 AGC Studio Design Forum
AGC リノベーション展+DESIGN セミナー
「魅せる・仕切る − 空間におけるガラスの役割」

2017年11月2日(木)
講演会/セミナー

ガラスというフィルターをかけることで、抽象化してモノをよく見せる

 

恭: もう一つ、マリメッコの事例を紹介します。千葉県柏市のステーションモール内にあるマリメッコの店舗です。
 フロアの通路があり、その奥にマリメッコの店舗があるのですが、商品を陳列している場所にガラスの壁を立てることで、ショーウインドー的な見え方になるよう工夫しています。僕たちは、いろいろな仕事でガラスを多用しているのですが、この店の手法も、「ガラスというフィルターをかけることで、抽象化してモノをよく見せる」という効果の事例となります。
 世界中どこの店舗も、ニュートラルと言いますか、店内にあふれる色が映えるような素材使いと構成にしています。

 

マナ: マリメッコの日本展開は、2006年から始まりました。もう11年経つので、今は認知度が高いですが、以前は一部のファンに知られている、という状況だったと思います。私たちが初めてフィンランドに視察に行ったとき、自分たちの持っているイメージとはまったく違う店舗に驚きました。
 マリメッコは創業から50年以上を経ているブランドなのですが、その歴史とともに顧客も年齢を重ねていきます。そのため、フィンランドの国民的なブランドではあるのですが、いわゆるお母さんから上の世代の人たちのもの、という感じで、中高年の女性向けの服がたくさんあるなど、当初のイメージとはかなり違う雰囲気でした。
 それを日本の会社がリブランディングして、コンテンツをしぼって日本展開を始めたという経緯があり、その方向性でやっていたら、マリメッコらしい店ができていった。それで、本国のほうから、日本の店舗のほうが「フィンランドらしい、マリメッコらしい」という話になり、私たちが店舗デザインを手がけることになったのですが、それは、日本でマリメッコの展開を手がけた会社のブランディング力も含めてのことだと思います。

 

 次の事例は、渋谷にあるセレクトショップ「デスペラード(ならず者)」というお店で、私たちの原点とも言えます。
 ここのディレクターは、マリメッコの日本展開を手がけた方です。こちらの店で、私たちは初めて大きなギャラリースペースのようなガラスケースをつくり、それがきっかけとなって、その後、いろいろな場所でのガラスケース制作の機会が増えていきました。
 このデスペラートに関しては、「あえて5ツ星ではなく、3ツ星ホテルのような設計をしてください」という要望がありました。元々、入口が2つあり、その開口部を両方残すかたちで、右側と左側でまったく違う入口にして、中に入ると、同じ空間がつながっています。この店は2000年にデザイン設計を行い、今ご覧いただいている写真は、2013年の改装時のものになります。

 

 左側にウインドーがあり、そこで面白い商品を見せたり、窓を通して店内を見せたりする、ガラスの仕切りを活用しています。店内には什器がたくさんあるのですが、レイアウト変更が自在にできるというコンセプトで、すべてキャスター付きの可動式になっています。趣がある古いガラスケースにキャスターを付けたものもあります。壁にはゼブラ柄のカーペットを貼っていて、これは、壁面にビスを打っていろいろな展示替えをするときに、ビス穴が目立たないようにとの要望に応えたものです。
 次の写真は、定点観測で同じ場所から撮ったもので、ご覧のように、レイアウトが自在に変えられるようになっています。この店のオーナーは、ご自分でもディスプレイができる方なので、これだけ可変できるものをつくりました。什器を移動すると広いスペースができ、そこでワークショップやファッションショーをするなど、いろいろな用途で使っています。

 

 最近、私たちは、実店舗の役割は何か、ということをよく考えます。
 例えば、このデスペラートは渋谷駅から徒歩5分ほどの距離なのですが、お客さんがわざわざ来たときに、「前回来たときと変わっている」ということが楽しさにつながるのではないか、と思っています。
 ネットでも買物はできますが、実店舗には、レイアウトの変化を楽しんだり、店員の方とコミュニケーションをとったり、ワークショップでモノをつくったりなど、いろいろな体験ができる場としての魅力がある。近年、「体験型ショップ」の依頼が増えているのですが、2013年に改装を手がけたこの店は、その先駆けになったかたちです。

1 2 3 4 5 6