イベントレポート詳細Details of an event

第82回 AGC Studio Design Forum
AGC リノベーション展+DESIGN セミナー
「マンションに100年安全で快適に暮らす方法
− 耐震化に取り組む中で見えてきたマンション再生の考え方 −

2017年10月21日(木)
講演会/セミナー

家族の生命や財産を守り、安全で快適な生活を続けるためには耐震化が必要

 
 
今井 ここからは、耐震診断のお話をいたします。
 耐震性能の判断は、構造耐震指標であるIs値で表します。Is値=強さ×粘り×形状×劣化という計算式で求められ、強さに加え、竹のようなしなりや粘り、平面と立面の形状、劣化とメンテナンスの状況が反映されます。形状については羊羹型が一番しっかりしていて、L字型や三角形など形状が複雑になると、不利になります。Is値が0.6以上の場合、地震動に対して必要な耐震性を確保していると判断し、新耐震同等という言いをする場合もあるかもしれません。
 基準によると、Is値が0.6以上で、「地震の振動及び衝撃に対して倒壊し、または崩壊する危険性が低い」と定義されています。では、その半分の0.3未満はどうかと言うと、「地震の振動及び衝撃に対して倒壊し、または崩壊する危険性が高い」となります。
 ただ、この定義だけではわかりにくい側面もあるので、我々が管理組合に説明するときは、先程の倒壊した建物と、もちこたえた建物の2枚の写真を提示して、倒壊の危険を免れる補強をやっておきましょう、という提案を行い、耐震化の動機付けをしています。危険性が高い状態から、危険性がある状態、さらに危険性が低い状態にもっていくかたちです。

 

 それを耐震基準の変遷から考えていくと、耐震診断が必要なマンションは昭和56年以前の旧耐震基準の建物です。さらに、東京においては、昭和56年の3年前、昭和53年くらいから新耐震基準に移行する準備期間として、役所の指導の範囲で新耐震に準ずるような計算を義務づけていました。
 そのため、昭和53年から56年の建物はOKがでる建物もあり、ダメな場合も、耐震改修は少しの補強で済み、さほどハードルは高くない。一方、昭和46年から53年、地方では昭和56年までですが、この間の建物は、耐震診断をして耐震改修を行い、Is値0.6以上を目指しましょう、という建物となります。
 また、昭46年以前の建物は、敷居を縛っているタガが30cmピッチでさらに細い。一方、昭和46年以降は、ピッチが今の基準に近くなっています。その差はかなり大きくて、昭和46年以前の建物を今の基準にあげるのは、なかなかハードルが高い。我々が初めて管理組合に行くとき、そのあたりも確認したうえで、今の基準と同等とはいかないかもしれないけれども、診断して補強していきましょうか、というアドバイスとなり、ややトーンが変わってきます。

 

 実際に耐震診断が必要なマンションと現状を考えてみますと、正確に言うと、昭和56年5月31日以前の確認申請を取得したマンションで、経年では築後36年以上経っています。
 こういう建物に立ちはだかる壁としては、住んでいる方の高齢化、賃貸化、建物の老朽化など、先程挙げたような工事が必要になってきます。こういう状況のなかで、耐震化をしなければならない。管理組合との話で必ず出てくるのは、耐震改修の必要性や費用の捻出に対する考え方が違うということです。
 例えば、実際に住んでいる場合と賃貸にしている場合には、考え方がかなり違います。また、自分の部屋に影響がなく、修繕積立金も今のままなら同意するが、そうでない場合は反対という、耐震改修についての理解を得られず、人ごとのような対応をされる方々もいます。あるいは、ドンドン進めていって有効な対策はあるのか、など、こういう発言が次々とでてくるので、一度、話を打ち切ります。
「できない理由」を話し合うのはやめて、「できる方法」を考えましょう、と。また、もう自分は齢だから大地震で無理に生き延びなくてもいい、という意見も必ずでます。こういう方には、あなたはいいかもしれないけど、あなたのお子さん、お孫さん、あるいは他の人が地震に遭遇する危険はあるから、何とか一緒に考えましょうよ、とはっきり言うようにしています。同時に、耐震化をどういう目的でやっているかの説明をします。家族の生命や財産を守り、安全で快適な生活を続けるためには耐震化が必要ということで、「できる方法」を考えます。
 どのマンションの耐震化の話でも、「できない理由」がたくさんでてきますが、そこを「できる方法」を考える方向にもっていきます。できない原因が100個あったら、それを一つ一つ解消していき、戸別の事情にも積極的に対応する。例えば、気持ちはあっても、どうしても協力できない場合もあります。そういうケースにも、真剣に取り組む。資金については、お金がないことを言い訳にしないで、長期修繕計画を見直して資金繰りを整理していこうよ、と一緒に考えていく姿勢を大切にしています。

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