イベントレポート詳細Details of an event

第82回 AGC Studio Design Forum
AGC リノベーション展+DESIGN セミナー
「マンションに100年安全で快適に暮らす方法
− 耐震化に取り組む中で見えてきたマンション再生の考え方 −

2017年10月21日(木)
講演会/セミナー

マンションの大規模修繕の特徴 ~新築ならばこうやるのに・・・

 

今井 私が耐震改修を始めた頃、マンションの性能を上げるのはハードルが高いよ、という説明をしていたのですが、現在は、大規模修繕をやるときに、元の性能に戻すという方法をアドバイスしています。 
 雨漏りがあるときに雨漏りは直さなくていい、サビてしまった鉄部を直さなくていいよ、という人は少ないはずです。ただ、新しく何かをつけようとすると賛否が出てくる。例えば、よく挙がるのがオートロックです。お金がかかるというのもありますが、防犯上、オートロックをつけるかたちなので、「オートロックの防犯性はどうなのだ」という議論と、今まで鍵をもたずに出入りしていた出入口に鍵をかけるので、多少の生活の不便さもでてくる。そういうようなことで、賛否がでてくるわけです。耐震も同じで、新しく何かをつけるときにハードルが高くなる。そういうときに、何とか上手くアドバイスできないかということで、5年ほど前に本を書いているときに仲間と議論しながら考え、こういう図をつくりました。

 

 今までの計画修繕の考えは、築後10年、20年、30年くらいのマンションについてのものがほとんどですが、もっと先を見据えて、我々は築後36年以上の耐震改修も行っています。基本的に30年を超えると、エレベーターの更新や給排水設備の更新、建築部品では玄関ドア・アルミサッシ・手摺りなど二次部材の更新などが視野に入ってきます。それらを変えるときに、30年前や40年前の部品を探してきてつけるわけにはいかないわけで、現在、新築用に使っている部品を改修用に使って取り替えていくと、自然に少しずつ性能は上がる。一方、グレードアップしないで、そのまま元の性能を維持しながら100年もつのかと考えたとき、それはこの図のグレーゾーンに突っ込んじゃうよね、ということになります。
 50年ほど前、先の東京オリンピックの時代を考えると、日本人は木の家に住んでいて、お風呂がある家とない家があり、トイレが水洗ではなかったりした。アパートで考えると、共同炊事場や共同トイレなどがあった。それが今の若者にどれだけ受け入れられるのか、ということを考えると、やはり性能を上げていかないと、100年残らないのではないか、という考えに至りました。

 

 今日は建築関係の方も多いと思うので、マンションの大規模修繕の特徴についてお話します。
 一つは、すでに建物があるということで、新築ならばこうやるのになぁ、ということができない。中に人が住んでいるので、住みながら行う工事となり、住めない状態にはできない。また、さまざまな意見があって、工事に賛成の人ばかりではない。管理組合はやろうとしているのに、それに反対の人がいる。そういうなかで、我々は仕事をしなければならない。それから、合意形式が必要ということで、皆さんで集めたお金を使って、大きな金額の工事をやるので、それなりの手続きが必要で、時間がかかります。工事をやる側、また我々コンサルティングの立場からすると、そこのコストも見込まないと、長いおつきあいが難しくなります
 ざっくばらんに言うと、大規模修繕をやろうかどうしようか、ということになってから工事が終わるまでは、管理組合側から見ると3年ほど、我々が関わるのがその中間くらいで、関わった後の設計に1年ほど、工事に半年ほどかかり、最低で1年半、あるいは2年ほど必要になってきます。

 

 実際の工事の写真でご説明しますと、住みながら行う工事ということで、例えば、こういう仮設工事ですと、出入口は上から物が落ちてきても防げるように養生する。職人さんが出入りするところは施錠し、さらに夜間はW錠にして、現場監督しか入れない状態になるようアドバイスします。以前は工事中にヘルメットをかぶっていない人もいましたが、今はヘルメットと安全帯の着用は習慣化されて、安全に対する意識があがってきています。
 足場で部材を持ったり、下の段の人に渡したりする作業も発生するので、モノが落ちて、通行人や住人の方に迷惑をかけることも防がなければなりません。そこで、ガードマンを配置して、上部での作業と下を通行する方との調整を行います。ただし、建物の表側にガードマンが数人いて、同様に足場を組んでいる裏側に一人もいない、というような状況も見受けられる。こういう点を我々がチェックして、ガードマンの配置を検討して、安全を確保しながら工事を進めていく、ということも行っています。

 

 また、マンションの改修工事で、「専門家だから、あなたが決めてくれ」と言われることがあります。しかし、100のマンションがあると、100の好みがあるわけで、「私はわかりませんよ」と、はっきり言うようにしています。工事に関する意志の決定は、管理組合や修繕委員会にある程度任せて進めていくわけですが、塗装の色決めなどは、その旨の掲示をして「意見がある方は参加してください」と、事前に告知をだします。後で、「誰が決めたんだ」という話になったときに、「皆で決めたんだ」と言えるように、できるだけ多くの人に集まってもらい、色を決めていきます。
 このマンションは、耐震補強のブレースの色決めを皆で行った事例です。マンションの外壁がブルートーンなので、青となりましたが、一口に青と言っても、白っぽい青から濃い紺色までいろいろあり、どれにしよう、という話になりました。そこで見本色を作り、最後に2色にしぼって実際に塗ることもやっています。色を確認するとともに、皆に集まってもらって一緒に作っていく、という感覚が重要なのかなと思います。
 また、ここのマンションの理事長が、シックな外壁色にできないか、という要望を持っていて、かなり議論になりました。カラーシュミレーションやアンケートもとり、最終的には既存色に少しアクセントをつけるのでOKということで、ベースの色については一部を実際に塗り、アンケートを繰り返して決めていきました。

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