イベントレポート詳細Details of an event

第85回 AGC Studio Design Forum
AGC リノベーション展+DESIGN セミナー
「ワンストップリノベビジネスについて」

2017年11月16日(木)
講演会/セミナー

いかに収益を上げつつ、お客さんに満足してもらうか

 

渡邊 これは、購入者の視点から見たメリットでした。それに対し、今度はワンストップ・リノベを提供する側の視点から考えてみます。購入者から見ると非常に魅力的なサービスなのですが、ではなぜ、こんなサービスが日本で一般化しないのか、なぜまだ未成熟な段階なのか……。すごくシンプルな答えになります。それは、このサービスを提供する側が儲けにくい(と思われている)からです。事業者サイドは、労力の割に合わないのです。儲けることだけを考えたら、新築をつくるほうが楽。新築を紹介して仲介するほうが楽に儲かるのです。僕らもいろいろ模索しながらやっているのですが、会社として収益性を保てなければ継続できないので、いかに収益を上げつつ、お客さんに満足してもらうかという両輪をうまく回さねばなりません。そこが難しく、業界全体の課題でもあります。

 

この仕事が儲からない要因は大きく3つあります。この買い方自体が未成熟ですから、広告しても集客が難しいのです。新築のニーズは世の中にたくさんあります。また中古住宅を買う人のニーズもたくさんあります。新築と中古のニーズの比率は7:3と言われています。そしてこの中古住宅を購入してリノベーションしたいと考えている人は、まだ圧倒的少数です。たぶん数パーセントしかいません。こういう未成熟なターゲットを集めようとしても、広告したところで集められないのです。この5年、10年のうちにリノベーション事業を始めた会社は、建築屋さんや不動産屋さん、メーカーなども含めてたくさんあると思うのですが、ニーズがないから集客できない。素晴らしい事業だと思いますが、ニーズが顕在化するまでは本当に苦しい。この顕在客がいないということがサービス提供側としての大きな課題です。

 

 2つ目の課題は、不動産と建築という両輪をうまく回すことの難しさです。このサービスでは、お客様の要望を聞いて物件を探し、さらにお客様の要望に応じたデザインをして工事して、お客様にお渡しするという流れになります。この業務には不動産屋と建築屋の仕事が混ざっています。物件を探す仕事は宅建業界のビジネスであり、見つかった物件に設計をして工事をするのは建築屋さんのビジネスですね。これを1社で提供するハードルが高い。今までずっと不動産業だった人や組織が、急に建築をやったり、逆に今まで建築ばかりしてきたところが不動産業を営むのはそんなに簡単じゃない。ですから、みなさんどうするかというと、外注パートナーを探す。不動産屋さんは仲のいいリフォーム屋さんと組んでワンストップリノベをしようとしますし、建築屋さんは周辺の不動産屋さんに物件探しをサポートしてほしいと依頼するわけです。ただ、こうなると利益の取り合いが起きます。高い物件を売りたい不動産屋さんと、高い工事費をとりたい建築屋さんの思いがけんかしてしまってお客さんの思いに十分こたえられなくなる。残念ながら、不動産業界と建築業界には考え方や互いの立場に対する大きな溝がありますよね。不動産業界からすると「建築なんて面倒くさい」「業者に丸投げすればいいや」と思っているでしょうし、建築業界からすると「不動産なんて右から左に流すだけの仲介をするだけ」「ああいうあこぎな商売なんてうちはやりたくない」と、互いに嫌い合っています(笑)。

 

今日、来場のみなさんはそうでないと思いますが、一般的には不動産屋さんは建築屋さんを下に見ていますし、建築屋さんは不動産屋さんのことを下に見ていますね。そしてできるだけ大きな仲介手数料を取りたい不動産業と、多めの工事費を取りたい建築業は利益相反してしまいます。でもお客さんの側からすると、物件にいくらかけようが、リノベーションの工事費にいくらかけようが関係なく、最終的に自分に理想の家が手に入ればいいわけです。提供側がそういう利益配分にこだわっていると、お客様に対してベストな提案をできなくなってしまうのです。それが業界全体の大きな問題であり、不動産屋さんと建築屋さんがタッグを組んでサービス提供することの一番の問題点になります。残念ながら、これは抗いようのない現実です。不動産屋さんは情報力とスピードで商売をしている。一方、建築屋さんはスキルや技術、ノウハウに命を懸けているので、折り合いません。私もいろいろな経営者さん、不動産屋さんや建築屋さんの社長さんを知っていますが、頭の中、普段考えていることが違います。そういう価値観の異なる2社がタッグを組んでやると、お客さんに最適のサービスを提供できないと思いますので、今求められるのは、中古住宅を購入してリノベーションするという買い方を、しっかりプロとして提供できるような事業者だと思います。ですから私たちとしては「これが正解」と言い切るわけではなく、中には上手にタッグを組んでいる事例もあると思いますが、全て1社でサポートできるというのがエンドユーザーからすると満足できると思いますので、私たちとしてはその領域に特化してやるためのワンストップサービスを展開しているわけです。1社完結型のワンストップこそが重要になります。仲介の方でも工事の方でもしっかり売り上げを立てていくやり方が大事です。

 

もう一つ付け加えると、国全体が中古流通が当たり前の世の中をつくり切れていないことに大きな問題があります。なので、中古住宅を検査する、また瑕疵保証を得られる、こういった仕組みがここ最近、ようやく動き出した程度なので、まだまだC to Cの仲介、個人対個人の取引の場合は、基本的に瑕疵が認められず免責になりますので、どんなに状態が悪い物件を買ったところで、売り主の責任が一切ないということになってしまっているので、まだ中古住宅を買うことについて、制度が整備しきれていません。今後は国交省が取り組んでいく流れですし、金融機関も考え方を変えつつあるので、ワンストップのリノベーションはますます伸びるんじゃないかと考えています。

 

 今後、当たり前になる中古流通の時代に対して、私たちは中古住宅を購入してリノベーションをするのが有効だと考えており、今私たちはB to Bの事業を展開するリノベ不動産というネットワーク組織を活用して全国にワンストップサービスをできる事業者様を増やしていく。おそらく、やられたことのない会社さんには「どうやったら不動産とリノベーションのワンストップができるのだろう」と悩んでおられると思います。不動産屋さんの場合は「うちはリノベーションをやったことがない」と。また建築屋さんの場合は「うちは不動産を触ったことがない」と。いずれにしてもやったことがない会社さんばかりですので、「こうやったらうまくいくよ!」というノウハウを今、私たちは全国に提供しています。僕らは今横浜を中心にやっていますので、せいぜい東京や横浜くらいしかサービスを提供できませんが、全国の事業者様がこのワンストップサービスを当たり前にできるようになると、全国の消費者が中古住宅を買ってリノベーションをするという買い方をできるようになりますので、もっともっとこの市場が大きくなります。そうなると、ゆくゆくは、大きなことを言えませんが、今、社会的な課題になっている家余り、空き家の問題ですとか、中古住宅の流通活性化など、社会問題の解決に寄与できるのではないかと考えている次第です。

 

私の話をまとめますと、今後、ますます中古住宅が流通する時代がやってきますので、ぜひ、それに向けたサービスをつくっておくべきだ、と。その中でも中古住宅を買ってリノベーションという買い方が徐々に注目を集めるようになってきます。そういう買い方自体は、お客さんから見ると、予算的な面、立地的な面、内装の自由度の面などがすごく優れていますので、より魅力的な提案になる、と。ただし、その魅力的な買い方がまだ当たり前になっていない。なぜ、そうなのか、と言うと、ターゲットが少ないのもありますし、国の制度が整っていないのもありますし、そもそもそのサービスを提供する業者が儲かるような仕組みができていない、と。ですから不動産や建築の垣根を超えたサービスをできるようにして、事業者も儲かるようなサービスに作り上げるというところが大事だということになります。私からは以上になりますが、次は、うちの中田の方から、リノベーションのマーケティングについての話をさせていただきます。

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