イベントレポート詳細Details of an event

第84回 AGC Studio Design Forum
AGC リノベーション展+DESIGN セミナー
「補助金を使って窓改修」

2017年11月9日(木)
講演会/セミナー

国交省と経産省の補助金の違い

 

山下 ここで、非住宅の最強補助金を紹介しましょう。
先程述べたように、国交省・経産省・環境省のスリートップが建物の節電・省エネ化に関わる補助金をたくさん出していて、そのなかでも二大巨頭が国交省・経産省になります。一番人気があるのは経産省で、600億円の予算を組んでいるエネルギー使用合理化の補助金があり、最初に述べたように、この審査を通るのがとても難しい。ですが、各省庁によって審査の基準が違うので、そこを考慮すると、採択の「10割打者」が可能になるわけです。
経産省は、経済の循環を第一とするという条件があります。例えば、ビルのオーナーが「赤字なんやけど、経産省の補助金を使えるか?」という場合、「赤字だと税金を払ってないので、経済の循環を見る経産省の補助金は難しいです」ということになります。
最近は、民事再生のゴルフ場を買収したオーナーからの依頼も多いのですが、このケースも経産省の補助金は難しいです。オーナー自体は優良企業であっても、補助金に付加価値をつけて転売する可能性もあると見なされるので、民事再生されている物件に補助金は出せない。では、不動産屋はどうかというと、不動産屋は補助金で儲けてはいけないという大前提があり、補助金でリニューアルをして転売する可能性があると見なされると、ダメということになります。このため、業種は何か、というチェックも入ります。
転売については善管注意義務で、最低5年間、向こう10年間は転売してはいけないというのがあり、そこに住み続けるか、使い続ける物件でないとダメ、となります。

 

病院・介護施設・社会福祉法人などにも、ドロドロの問題があります。
社会福祉法人は、元々国の援助で建物を建て、補助金で事業をしているところが多く、全国の内部留保で3〜5兆円あるという話があります。それを受け、今年4月、国が「改正社会福祉法」という財閥解体のような法律を施行し、利益を社会に還元しなさい、という動きになっています。
また、経産省は内部留保のチェックも行っていて、さらに、社会福祉法人の理事の人数に対して、評議員という第三者の目を増やしていくこともチェック項目に入っています。

 

いろいろなセミナーで、改正社会福祉法を受けた皆さんが「補助金をもらわれへん」と嘆いていますが、「補助金は通ります。国交省に出せばいいんです」と、お話しています。では、国交省は何をポイントにしているかというと、“建物が省エネになればいい”という点です。オーナーが赤字でも、民事再生でも、内部留保があろうが、省エネの条件をクリアすればOKです。
「そしたら、皆、国交省に出すやんか」という話になりますが、実際は、国交省に出す人の数は少ない。なぜかと言うと、建物の躯体をいじりなさい、窓を改修しなさいという条件が付いているからです。
関西の大手の設備メーカーやエネルギー会社は、長年、経産省の補助金を使ってきた文化があります。一方、国交省は、建物をいじるという建築のジャンルになるので、設備に関してはプロ中のプロのメーカーが、躯体に関しては「さっぱりわからへんわ」というのが現状でした。
では、躯体の専門家であるゼネコンはというと、仕事がありまくりなので、補助金の分野には入ってこない。そこで、「誰がやんねん」ということになり、「窓屋がやったらええやん」ということで、私が手をあげて、国交省での申請を行っています。つまり、一つのやり方として、経産省で難しかった方に、国交省も100億円以上の予算を組んでいるので、そちらに出してはどうですか、という話をしています。

 

国交省と経産省の補助金の違いを見ていきましょう。
経産省の補助金は大きく2つに分かれ、材料・工事代の3分の1が出る「エネルギー使用」と、LED電球交換の3分の1が出る「省エネ生産性革命」があります。ただ、省エネ生産性革命は、電球代の3分の1のみで、工事代は出ません。国交省も材料・工事代の3分の1をもらえます。
国交省と経産省で何が違うかと言うと、経産省では、撤去費と諸経費をもらえない。例えば、LED電球だとかわいいものですが、クーラーの残材処理だと数百万〜数千万円になることもあるので、それが3分の1出るか出ないかは、かなり大きい。工事の管理・諸経費についても、国交省は3分の1出るが、経産省は出ない。同じ1億2000万円の工事をしたとして、国交省は窓工事を重視するので、国交省だと3分の1の4000万円が出るが、経産省だと3000万円や2000万円になるなど、額が変わってきます。
また、最も違う点は申請方法です。補助金申請には、膨大な書類が必要となります。国交省は事務代行を認めていて、経産省は「オーナー自身がやらないといけない」というスタンスです。
そのため、事務代行を経て経産省に申請をあげている場合でも、経産省からオーナーに直接電話が入り、例えば、「この省エネ率20%はどのように算出したんですか?」というような質問を急に受けることになります。そういう詳細をオーナー本人が把握するのは難しいので、「ちょっと確認しますわ」と言うと、「今、答えなさい。答えられないんだと、自分でやってないな。別の人がやったんか」という話になったりします。

 

補助金の支払いは、現金やリースなどがあり、経産省は割賦払いを認めていないのですが、国交省は認めています。
この違いを、金融機関が喜ぶことがあります。なぜかと言うと、リースを組むと、リース会社が所有権を持つことになり、補助金はリース会社に入ります。その状況で、もし、オーナーが倒産すると、リースの資金面のとりっぱぐれのダメージに加え、リース会社に入っていた補助金を返さないといけない、というダメージが重なります。
今は、優良企業もいつどうなるかわからない世の中なので、そういうリスクを、リース会社や銀行は怖いと思っています。こういう状況下で、国交省で割賦払いを認めていることが、金融機関にとっては大きな違いになる。割賦では、所有権はオーナーにあり、補助金はオーナーに入ることになります。オーナーが倒産して、とりっぱぐれるリスクはあるにせよ、補助金を返すというダブルパンチを免れることはできるわけです。

 

入札に関しては、補助金の申請書を出す際に、経産省は3社相見積りが必要で、国交省は随意契約が可能という違いがあります。随意契約OKというのは、学校・病院・介護施設などがとくに喜ぶ点で、国交省だと1社でもいいわけです。
省エネ改修後には、本当に省エネになったかどうかを国に報告する「エネルギー報告」の義務があります。これに関しての国交省の基準はゆるめで、2年間の報告の義務となり、一方、経産省の基準は厳しく、3年間の報告義務です。省エネの実現率の程度によっては、経産省は、補助金の返還を求めることもあるほどの厳しさです。
このように、国交省と経産省では、補助金の額も違いますし、事務代行を認めるかどうか、改修後の報告時の対応にも違いがあります

 

省エネ改修の結果で言うと、15%の省エネ率と計算で出ても、結果的に光熱費が2倍の30%くらい減るのが一般的です。「窓が替わったから、こんなに違うんかなぁ」という声も、よく聞きます。国交省の補助金では、窓の工事が必要になりますが、それによって冷暖房の効きがよくなり、こういう付随するメリットも出てきます。
また、採択結果が出る期間も異なります。国交省と経産省では、国交省のほうが早く、工期も国交省は長くとってあるので、まず採択をとっておいて、予算の関係で、次年度に工事を行うことも可能です。
これらのことから考えると、非住宅の建物については、国交省の「既存建築物省エネ化推進事業」という補助金が一番良い、ということになります。
この補助金は、工場・倉庫を除く、事務所・店舗・ビル・学校・病院・ホテル・介護施設などの社会福祉法人などが対象です。補助率は、建物が分かれている場合、1棟ごとに上限5000万円として、改修費の3分の1となります。工事条件としては、先程も述べましたが、躯体に関わる窓の工事が必須となり、それにプラスして、LED電球交換・空調・給湯器・ボイラー・換気扇・エレベーターなどの工事が加わります。
詳しく言うと、窓の改修については、建物全体の3割以上をやればいい、という条件です。例えば、10階建てのビルだとすると、暑くなりやすい上層の3階部分の改修でもOKで、全部をやらなくてもいいのです。

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