イベントレポート詳細Details of an event

第84回 AGC Studio Design Forum
AGC リノベーション展+DESIGN セミナー
「補助金を使って窓改修」

2017年11月9日(木)
講演会/セミナー

賢いオーナーさんは、賢い業者と付き合ってください

 

山下 今日は、補助金のプロの方もいらっしゃると思うので、一歩踏み込んだお話もいたします。
経産省の補助金のなかに非住宅、つまり、事務所・店舗・病院・工場・倉庫等の住宅ではない分の補助金について、今、業界に激震が走っています。
どういう激震かと言うと、一番多いのが、非住宅の「エネルギー使用合理化」のための材料・工事代が3分の1ほど出る補助金についてです。600億円ほどの予算を組んでいる大きな補助金ですが、7割以上の方が不採択になっています。申請に落ちた方が困っている状況でして、そのなかで私がどうしているかと言いますと、各省庁を横断的に使う方法があり、例えば、国交省や環境省の補助金を使うなどの使い分けをしています。そのため、「10割打者」というマジックになるわけです。
最近、経産省の補助金で不採択が多いのは、「中小企業に還元する」という側面があるため、大企業が落ちています。また、学校法人や社会福祉法人は大企業扱いになるので、7割強が落ちている現状でして、そういう場合にどうすればいいかについて、この後、お話をいたします。

 

 いろいろな方向けのセミナーをやっており、オーナー向けのセミナーの場合は、「賢いオーナーさんは、賢い業者と付き合ってください」、という話をします。今は価格が下がりきっている現状なので、そういうときに、さらに値下げの話をすると、「あんぽんたんですよ」ということになります(笑)。
今以上の値下げ交渉をすると、工事の手間を省かれる怖れなどもあるので、それを避けて、賢い業者と付き合って難局を乗り越えようということです。では、「賢い業者とは誰や?」というと、「賢く国の補助金や保険を使える業者を選んでください」とご説明しています。
逆に、メーカー向けのセミナーでは、オーナーに先程の話をしているので、補助金についてオーナーに聞かれたときに、「わからんわ」という返事では、「仕事ないですよ〜」という話をしています。

 

国交省に出向くことも多いのですが、その際、技官の方に、「補助金を使ってくれ、という案内をセミナーでもっとやってくれ」との言葉をかけられます。
一世代前までは、「補助金を使うのは、ずるい」というような見方もありましたが、補助金は国の予算なので、国の課題や問題点について付く、という特徴があります。例えば、地震が起きたら耐震補強が課題になる、高齢者が増えたらバリアフリー化が重要になる、などです。そのために補助金を使うのは良いことなので、もっとピーアルしてくれ、と。なので、セミナー時には、「自信をもって補助金を使いましょう」と、お話しています。
セミナーで、「補助金はなくなるのでは?」と質問されることが多いのですが、「なくなりません」と答えています。なぜなら、自然災害などの問題はどうしても発生するので、国にとっての問題がなくならない限り、補助金も続くことになるからです。

 

もう一つ、最近、補助金についての激震が走り、大転換期を迎えています。
2011年3月11日に東日本大震災が起こり、原発が停止して、節電と省エネが大きな課題になりました。そこで、LED電球に替えたり、クーラーを省エネタイプに替えたりということで、国をあげて丸5年間行ったわけですが、電気消費量はほとんど変わらなかった、というのが現状です。
その関連の或る会議に呼ばれたとき、「君の業界が悪いんや」と言われたので、「何の話しですか?」と聞いたところ、「国が調査をしたら、開口部である窓から、建物の熱が8割出ていることがわかった。窓が“犯人”や」、と。これは、補助金の視点からいうと、窓が犯人(問題)なのであれば、窓を良くすれば、そこにチャリンチャリンと補助金が出ることになる。一昔前に、住宅の窓をペアガラスに替えると、エコポイント制度の補助金をもらえましたが、なぜかというと、節電・省エネの問題点の一つが「窓」だったからです。
クーラーだけ替えてもダメで、クーラーと窓の併せ技でないと、本当の節電・省エネにはならない。国の言葉をかりると、これを「魔法瓶化計画」と呼んでいます。建物の中が魔法瓶になれば、クーラーの効きが良くなり、適温になるとクーラーを消せる。それが本当の節電・省エネだ、と言われています。
では、今の日本の窓の現状はと言うと、日本にある既存の建物の6000万棟のうち、大半が1枚だけのシングルガラスで、そこから熱が出入りしていることが判明しています。ガラスの枚数としては何千億枚と言われていて、それをペアガラス、トリプルガラス、二重サッシなどに替えることで、住宅が魔法瓶化されて、本当の節電・省エネになる、と。
それに関わる国の対策として、住宅向けの「住宅ストック循環補助金」と非住宅向けの「既存建築物省エネ化推進事業」があります。前者では窓を替えると、後者ではクーラーと窓を替える併せ技を使うと、補助金がチャリンチャリンというより、ドサンドサンとかなり出ます。窓が課題になっているので、そこに補助金が付くというわけです。

 

今、「ヒートショック」という緊急事態も発生しています。ヒートショックとは寒暖の差でして、これを原因として、日本では高齢者を中心に年間12万人が亡くなっています。自動車事故で年間に亡くなる方の24倍にも及ぶ数です。
ヒートショックが起こる場所としては、風呂場が多く、湯船につかっているときは血管が拡張し、湯船から出て体が寒さを感じると、血管が収縮します。その時の血管の拡張と収縮の程度が甚だしいと、脳の血管が切れて倒れてしまい、そのとき湯船に倒れ込むと、溺死にもつながってしまいます。ヒートショックによる死亡は、風呂場だけでないことも報告されていて、要は、寒暖の差が激しいと、健康上のリスクが高まることになります。
ヒートショックに関しては、私が関わっている「健康・省エネ住宅を推進する国民会議」でもいろいろな話が出てきています。このヒートショックの“犯人”についても国が調査を行い、風呂場の換気用小窓から冷気が入ってきて、それが大きな要因になっている、ということでした。そういう小さな窓の断熱化も必要となり、そこに補助金が出ることになる。さらに、人の命に関わってくる問題なので、風呂場の窓の断熱化も非常に大事になってきます。
最近、湯船のタイプとして「魔法瓶浴槽」というのがあり、これに替えることで補助金をもらえます。また、一昔前のタイル貼りのお風呂をユニットバスに替えても、補助金が出ます。魔法瓶浴槽・ユニットバスともに節電・省エネになるので補助金が出るわけですが、先程のヒートショックという問題が関わってくるため、余計に補助金が出ることになります。国交省に加え、厚労省なども、この後押しをしています。
このように、省エネや断熱化というのは、補助金がもらえるだけでなく、人の命を救い、元気で生きていられる「健康寿命」を延ばすことにつながります。新築もそうですが、既存の6000万棟の建物に関しても、窓の断熱化が必要となります。

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