イベントレポート詳細Details of an event

第42回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念対談イベント

2014年3月7日(金)
講演会/セミナー

倉方 さて、ノルウェーに関しては、最近、あまり建築家の名前を聞かないですよね。でも例えば、スヴェレ・フェーンという人がいて、日本で言うとメタボリズムと同じ世代の人です。
70歳くらいになってからプリツカー賞を受賞した人なんですけれど、またスノヘッタという建築事務所も有名で、オスロとニューヨークに拠点をおいています。このスノヘッタがオスロのオペラハウスをつくっています。
これがノルウェーに着いたその夜に撮影したオペラハウスです。このようなガラス建築です。
これはシドニーにあるオペラハウスのオスロ版みたいなもので、要するに、こういうシンボリックな建物で自分たちのアイデンティティーを捏造しているわけですね。非常にきれいですね。こういうスロープがあり、一面のガラスを通して中が透けて見える。昼よりも夜のほうが、このように幻想的でガラスの効果がよく出ています。

 

ノルウェーにはほとんど平地がないんですね。フィヨルドと山がある。これも、よく見ると山の形なんですね。すごく直接的な表現をしています。
シドニーのオペラハウスが船舶の帆みたいな形をしているように、ノルウェーというと、山や氷河という、そういう分かりやすいイメージで全体の形ができています。これは近寄るとディテールが非常に良くできています。

 

ノルウェーは建築の技術が非常に高くて、日本と同じように高いレベルでできています。単純なアイコン建築のように思えるのですがディテールがすごく良くできています。オスロは最近、開発が進んでいるようで、これがその様子です。オフィスビルですが世界一の会計事務所の自社ビルらしい。これはもやはりガラスの効果で美しい。
このソースは何かと言うと、雪の結晶ですね。ノルウェーのアイデンティティーを辿っていくと、自然環境ということになる。ただし、オスロをはじめノルウェー全域には、そういう自然を建築化したものがないんです。ですから、これもある意味、ノルウェーらしい建築を捏造していると言えます。

 

次はスウェーデンです。
これなどはガラスのロマンティックな効果をうまく出していますね。ガラスの素材感と、その奥にあるガラスにしかない観念みたいなものを感じさせますね。(ノルウェーの建築写真の紹介が続く)

 

ところで、戦後における日本の復興や都市開発は当時、もっとも先端的だったイギリスとスウェーデンに学んでいます。爆撃でやられたロンドンの都市政策や公共建築を日本は参考にしました。
またスウェーデンの都市計画というのも、当時はかなり紹介されています。この写真などはその象徴的なもので、ストックホルムの中心街が戦争で破壊されたのを、こういうモダンな手法で再開発している。これは本当に絵に描いたような都市計画ですね。
非常に無機質な印象を受けますが、これを見ると近代都市計画というのは間違っていなかった、と誤解してしまいそうになります。この建物などもみんなガラスなんですね。
近代建築が持っていたガラスの透明性というのは、近代社会に求められる透明性でもある、と。そういう意味でのモダニズムの理想がスウェーデンにはあります。

 

非常に教科書的なのですが、人間が復興するために近代建築や近代都市計画を採用した。ストックホルムでは、そういったものがすごく純粋な形でいまでも感じられる。この写真のように、このビル群のガラス面から漏れるあたたかな光というのは、都市にあたたかさと統一感をもたらしますね。
スウェーデンは大国なので、王宮などの建物、新古典主義の建築がけっこうあります。そういう古典主義的な建物とモダニズムがあまり不調和な印象ではなく共存している。
新古典主義というのは統制のとれる手法なので、合理的でもある。そういう時に、ある統制がとれた公共主義的なガラスというものが、都市全体に調和を与えています
スウェーデンが持つ、人間主義的な合理主義というのを知ると、IKEAが生まれた背景がよく分かります。(スウェーデンの建築写真の紹介が続く)

 

次はフィンランドのヘルシンキです。
ヘルシンキへ行くと、またちょっと感じが違うのです。けっこう多様な様式があり、ゴシックや古典主義やモダニズムもあり、街を歩くとおもちゃ箱をひっくり返したような印象を受けます。
ノルウェーやスウェーデンにあった単一の指向性みたいなものが読み取れないんです。ただし、よく見ると、そのいずれも質が高い。
要するにアールデコ的なものも、古典主義も、モダニズムも全部質が高くて、独立性もある。たぶん、フィンランドの人たちというのは、取り入れるのがうまいのだろう、と思いました。(写真の紹介が続く)

 

こう見て来ると、フィンランドというのは体感的にいいと思えるものは何でも良しとするのではないか、という見方もできます。ある意味、日本と似ている部分があります。
ここまでご紹介したように、北欧ではガラスのモダニズム的な使い方もあれば、ロマンチックな使い方もある、ということでした。

 

ということで、今日のテーマと強く関連するわけでもありませんが、ガラスというのは工業製品であり、ある種の非人間的、無機質でよそよそしい側面もあるけれど、使い方によっては、その透明性に人が正しく出会えるとか、規則正しさなどを与えてくれる、ということを北欧でも見ることができました

 

そういうことを前振りに、冒頭に話した日本的な建築に対して、ガラスはどのような佇まいとして表れるかというと、まだ未知なのですが、今回のコンペではそういった未知の領域にみなさんがチャレンジなさったということだと思います。

1 2 3 4 5 6 7