イベントレポート詳細Details of an event

第42回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念対談イベント

2014年3月7日(金)
講演会/セミナー

第2部 ディスカッション

 


 

倉方 ここからしばらくの間、トークセッションを行います。
実は、今回のコンペ作品の詳細については、今、3人の話を聞き、また先ほど岩瀬さんの展示作品を見てよく理解したのですが、共通している要素があると思いました。それは、従来からの構築的な、西洋的なガラス建築ではなく、どちらかといえば日本的と言うか、環境に対して呼応するようなガラス空間をつくりたい、と。
この環境というのは、人間はもちろんのこと、風とか光などですね。そういう点で3人は一致していた。とはいえ、3人それぞれに個性があって、いろいろと考えさせられるおもしろいプロジェクトだと思いました。

 

私はモデレーターなので、私自身が発表するべきではないのですが、建築史家という私の立場からは、ちょっと思い当たるところがあり、少し話題提供のつもりで、北欧の建築に関する話を10分ほどいたします。まあ、単なる「北欧見聞録」なんで、軽く聞いてください(笑)。

 

ちょうど1カ月くらい前に北欧を訪ねる機会がありました。ノルウェー、デンマーク、フィンランドの3カ国ですね。
6日間ほどでパタパタと回ってきました。目的の1つは、その3カ国の区別がつかないから、という一般人的な発想なのです(笑)。確かに分からないですよね、特殊な人でないと。
ノルウェー大使館というのは、吉村順三が設計した建物なんですよ。それを観に行った時に、他の北欧国家の話が出たのですが、日本人にすれば、よく分からないんですよね。スウェーデンとノルウェーとフィンランドが歴史的にどのような関係にあり、どのような文化的背景とつながりがあるか、など。
スウェーデンは北欧の大国なんですよ。一時はノルウェーやフィンランドもスウェーデンの一部だったという時期がありますし、フィンランドの一部はロシアだったこともあるのです。そういう経緯で意外と仲が悪かったりして。大体そういうものですよね。
遠くから見ると同じように見えるけれど、仲が悪かったりする。一般の西洋人が、日本と韓国、中国の文化的違いや歴史的経緯などをよく知らないのと同様に、つまり、アジア辺境の3国がほとんど同じと思っている西洋人がいるのと同じように、僕らも北欧についてよく知らないわけですよね。北欧から見ると、日本と中国、韓国は仲がいいと思っている。

 

 

それはさておき、実際に行ってみると、その建築に3カ国の違いがすごく出ていると感じました。建築を通してみると、この3カ国は全然違う
北欧の3カ国は「国民国家」とされ、国としての自立が少し遅いのです。ロシアに支配されていたとか、フィンランドの独立は1917年ですし、ノルウェーの場合にはナポレノン戦争の後にスウェーデンから独立している。ともかく、大国ではない。ヨーロッパの辺境にある。
そうするとナショナルロマンチシズムというのは、例えばガウディなんかもそうですが、大国の周辺国が19世紀から20世紀にかけて自分の国を立ち上げる時に、そのアイデンティティーを建築に求める、ということがあります。
アールヌーボーなどが出て、従来の型にはまった建築様式から抜け出そうということをイギリスもドイツもフランスもやったわけですね。だから、周辺国は「これを加速すれば俺たちも中心になる」という世界観が出て、ガウディが出てきたり、北欧やチェコなどの東欧にもそういう動きが出てきたわけです。

 

日本の場合、それに似ているのは、伊東忠太ですね。そういうナショナルロマンチシズムについては、いろんな意味があって、例えばクラシックにおけるロマン主義というのは、非常に男臭いですね。ベートーベンが代表で、あまりモテそうにない(笑)。
ここにない何かを求めるのがロマン主義だ、と。つまり目の前にあるものではなく、理想、イデアは目に見えない”山の彼方の”にある。そういうようにロマン主義というのは、男性的で「遠くに真実がある」という考えです。

 

その一方で、ロマンチックという言葉には女性的な響きやイメージがありますね。情緒的であり、男性の観念の世界とは対照的な感じがする。たぶん、男性、女性のどちらもロマンの範疇に入っているんです。つまり、遠くにあるものを希求する、そういったものを捏造してでも求める、という。そういうロマン主義的なロマンチック。
もう一つは目の前にある情感的なものに身をよせていく、ということ。その両方がある。
そういうところについて、ノルウェーとスウェーデンはかなり違う。

 

ノルウェーはどちらかというと、男性的なロマンチックです。ノルウェーにはバイキングの歴史がありますけれど、それは太古の歴史であり、デンマークに支配されていた頃の、近代と太古の間の歴史が乏しい
日本で言うと、北海道に似ている。北海道へ行くとアイヌの歴史から、いきなり開拓史の歴史になってしまいますね。”内地”の博物館のように、古代、中世、近世、という流れと分類になっておらず、古代からいきなり近代になる。実はアメリカの博物館もそうですね。自然史の後が、いきなり建国200年の歴史になる。
フィンランドとノルウェーというのは、そういう歴史を自分で、太古のものから引っ張ってきて捏造してでもつくり出そうというロマン主義のところがあります。そして、そういうありようがガラス建築と重なっているところがある

 

先ほども言いましたけれど、西洋的なガラスというのはロマン主義的なガラスのあり方、構築的なあり方をしている。そういう構築的な中にも多様な使い方がある。
ここから紹介する北欧3国の建築写真は恣意的な画像ですし、各国にそれぞれ1日半程度しかいなかったので体系的なものではなく、もし、北欧の建築を専門的に研究している方がいらしたら「デタラメだ」だと言われるかもしれませんが、建築史家はデタラメを言うのが仕事でして(笑)、直感的に的を射抜く、というのが建築史家なので、ずっとその分野をやっている人よりも、初めて来た人が多くを見通すことができる瞬間がある、ということを感じ、少しお付き合いください。

1 2 3 4 5 6 7