イベントレポート詳細Details of an event

第42回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念対談イベント

2014年3月7日(金)
講演会/セミナー

●第一部 3組のプレゼンテーション

 


 

岩瀬 岩瀬と申します。お隣は今回の構造設計を担当した佐藤淳構造設計事務所の井上健一さんです。本日はよろしくお願いします。

それでは「KUSANAMI(くさなみ)」と題して発表をいたします。
まず、このコンペではガラスと光をテーマに扱うということだったのですが、私はそこに風という要素も加えようと考えました。というのも、現代建築において、ガラスは内外をつなぐ境界面として存在し、固いものであり、視覚的なつながりを内外に持たせているのですが、実際に設計をする際は、風という要素がその境界面に関してかなり支配的な役割を果たしているからです。
外の環境にある風圧によって、ガラスの大きさと厚さなど製作寸法が影響されます。ですので、ガラスのカーテンウォールなどは視覚的には透明なのですが、実際には、その境界が厚くなっていき、もろさや繊細さなどガラスの特徴が失われているのではないかと思っていました。
そういった支配的なガラスの設計要因としての風と対峙するのではなく、もう少しガラスと風が戯れるような、そんなあり方を目指しました。
そこで提案したのが「KUSANAMI」という空間です。

 

まず、この動画を見て頂きたいのですが、「くさなみ」とは草むらに風が入った時に光の波をつくる、そういったものを「くさなみ」と呼ぶそうです。
この動画の風景は、草、風、そして光の3者が一体となったような風景のあり方だと思い、すごく美しいと感じました。今回、その草をガラスに置き換えて、風と光、ガラスの3者が一体となるような空間を目指しました。
「KUSANAMI」の空間は、この「KUSANAMIユニット」の配置と組み合わせによって構成します。使用するガラスは、薄板ガラスで、通常は携帯電話やテレビ、ノートパソコン等のディスプレイに使われている2.2㎜厚以下のガラスです。非常にたわみやすいガラスです。

 

1階に展示したのは提案したのと同じ1:1サイズのものですが、旭硝子さんのレオフレックスという化学強化ガラスを使っております。0.55㎜というもっとも薄いタイプのレオフレックスを最大寸法である1800㎜という高さで用いてその空間をつくっています。

 

1枚の薄板ガラスはもちろん構造的に不安定なのですが、それを2つの方法で安定させ、風にたなびくような空間にしました。まず、ガラスの下端にゆるやかなカーブを描くことで安定させます。また1枚ではまだ不安定なので複数のガラスの上端部をクリップで連結させ自立安定させています。それを「KUSANAMIユニット」と呼びます。
このように「KUSANAMIユニット」の間を風が抜けると、拡散した光が空間を乱れ舞うという状況を想定しました。
これは模型写真ですが、KUSANAMIユニットに光が入ると、ガラスの落とす影とガラスを透過する光、また反射した光が混ざり合って、このような雰囲気になります。そして光の入る方向や風の状態によって見え方が変わります。これが1つのユニットです。
このように太陽光が入る角度によってさまざまな反射の光をつくります。

 

こうしたKUSANAMIユニットの2つのモデルについてご説明いたします。
2種類の風向きを想定し、2つのモデルを提案しました。上のほうが夏と冬、その主要な2方向の風(夏冬の卓越風)を想定した空間になっています。
下のほうはランダム方向から風が入って来る状態を想定したKUSANAMIユニットです。上の主要2方向の風に関して、こちらが夏の風のモードで南南西からの心地よい風が抜け、冬は、南東の風がガラスの上をかすめていく、そんな空間を目指しました。これが模型の写真です。
朝と昼、それから夕方、光の入り方によって空間が変わっていきます。またランダムモデルでは、このように風が抜けていって、ランダムにガラスを揺らします。これがその模型写真です。また、こちらが動画です。
以上が、コンペの公開審査でも提案させていただいた内容です。

 

次に、このスタジオで展示を作る際の手順や実際、またそこで考えたことなどをお話しいたします。

 

これが模型で検証した形です。8枚のガラスが柔らかな曲線を描きながら並べてあります。床のパターンとガラスから落ちる影、そして光が一体となるようにアールに合わせて立てています。
これが構造の検討の様子で、ここでは高さ1800㎜を自立させるために半径1780ミリの円弧上の緩いカーブを設けており、それにより自重を支えられます。また右の図は、そよ風が吹いた時に50㎜以上変形するということを検証したものです。

 

次は安全率についてです。これはガラスとヤング率が同じアルミを使って実寸で検証したものです。
実は、1枚でも自立します。もちろん、押すとパタンと倒れてしまいます。また2枚で自立するものもあれば、2枚では自立しないものもあります。面白かったのは、3枚にしたパターンで、2枚で自立しなかったものが3枚で自立するなど、予期せぬパターンが出現しました。

 

自立するかしないかについて、最終的にヒントになったのは、アールの方向をそれぞれのユニットでどちら側に傾けるかということでした。全部同じ方向を向いたアールなのか、それとも真ん中の1枚だけ反転させたアールなのか、などによって安定度がまったく異なってきます。
実際に1階でご覧になっていただいた展示は計8枚のガラスでできておりますが、3枚でつくったKUSANAMIユニットが2つで、2枚によるユニットが1つ、計3つのKUSANAMIユニットで全体を構成しています。
3枚のガラスでも向きがちょっと違ったりしているので、それぞれ違う形が出てきています。

 

床の素材に関しては、もともと考えていたのはゴム系のもので、私たちが使うマスクの鼻の部分を保護する柔らかい素材を表面の仕上げ材として用いる予定だったのです。それを使うと伸縮性が非常に高いので、ガラスの立ち上げの際にぴったり接することができるので、風がない室内環境でも、人がその床の上を歩くと、ガラスが揺れるだろうと。
また上部をクリップで連結することによって床の部分にも予期せぬ形が出てくるだろうから、そこの隙間を埋めるクッション材になるだろうと思っていたのです。
ところが、その素材を受け取ってみたら、1つ1つの個体差が大きすぎて、例えば色が違っていたりするので、とりあえず仕上げ材としての採用を中断し、下地に使う予定だったポリエチレンフォームを上にして、そのゴムを下にするというように、当初とは反転させた仕上げにしております。

 

なお、クリップについては、「こんな形でも簡単にガラス空間が作れるのか!」ということを表現するために、非常にシンプルで象徴的なものを使おうと考えていました。
当初はイカクリップと呼ばれる、イカを焼いた時にイカが丸まってしまわないようにするためのものなんですが(笑)、その形がいいと思ったので、そのまま使おうと考えていました。でも、実際に使ってみると強度が足りなくて、改めて検討し、最終的には、この四角いクランプ状のものがしっくりきたので、それを使っています。

 

最後に設営風景を画像で紹介します。今回、実現に至るまで多くの方々にご助力、ご協力いただいき、たいへん感謝しております。

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