イベントレポート詳細Details of an event

第40回 AGC studioデザインフォーラム
「STEPS IN THE AIR」展 連動企画 「階段」のいろいろ
─世界の珍しい階段やあまり知られてない階段の紹介とお話

2014年2月20日(木)
講演会/セミナー


(画像4-1)
内田 私も逓信省時代に、壁から出た階段をやったことがなかったので、佐賀県立図書館でこの写真の螺旋階段をつくりました(画像4-1左下)。
この時は知識がなかったので、この(踏み板の)端部をつながなかったのです。きっと、つないでおくと、もっと踏み板を薄くできて、グラグラしないものにできただろう、と。
これはつなげていないので、1つひとつがキャンティレバーで、まぁそれでも落っこちることはなく40年近く保っていますが、つないでおくべきだったと反省しています。

 

で、右の写真は直階段でも壁持ち出しでつくられるだろうと、やってみたものです。津島郵便局の階段です。これは、壁際を上がっていくとここで頭をぶつけてしまう(笑)、だけど、避難階段ですから下から上がることがないんですね。必ず上から降りて来る階段。
しかも、この階段を下から登らないように、この最下段は池になっている(画像4-1左上)。上がろうとする人は一度池に落ちないと上がれないようになっていました。今はこの建物がもうないのですけれど、当時は、ここの2階に電話交換手がいて、それぞれの回線をつなぐ仕事をしていた。
万が一、そこが火事になったら、降りるためだけの階段を降りて逃げる。火事なのだから、逃げた先が浅い池になっていても問題ないだろう、と。この電話局は伊勢湾台風に遭いましたが水に浸かっても交換所としての役割を果たしたようです。

 

 


(画像4-2)
ところで、鉄骨の螺旋階段は壁から出すのではなく、軸から出すものである、と私は昔、思い込んでいたのです。
この写真は1950年代につくったもので、まず柱を立て、こういうものを付けて、溶接で踏み板を付けました。東京中央学園宿舎の外階段です(画像4-2左下)。
そうすると、現場で「これは大変だ」とさんざん怒られました。どうしてかと言うと、下から溶接していくと、軸がどうしても曲がってしまい、それを直すのが容易じゃない、と。それで、今までの螺旋階段はどうやってできているのかと考えたわけです。
その頃は既製品の螺旋階段がありませんでした。既製品の階段は真ん中に軸があって上からストンストンと落としていくようになるんです。これもそうすれば良かった、と後になって思いました。

 

最近はみなさん、そういうことは知っているようで、私のような苦労はしません。これは国会議事堂の塔屋に上る螺旋階段(鉄製・柱持ち出し)です(画像4-2左上)。これだけ太い芯があって上から(踏み板を)ストンと落としていく仕組みになっています。

 

 


(画像4-3)
それから、こちらは非常にいい螺旋階段だと思っているものです。札幌にあるサッポロビールの煉瓦館のものですね(画像4-2右)。札幌を訪れる方の多くが、ここでビールを飲むという、あの建物にある螺旋です。一般に公開されていない奥の方にこれがあります。
これも柱持ち出しで部品を上から落とすようになっています。この階段では、手摺にこういう模様のものを付けているのがいいですね。
実はこれ、ターンバックルになっています。これで長さを調節しているのですが、その調節部分やねじを隠すための工夫が素晴らしい。

 

一方、これは不思議な階段です(画像4-3中央)。これは今日、ぜひ、太田さんに見てもらいたいと思っておりました。これはキャンティレバーがないんですね。
で、どうやって吊っているのかと言えば、どうやら、手摺から吊っているのです。手摺から降ろしたワイヤーを踏み面が突っ張ってここに通る、と。これは水戸徳川ミュージアムの螺旋階段(鉄製・踏み面手摺吊り)です。こういう螺旋階段の中では断然スリムで素晴らしいものだと思います。

 

 


(画像4-4)次のは鉄板を曲げて部品化しているので、完全な既製品ではないと思いますが、こういうユニットにして、それを上から落としていくやり方です(画像4-4左下)。完全な既製品でなくとも部品化が進んでいますから、使いやすいと思います。

 

またこういう既製品もあります。どうして、こういう便利なものが売れないのだろうと、不思議なんですが。これだと、ここから上がってあそこへ行きたいという螺旋階段が、どこでも簡単に組み立てられる。組み立てられた写真がこういう形です(画像4-4右下・左上)。
まあ、デザインがあまり良くないとは思いますが、実用的という特長はすごいですね。右回りでも左回りでも自由にできちゃう。非常に丈夫だし。ただ、日本人の好みに合わないのかもしれませんね。

 

 


(画像4-5)
一方、木造・柱持ち出しの螺旋階段で有名かつ素晴らしいのは、この資料の階段です(画像4-5左)。
キャンティレバーで出しておいて、それを手摺につなげていく。
アントニー・レーモンドさんが東京女子大のチャペルの中に、石の階段と木の階段をつくっています。両方とも螺旋階段です(画像4-5右2点)。そのうち木製の階段は、この資料の螺旋階段と非常に似ています。少し重たい感じもしますけれども、なかなかきれいな階段です。

 

それに負けずにやっている木製の螺旋階段は山形の旧済生館病院本館のものです(画像4-5左下)。済生館はご存知のように(下層は)16角形なんですね。これはその(上層にある)8角形の塔に登っていく階段です。螺旋なので16角形でも8角形でも問題ないんです。
このように日本らしい模様が付いています。

 

 


(画像4-6)
そろそろ終わりに近づいてきましたが、この写真の螺旋階段は見ての通り、よくわからないんです。軸もなければ、壁もない。構造が何で保っているかわからない(画像4-6左)。
今ならコンピュータの解析でできるだろうと思いますが、コンピュータのない頃に、これをどうやって計算したのか感心させられます。こういう桁が内側にも外側にも回っている。
手摺は、構造的な効果をもっていないと思いますが、ちょっと素晴らしいものですね。

 


(画像4-7)
一方、ガラスの吊り階段というのはいくら探しても見つかりませんけれど、こういう石でつくった吊り階段はいくつかあります。これはたぶんロサンゼルス水道電気局だと思います(画像4-7左)。その玄関を入ったところのロビーにある螺旋の吊り階段です。これはやはり、ここがミソで、苦労しているところですね。
この帯で上と下とを留めて、それをここでつなぎ、長さを調節していますね。ロビーの飾りとしての役割を持たせていますからお金もかけており、床はガラスではありませんが、こういうガラスの使い方をしているのですね。

 

あと、ミラノにこういう階段もあるらしいのです。私は直接見ているわけではないのでよくわかりませんが、ポポラーレ銀行の鉄製吊り階段です(画像4-7右)。
2層にまたがった長尺のものですが、骨がないんです。そのため左右に揺れますね。ですからそれを防ぐために上は真ん中で吊っているんです。それから下も真ん中で留めている。(それだけの構造では)回転してしまうので、横面のところでも留めています。

 

これがその留め部分のディテールです(画像4-7左2点)。手摺ですがかなり複雑で、これを見ていると、太田さんがこのスタジオの階段でなさった苦心もよく分かります。
これで、終わります。

 

 

太田 内田先生、どうもありがとうございました。聞きながら、ガラス階段をつくって本当に良かったなぁ、という気持ちがこみ上げてきました。私もいろいろと調べながらこの階段の構想を練ったつもりだったのですが、まだ知らない階段がたくさん出てきて、今日、教えていただいた階段は、とても想像力を刺激してくれるものでした。

 

内田 また、階段をつくりたくなったでしょう?(笑)

 

太田 ええ、つくりたくなりました。今日、聴講なさった方々も、明日から「どういう階段をつくろうか」と思われたのではないか、そういう魅力的な階段がたくさんあったと思います。せっかくなので、改めてお尋ねしたいのですが、ガラスの階段で内田先生の印象に残っているものはありますでしょうか?

 

内田 見たことありません。今まではガラスで階段ができなかったわけですよね。強度の問題などで。

 

太田 まぁ、壁から持ち出しの階段はあるように思うのですが。

 

内田 厚いガラスを積み上げてつくるようなものはあるかもしれないけれど。

 

太田 ご紹介いただいたサーリネンの吊り階段について、あの段板は何でできているのでしょうか?

 

内田 石じゃないかね。サーリネンだからコーリアンかもしれない。

 

太田 寸法の精度もすばらしいように見えますものね。今日は名作がすごく多くて、階段学会なんてものができてもいいのではないか(笑)、と思うくらいで。
本当にありがとうございました。

 

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