イベントレポート詳細Details of an event

第40回 AGC studioデザインフォーラム
「STEPS IN THE AIR」展 連動企画 「階段」のいろいろ
─世界の珍しい階段やあまり知られてない階段の紹介とお話

2014年2月20日(木)
講演会/セミナー

内田 では次の階段へ行きます。

 


(画像3-1)
これはロンドンに1950年頃にできた「恐竜の階段」(直階段・RC・中下桁)というものです。
真ん中に軸があって、両側にキャンティレバーが出ている。この階段の格好があまりにも良かったので、日本でもこういう階段がいくつかできました。
こういう、竹中工務店さんによる国際観光ホテルのメーンロビー階段みたいなのはヨーロッパでも流行って、これの影響を受けて、こういう種類の階段がいくつか工夫されています。

 

これはコンクリートでつくるのが大変なんですね、仮枠をつくるのが。日本のように大工さんがいるところはいいですけれど、イギリスでこれをつくろうとしたら、大変な費用がかかるはずです。

 

 


(画像3-2)
それで、鉄で造って、踏み面が鋳物、というような形になっています。これは形も単純だし、しっかりしていて、これを一つのピースとして作っていくのだろうと思います(画像3-2左)。

 

この種類のものは、いろんな形のものができて、いずれも「恐竜の階段」と呼ばれ、一時、大流行りしました。今は流行っていないようですが。

 

次の階段は桁が2つあるので、平凡な印象を受けますけれども、1本にすれば多少揺れるだろうという気がしますので、2本にしたほうがうまくいくだろうと思います(画像右)。

 

 


(画像3-3)
もっと小さな階段でなかなかうまいものがあります。これは家の中のベッドサイドや屋根裏などへ上がる簡単な階段です(画像3-3左)。この、何がきれいかと言うと、この桁がモーメントの形をしており、真ん中が少し太くなっていますね。それがしゃれている。それから手摺もシンプルになっていて、この部分で固定して動かないようにしている。
もう1つは、大きな本棚などで高いところに行ける、また横にスライドできるタイプのものです(画像3-3右)。この横に動く階段はいくらでもあるのですが、普通、(はしご状で)登りにくいんですよね。
しかし、この写真の階段は、こちら側に反らしているので、乗ると安定するのです。これがこの階段のミソではないかと思います。横によく動くし、上がると安定する。ただ、手摺が1本というのはちょっと怖いかもしれません。

 

次は、日本でよくある箱階段です。箱階段は外国にはどうやらないような気がします。でも日本ではこういうタイプは非常に多くありますね。
この写真は秋田の民族資料館に寄贈してあるものです。こういうのも骨董屋さんで見られるもので、それほど驚くようなものでもないと思います。

 

 


(画像3-4)
一方、この写真(画像3-4右)は、今日のテーマ(AGC studioのサスペンション構造のらせん階段)に近いもので、垂直階段ですが吊るタイプの階段です。
垂直階段を棒で吊っているのは多くあるのですが、ワイヤーで吊っているのは珍しい。しかもこれはエーロ・サーリネンの作品ですから、図面もきれいだし、出来上がりもきれいです。
これで感心している点は、先ほど太田さんがガラスの吊り階段のところで説明してくださいましたが、サーリネンも苦労して、板の厚みを十分にとっているのです。上と下を固定しています。これで階段が安定しているのです。
ただ、これの欠点は横にぶれることです。
一応、直線階段はここまでにします。

 

 


(画像3-5)
ここからは曲線階段を見ていきます。
曲線階段というと、鉄でつくるのが普通で、日本ではいい大工さんがいるから(凝ったものでも)普通にあり、海外には日本のように手の込んだ階段はないと思っていたのですが、これはクラクフというポーランドの古都で、ワルシャワに次ぐ国内第二の都市にある、こういう曲線階段です(画像3-5右上)。この階段で感心したのは、この納め方と仕上げですね。
で、回り階段と言うと日本は木造が多かったのです。これは旧帝国製麻の階段ですね(画像3-5右下)。こういう木製の回り階段はヨーロッパの大工さんでは作られないと思います。

 

次は喜多方にある商店で、甲斐本店(*著名な甲斐本家とは違う建物)という店舗内にある曲がり階段です(画像3-5左3点)。これは、木を曲げてつくったのか、それともこういうクセのある木を加工して使ったのか、ちょっと分からないのですが、こういう曲がり方は容易につくれるものではありません。これは日本の大工さんだからこそできたと思います。

 

もう一つのは、神奈川県の三渓園聴秋閣にある階段です(画像3-5下段中)。数寄屋造りの建物ですが、本当に感心させられる形状の階段です。
ここに普通の(勾配の強い)直階段を掛けますと、ここで頭を打ってしまう。それから下の戸棚が開かなくなってしまう。そこで、こういうように曲げると、上もぶつからないし、下も通れる、と。これは日本の階段の傑作の1つではないかと思います。
もちろん、鉄ならばこんな形状もわけないですね。いくらでもできる。

 

 


(画像3-6)
こちらは村野藤吾さんの旧千代田生命本社、現在は目黒区総合庁舎となっている建物にこういう曲げ階段があります(画像3-6上下段左・中段上)。
これを作るのに大変なご苦労があったようで、いろいろ調べたり聞いたりしてみたりしたところ、やはり仕様書が違うんですよね。
仕様書の中に「試作費」というのが入っていて、それが5000万円ですから、試作を別に1つつくってみたようです、仕上げをせずに。それで保つかどうか検証してみた。
ただ、これも残念ながら、1階の床に足が付いている。ここの処理がうまくできなかったのだろうと思います。
最近だとこういうのはコンピュータで計算して、建築家が変な絵を描くと「これはできません」というようなことが直ちに判明し、改めてモックアップを作ってトライするのでしょうが、これはそういうことのない昔のものですから、よくここまでできたなぁと、感心させられます。まあ、こういうのは非常に個性豊かな階段です。
村野さんは階段に関していろいろな資材を開発なさっています(画像3-6右上)。あまり知られていませんが、床にゴムでタイルを張る。そのノンスリップの仕組みは、ゴムメーカーが今でも踏襲して売っています。それからこういう鉄板の最後の部分の始末や手摺など、多くの部品を残しておられます。

 

 


(画像3-7)
次は螺旋階段です。これは有名なバチカンの螺旋階段ですね(画像3-7左上)。
こうやって上から覗き込むと穴が開いているようで怖いですね。その隣はブカレストにある螺旋階段です(画像3-7上段中)。
これらはもちろん全部レンガ造りでできています。どのようにできているかというと、その隣の図で、壁からキャンティレバーで出して、それを上から下へとつなげていく(画像3-7右)。
こういうやり方がありますから、さっきのサーリネンの上から吊った階段も、彼らにとっては不自然なものではない。こういうのは日本にはほとんどなくて、ヨーロッパが得意とするものです。

 

 


(画像3-8)
では、コンクリートで螺旋階段をつくると、どうなるのか? 日本のアパートでは皆無ですね。しかし、ヨーロッパでは螺旋階段のほうが基本で、真直ぐな階段のほうが滅多にない、と思ってもいいくらいです。
どうしてかというと、やはり、レンガ造だからです。レンガ造になれば、階段は円くなる。その歴史があり、鉄筋コンクリートになっても円くつくる。日本は木造建築だったので、鉄筋コンクリートになっても階段が直線的になる。

 

こういう写真の階段(螺旋・RC・柱持ち出し)は、既製の部品があって、それらを縦に積み上げていくとできるのだろうと思います(画像3-8右下)。これはパリにあるものでアーベドンというのはコンクリートの会社です。仮枠は、こういうものです。
一方、こちらはチェコの小さな現場です(画像3-8左上)。ここでは大げさな型枠を使えませんから、こういう小さな型枠を作って真ん中に穴をあけ、そこに鉄筋を通してコンクリートを流すと、こういう部品ができる。それを積み上げれば階段になる。で、ここまで見てきますと、螺旋階段の構法にはどうも2種類あるということが分かります。レンガ造の場合は壁から出すのですね。

 

 


(画像3-9)
一方、こういうのは芯から出している。日本でプレキャストコンクリートを用い、上手な階段をつくっているのは芹沢文学館の階段(螺旋・PC・壁持ち出し)です(画像3-9左上)。これはプレキャストの部品がすごくよくできています。
図面で見るとこういう形になります。原則としてこういう四角形の階段なんですけれども、この踊り場は現場打ちだろうと思います。
階段部分はこのピースを斜面にボルトで留めると踏み面ができる。それに穴が開いていまして、棒を通すと手摺ができる。で、こういうユニットで非常に丈夫にできています。
こういう螺旋階段の中では、作り方も含めて完成されていると思います。

 

次のは発想がちょっと違う。
構法は壁持ち出しなんですが、それをユニットにしている。これは第一工房の作品です(画像3-9右)。
一つずつがユニットになって、そこから腕が出ていますから、それを並べてやれば、どんな階段でもできます。屋外の階段としてはなかなかしゃれていると思います。
型枠は、このいちばん長い用のものを一つつくっておけばできます。なかなか面白い階段です。

 

 


(画像3-10)
またこういう螺旋階段で爽快なのはオーギュスト・ペレですね(画像3-10左)。これはペレが再建したル・アーブルの街の中の、協会の中に作った階段です。
しかし、こういうのと同じのを日本でもつくった人がいます。こちらも第一工房の作品で大阪芸術大学塚本英世記念館情報センターの階段です。これは打ち放しで、先のようにピースで作ったものではありませんので大変です。ピースならば、次々とボルトで留めていけば、こうなるのが分かるのですが、現場打ちでこれをやろうとするのは大変です。やはり少し余分に打って削るのですね。

 

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