イベントレポート詳細Details of an event

第40回 AGC studioデザインフォーラム
「STEPS IN THE AIR」展 連動企画 「階段」のいろいろ
─世界の珍しい階段やあまり知られてない階段の紹介とお話

2014年2月20日(木)
講演会/セミナー

内田 ご紹介いただきました内田です。
先ほど太田さんが設計された画期的なガラス階段を目にしましたので、今日は階段の話をさせていただきます。とりたてて新しい話をするわけではなく、私が大学の講義につかっていたスライドを、30年の間に少しずつ集めた階段の写真を、パワーポイントのスライドに作り直して、それを見ながら、お話しさせていただきます。
階段の歴史を追いつつ、最終的にはこのスタジオのガラス階段に到達できれば、と思います。

 


(画像1-1)
最初にご紹介するのは日本の階段の中で、もっとも基礎的な構造の、非常にきれいなものです(画像1-1右上)。伊勢神宮の外宮にある「御饌殿」(みけでん)の階段です(直階段・木製・ささら子架構)。
この建物は神様の飲食物をお供えするところですが、そこへ上がる階段は、こういうシンプルな「きざはし」になっております。
御饌殿は伊勢神宮の外宮のいちばん後ろの方にあり、街の中にあるものですから、街を歩きながらちょっと覗くと、見えるんです。どなたでも見に行くことができます。伊勢神宮の中では珍しく柱のない板倉の建物です。

 

横から見るとこういう形で非常に原始的な格好で、伊勢神宮の中にもこういう階段はここにしかないだろうと思います(画像1-1右下)。で、それのもっとプリミティブな原型はこちらの画像で、民家の中にある階段です。
これは場所を特定できませんが、たぶん、高知の中村にある民家だろうと思うのです。ひょっとすると東南アジアの写真かもしれませんが。

 

私が見た国外の原始的なささら子の階段としては、こういうものもあります。ルーマニアあたりですけれど、こういうものが段々と洗練され、伊勢神宮の中でこういう形になったのだろうと思います。
それから、こういうギザギザの階段で洗練されているのは京都御所の紫宸殿に、こういうきざはしがあります(画像1-1左)。これは「ささら子」とは言わないで「きざはし」と呼びます。

 

そしてそれをさらに洗練させたのが伊勢神宮の内宮本殿の中にあります(画像1-1下段中)。これらの階段よりももっとプリミティブなものは何だろうと、と考えますと、こういう画像があります。
これは何かといいますと、例えば、最近のように大雪が降りますと、このように歩いた足跡が残る。それと同じように例えば土の斜面に足跡を掘り込むと、このような原始的な階段の形になるだろう、と。

 


(画像1-2)
それを近代化したものはいくらでもありまして、この画像のように右と左の足を踏み分けて昇降するタイプなど、さまざまなところに散在しております(画像1-2左中ほど)。
(踏面と蹴上げを左右に別々にした)こういう階段の中で非常に感心するのは、この上の図面の階段です。(画像1-2左上)
亡くなられた進来廉さんをご存知の方がおられると思いますが、その息子さんが進来玄さんですね。その玄さんのお母さんが、廉さんと結婚して初めてフランスから日本に来られた時の、最初の住まいで、物干しへ上がるはしごがなかった。そこで手作りなさった階段の図面(直階段・木製・側桁)です。こういう非常にシンプルながら優れたものになっております。

 

でも、雑誌に出るような一般的な階段は、下にある図面のようなものですね。既製品にも左右に分かれた部品組立型の階段があります。
これは、真直ぐな棒を1本立ててそれの右と左にステップを付け加えてやると、こういうものができます(画像1-2中上)。建築基準法ではねられると思いますが、物置やロフトへ上がる階段なら、これで十分だと思います。このままの形状で角度を急にしますと、スネが段に当たってしまいます。しかし、踏み面を右と左に分けて段違いにすると、急でも立っていられるのです。

 

次の階段(鉄骨+RC)は、なかなかの傑作だと思っています。場所は福岡です(画像1-2右)。天神ビルのあたりから(かつては)見えました。
画像にあるように煙突の真ん中に右と左に分かれたステップがあり、実際には階段ではないのかもしれませんが、私は、これを階段だと思っています。手摺がありませんけれど、真ん中にある棒に捕まって左右のステップを踏んで上まで上がっていける。
降りる時は、上手な人だと、棒に捕まってそのままスルスルと降りて来られるかもしれない(笑)。

 


(画像1-3)
次は、こういう材木というか、集成材だと思うのですが、集成材をこのようにギザギザに切りまして、開いて並べてやると右左に分かれる階段になります。なかなか頭のいいやり方だなと思います。(画像1-3右下半分)
日本で集成材を使うようになったのは戦後なのですが、まだ、こういうのを作ったのを日本で見たことはなく、そのうち誰かがこういうのを作るかと思います。
で、その次は、同じ向きに並べたのを、幅で2種類つくっています(画像1-3右上半分)。こういうやり方はモジュラーコーディネーションでよく使われるのです。
例えば、20cmと30cmの幅にしておきますと、その両方の幅の階段ができるし、20cmを2つ合わせて40cmのものや、20cmと30cmを合わせて50cmのもの、さらに60cmなど、細かく10cmおきに階段幅を調整できます。ですから、こういう既製品をつくっておくと、いろんな幅のところに階段を付けられます。まあ、ヨーロッパでこういう階段を考えた人がいるわけです。

 

で、そういう仕組みでプレキャストコンクリート(PC)を並べて、レンガを積んだ幅に合わせて階段をつくると、こういうものになります(画像1-3左下)。既製品だけで階段をつくれるのです。
これは階高が一定でないとうまくいかないだろうと、たいていの方は思うのですが、私は一度、高等学校で階段をつくった時に、わずか5センチの階高の違うところが2カ所あって、違う型枠で2つつくるのはもったいないと思い、どうしたらいいかと考えたことがあります。

 

でもそんなのは実に簡単な話で、勾配を急にすればいいのです。勾配を急にしたら上がりにくいと思うかもしれませんが、3mで高さが5cmしか変わらないのだから300分の5でしょう? それを踏み面に直して、30cmのところに300分の5を入れると、コンマ5ミリになってしまい、そんなの昇降している時に気付きはしないのです。
そんな風に意外と階高も調整できる便利な階段です。これは、そのようにつくっているドイツの例ですね(画像1-3左上)。

 


(画像1-4)
一方、こちらの写真は、私のつくった鉄筋コンクリートの階段で、見て分かるかもしれませんが、これは写真屋さんが写真の芸術をつくるために撮った、建築かどうかも分からないようなものです(画像1-4左)。
もう少し分かりやすい例はこの階段で、これは1階から2階へ上がるささら子の階段で、真ん中に梁があります。梁もささら子と一体化してつくられています(画像1-4中)。
この階段も階高が少し違って、地下室で調整しなければ合わなくなる、と設計者を困らせたのですが、それは勾配を少し変えればいいのです(画像1-4右)。誰もその勾配が違うということに気付かないのです。
コンクリートの階段で、日本の住宅公団なんかでつくっている階段は、上も下もきっちり乗せようとするんですね。そうすると、この下の左の絵(画像1-3左下)にあるようにあごのところがなかなか合わないんですよね。精度がかなり良くないと合わない。
でもそうではなくヨーロッパのように下を引っ掛けておいて、上は寄り掛けておけばいい、と。原理は、はしごと一緒なんです。はしごは下がズレない限り上も動きません。そういうことを直感的に分からないといけません。
フランスのアパートなんかを見ていますと、立て掛けておいて、その間に木を掛けて、モルタルを詰めてしまえばいい、という感じでやっています。

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