イベントレポート詳細Details of an event

第39回 AGC studioデザインフォーラム
「STEPS IN THE AIR」展 連動企画
ガラス・エンジニアリングの歴史・現在・未来

2013年12月12日(木)
講演会/セミナー

 

佐藤 佐藤です。今回のガラス階段の構法についてお話しいたします。私の研究室では主に「ガラスの構造」をテーマにしております。
また、私の事務所で過去に実現したガラスの構造が、今回のガラスの階段の発想と通じるところがありますので、そのあたりの活動についても触れていこうと思います。

 

まず、ガラスの構造を実現した例をいくつかご紹介していきます。
こちらは2008年のヴェネツィア・ビエンナーレに出展した「エクストリームネイチャー」という作品です。建築家の石上純也さんと植物学者の大場秀章さんとのコラボでつくりました
こういう4~6mくらいの大きさですけれども、日本館の庭に温室をつくるというものでした。画像にある、いくつか形と大きさの違う温室を4つ点在させるというものいでした。
この時は中の植物を生かすためにできるだけ透明感のある空間にしたいということで、ガラスもできるだけ薄くしないと透明に見えないという課題があり、それをいかに(構造として)成立させるか、というポイントがありました。
また中に鉄骨のフレームがありますけれど、これも目立たないようにしなければいけない。

 

ベネツィアは地震のほとんどないところですが、風はけっこう吹きます。3カ月の開催期間中に風速20mくらいになることもあるので、ガラスを水平力、引張りブレースとしてきかせる設計をしました。
鉄骨部分は世界最高強度のものを使い、しかも溶接されているのですが、極めて繊細なものを使いました。このとき、柱配置を決める形態解析ソフトなどを開発しながら、この温室を実現しました。なおかつ、この時の細い鉄骨に関する施工技術は、その後も非常に役立っています。特に炙りの技術ですね。
このプロジェクトでは、この薄いガラスの納まりとして、屋根面と、この側面のガラスですね。側面は屋根から吊っているというシステムです。
ガラスを着地させ自立させようとすると座屈してしまうので、上から吊っているわけです。ちょっと見づらいですが、この部分にアルミの金物をつくり強力な接着剤で留めてあります。
この時、鉄骨のここから接合のプレートを出して、このアルミでねじ止めするという仕組みにしました。ほんのわずか、ここに非常に薄い緩衝材を入れていたのですが(緩衝材はできるだけ薄いほうが剛性にきくので)、そうしたところ、緩衝材が薄過ぎたり、施工段階で緩衝材を入れ忘れたりしたところが数カ所発生してしまい、ガラスの角が割れるところが出ました。
結局、現場でガラスを取り替えることになりました。この時、ガラスと固い金属との直接接触は、ほんのわずかであってもそれは断固避けるべき、ということを学びました。

 

こちらの画像は「Iz House(イズ ハウス)」というプロジェクトで、建築家は藤本壮介さんです。
これは、ガラスとアクリルを縦に積み重ねた上に木造のスラブを乗せるというものです。1段35cmのものを11段積み重ねて、別荘の小さな離れみたいな建物をつくりました。縦の材はガラスとアクリルだけです。
小さな建物なので、ガラスとアクリルだけでも、構造的、コスト的に成立しそうと考えました。もちろんガラスもアクリルも構造材としては認められていないので大臣認定を受けようということになり、こういった実験をして実施にこぎ着けました。
上棟した段階で、一応、構造は成立したのですが、事情があってこのプロジェクトは中断することになり、完成には至りませんでした。ただ、何とか建つことは証明できたわけです。
この構造は非常に簡単で、このスラブは角材を合板でサンドイッチしたランバー合板であり、そこにガラスとアクリルを挿入しています。ここに接着剤兼緩衝材が入っています。

 

またこの画像の建物は「クリスタル・ブロック」です。建築家は山下保博さんです。
これは、ガラスブロックを耐震壁として使うというプロジェクトでした。こちらが全体像で、背後に木造の3階建て本棟があり、その増築として建てたものです。
単独で自立する構造体ですが、3面が外壁になっておりそれらすべてがガラスブロックで覆われているというものです。
クライアントが鉱物をコレクションするのが趣味の人で、建築家の山下さんから「ガラスブロックは水晶のように見える」ということで、それで全体を覆うということになったわけです。それだけ多くの面積をガラスブロックで覆うのなら、ガラスを構造に使ってみよう、と。

 

先ほど太田さんからもあったように、ガラス自体は圧縮強度は非常に強い。ガラスブロックも強度的に十分なのですが、それをどのように構造へきかせるかが問題になります。
ガラスブロックというのはご存知のように目地があって、通常は隙間にモルタルを詰めるのですが、そこに収まるくらいの繊細な鉄骨を仕込んで、そのフレームとガラスの組み合わせで耐力壁の性能を実現しました。詳細な実験を経て実現に至っています。

 

納まりはこのようになっております。ブロック同士の隙間に入るくらいの鉄骨を使うのですが、その鉄骨だけでは耐震壁として不十分で、ガラスブロックが合わさることで十分な耐震力が得られます。
今の建築基準法だとこの構法は通らず、また先ほどのように大臣認定を得る時間がなかったので、大臣認定無しで、鉄骨の設計方法の隙を突くというか、うまく利用して、細いフレームだと変形が大きいのですが強度的には足りている。
ただし、変形が大きすぎるという問題があって、申請上は法規をクリアできる「鉄骨造」ということにしておき、実際にはガラスが嵌まって十分に固くなって地震にも耐えられることになります。そういうシステムを使って実現しました。
この鉄骨のフラットバーが19㎜という薄さでいけるのが分かりましたので、ここに止水のシールドをしますけれど、そんなに大きくならずにガラスの耐震壁を実現することができました。こうした経験を経て、緩衝材に関するノウハウを蓄積することもできました。

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