イベントレポート詳細Details of an event

第39回 AGC studioデザインフォーラム
「STEPS IN THE AIR」展 連動企画
ガラス・エンジニアリングの歴史・現在・未来

2013年12月12日(木)
講演会/セミナー

これは、7月に佐藤さんが解析してくださった構造シミュレーションです。だいたいこの辺りが揺れそうだ、など、揺れの様子を佐藤さんにお聞きしながら、やはり、もっと大きな模型できちんと試してみないといけないと思いまして、私の研究室(東京大学生産技術研究所)で4分の1の模型を作りました。
2.25mの高さで、アクリルから段板を削りだして、ワイヤーでつないで作りました。それをAGCのみなさんにも見ていただきました。

 

これを作った効果は非常に大きくて、実現に向けてするべきことや課題が、しっかり確認できました。
例えば、全体の部材は、真ん中に3本のメーンロッドがあって、ここが床下、ここが天井裏につながっているのですが、ここに、もう1本、引張り材をくっつけるパーツがあります。
開口に合わせて小判形につくった鉄骨が横たわっていて、そこからブラケットが落ちて来ます。それがこの辺りの段を吊っています。また、いくつかの段に関して、例えばこの右側がそうなんですが、ここからロッドが落ちて来て、いったんここで留めて、それからその下の段を留めているのです。2回留めている。2回留める時に、この下の段にぶつかるのです。
ですので、上から見ると、硝子はこのようにロッドをよけるようになっていまして、らせんのカーブのところでも同じように、段板がロッドに貫通されないような位置関係になるということが模型段階で分かりました。模型で検証を加えながらものをつくる難しさを体験しました。

 

このように、いろいろと試しながら進めたので、検討に時間がかかってしまい、揺れへの対策も暗中模索な状態が続きまして、この検証の2カ月後にスタジオがオープンする運びとなって、とりあえずその段階でのガラス階段の設置を見送ることとなりました。AGCのみなさんと話し合って、とりあえず、先日まで使っていた、先の鉄骨製のらせん階段を設置することになった次第です。
オープンしてから、僕も「やはり難しかったな」と感じていたところ、AGCさんから「プロジェクトを続けよう」と言っていただき、ガラス階段のプロジェクトがまた復活したのです。
とはいえ、積み残した課題の解決はかなり困難で、それを打ち破るために、2011年の8月に実大実験を行うというところに進んだのです。

 

これは横浜の研究所にこの写真のようなやぐらを組んで、3階の高さからロッドを降ろし、ガラスとアクリルの段板を施工し、揺れ方や力学的なことを実験したのです。佐藤研究室からも総出で参加してもらい実験と解析を行いました。
そこでは(全体構造の問題とは別に)私たち意匠設計側では、主に手すりの問題を検討させていただきました。

 

その実大実験から1年くらい時間があくのですが、その間も、AGCの方々が背中を押してくださったのですね。そうして今年の6月くらいから実施に向けて具体的に動き始めたのです。
実現を信じてはいたのですが、半分くらいは諦めていた気持ちもあったので、このようにでき上がったのは嬉しい限りです。

 

この画像はつい2週間前くらいのものですが、下のやぐら、もともと前の鉄骨階段でも使っていたものを再利用しながら1階床部分の段をつくり、床下と天井に新しい鉄骨を入れて補強することなどもして、かなり頑丈にしてからロッドを張りました。で、このように今日、披露できた次第ですが、本当に貴重な体験をさせていただきました。

 

一言だけ感想を述べるとすれば「今まで、なぜ誰もチャレンジしてこなかったかがよく分かった」ということですね。かなり頭を使う設計ですし、その頭を使うというのは意匠の我々だけでなく、というか、意匠側はほとんど頭を使っていないような気さえします。
構造の佐藤さん、そして施工図を描かれた旭硝子建材の島田さんをはじめとした、日本が誇るスタッフの方々が知恵を結集し、細かな施工の手順や金物の角度、取り合いへの気配りなどがなければ、絶対に実現しなかったと思います。いきなりこれを他の方々が作ろうとしても、解かなければならない問題がたくさんあり、そういう意味では、本当のオリジナルのプロジェクトを素晴らしい環境でさせていただいた、と感謝しております。

 

でき上がった印象はこの通りで、側板がなくて、段板は1枚50kgくらいの重さになるのですが、そのガラスが浮いて見えるわけですね。昼間はこう上から光が入ってきて、ガラスなりの乱反射をしてきれいですし、夜の照明では下からライトアップもしますので、昔、マイケル・ジャクソンの「ビリージーン」の動画で床が光っている映像がありましたけれど、その”光床”のような浮遊感がありますので、ちょっと揺れますが(笑)、階段という空中を移動する設備の歴史の中では、ひとつユニークなものがつくれたのではないかと思っています。
こういう機会をいただき、改めて御礼を申し上げます。

1 2 3 4 5 6