イベントレポート詳細Details of an event

第39回 AGC studioデザインフォーラム
「STEPS IN THE AIR」展 連動企画
ガラス・エンジニアリングの歴史・現在・未来

2013年12月12日(木)
講演会/セミナー

 

太田 太田です。今日はAGC studioへご来場いただき、ありがとうございます。ガラスのらせん階段「STEP IN THE AIR」の完成を記念して、これまでの経緯を佐藤さんと私で振り返ります。
ガラスや建築に関する話をしながら、「ここはこうしたほうがいいのではないか」「やはり(ガラス構造の階段は)揺れるじゃないか」など、会場の皆様からご感想やご意見をいただければ幸いです。

 

今日はまず、私から設計プロセスをご説明して、その後に佐藤さんから、構造についての詳しい解説をしていただきます。

 

では、私のほうからガラス階段の設計プロセスについてお話しいたします。
実は、このプロジェクトが始まったのはかなり前でして、2010年の2月に設計を開始しております。ここ京橋にAGCさんのスタジオをつくるという話は、その前の年から動き出しておりましたので、いろいろと試行錯誤しながら、どのような空間にするのだろうと話し合っており、その中で「ガラスの階段をつくろう」という構想が出て参りました。

 

この左側の画像が、最初に考えたイメージで「宙に浮いているような階段をつくりたい」と思ったのです。こう描くだけなら簡単なのですが、実際にやろうとすると容易でなく、この模型も糸で段を留めていたのですが、その模型を作るだけでも大変でした。しかし、階段というのは段板が命というか、段板がきれいに見える、それが階段の形になりますから、そういう階段をつくりたいと思ったのです。
このビルは、AGCさんがテナントとして入る前は、いまらせん階段がある位置には穴が開いておりませんで、まず、スラブに穴を開けて階段をつくらないといけなかった。では、どこにそれをつくるのか、というところから始まり、せっかく穴を開けるのなら、上から光が入ってきて、そこからガラスを照らすときれいだろうなあ、と思っていました。
そのイメージが強くありまして、この右側の画像に、建築ではたいへん有名な、エーロ・サーリネンのMITチャペルというのがございますね。これは上から光を落としているんですね。光の表現として、上から来る、こうしたものが非常にきれいだろうと思ったのが最初の着想になります。

 

もう1つの着想は、この右下の画像、「テンセグリティ」という構造が構法の世界ではありまして、バックミンスター・フラーという建築家が提唱し、ケネス・スネルソンという彫刻家と一緒に2人で取り組んだ構造システムです。
これは、ここの太いところが圧縮材でして、この圧縮材を細い引張り材のワイヤーで安定させるというものです。こういう圧縮材と引張り材を組み合わせて構造体をつくるというのがテンセグリティ構法なんですが、昔から、いつかやってみたいと思っていまして、テンセグリティのような階段ができないか、と思っておりました。

 

僕は学生の頃に、イタリアの建築家レンツォ・ピアノ(ポンピドゥーセンターや関西国際空港旅客ターミナルビル等を設計)の作品集を見ていたら「ガラスは圧縮に強いから、ガラスを圧縮材にして、そこに引っ張り材を取り付けると頑丈な家具ができる」と言って、実験的に家具を作っていたんですね。
それが頭に強く残っており、いつかガラスを圧縮材にしてテンセグリティができないかと、ずっと思っていたのです。そういうイメージが昔からあり、それをAGC studioの”ウリ”にしたい、と考えました。
それからまた別の理由もありまして、ガラス階段と言うと、やはりアップル・ストアのガラス階段が思い浮かぶわけですね。で、この画像は上海のアップル・ストアですが、日本では大阪・心斎橋のアップル・ストアにきれいならせんのガラス階段がございます。この展示にも協力してくださったエッカースリー・オキャラハンさんのグループが、それらを設計しているのですが、彼らがガラス階段における先駆者たちというか、現在の名手なわけです。
そのオキャラハンさんたちに「どうやったら勝てるか?」と考えたのです。アップル・ストアの階段は、確かに非常にきれいなものですね。しかし、構造的に見ると、段板の両側にガラスを曲げて、それを側板にしてそこに段板を留めているわけです。

 

階段の支え方には何パターンかあるのですが、よくあるのが、はしごのように段板の両側に側桁があって、その側桁で段を留める。それが板だったり、この曲げたガラスだったりするわけです。
それからT字状に、ガラスの段板の真下に桁を通して支えるというのもあります。結局、段をどのように留めるかに尽きるのですが、アップル・ストアがガラス階段の最先端だとして、やはりこれは両側のガラスの桁で留めているので、段板の小口が見えてこないのです。
ガラスを浮かそうとすると、両側にまたガラスを置かなければならない。この両サイドのガラスが、浮くことに対して邪魔をするわけです。段板だけを見ようとしても、その側板が映り込んだり、反射したりする。そこで側桁のない階段をつくれないかと考えたのですが、これがたいへん難しい。そもそも模型を作る時でさえ、それを作りながら、どうしたらいいのだろう、と。

 

この画像が、最初に佐藤さんに相談した時の模型ですが、基本的には今回と同じで、天井から床に糸を張って、糸で懸命に三角形をつくって留めていったのですが、これも当然、揺れますし、それ以前に、墨出しをすること、位置を決めるのが非常に難しいのですね。
1段目の上に2段目をつくろうとすると、2段目の、この点がどこかに留っていなければならないのですけれど、でもこの点を糸で引っ張ってきて、こちらの点も糸で引っ張ろうとしても、なかなか位置決めができない。けれども、まずはこういう、糸と針で模型を作るというところから始めたのが2010年の3月くらいです。
最初の2カ月くらいはこういうことをやっていました。で、ここのスタジオは、入り口のところからこの2階の半分までを私が担当し、デザインヌーブとしての設計になりました。
一方、こちらの、今私たちがいるスペースは乾久美子さんの設計になります。これがまさに乾さんのアイデアで、ガラスの中間膜を使ってカラフルな部屋をつくってみたい、ということだったのです。
そういう話を聞いて、じゃあ、デザインヌーブが担当するスペースは真っ白にしよう、と。そういう白い空間全体の作り方として、まず広くして、そこに上から光が落ちてきて、ガラスが持っている少し緑がかった光が宙に浮いている、というのが最初のイメージになります。

 

後はプランニングなのですけれども、もともとは梁がどうなっているか分からない状況だったので、よく調べると、ここの位置にしかスラブに穴をあけられない、と。そういうことが分かってきたので、どの程度の大きさの穴を開けられるかを考えながら、ガラスの階段を考えました。最初は、段をずっと回していって、段の直径を大きくできないかということを考えていました。
といいますのは、この穴の大きさだと1周り10段しかとれなかったからです。普通のらせん階段にしますと。1周り10段ということは、高さ200mmでも、頭をぶつけてしまうのです。
どうしても12段から14段くらい下がらないと頭がぶつかるので、この狭い開口でどのようにしたら14段くらい下がれるだろうかと考えて、最初は本当のらせんにしたかったのですが、それでは納まらないな、ということになった。

 

これは最初の図面そのままなんですが、これで14段とることになると1周りで2.6m下がる、と。ほぼ今の階段と同じ位置になるのですが、建築基準法に従うと踊り場を作らなければなりません。法律的には4m以内ごとに踊り場がなければいけない。そうすると、どこかでぐるぐる回るリズムを壊さなければならなくなる。
それに対する対応策は、穴の中(らせんの途中)に踊り場を設けるのと、1階に踊り場を設けるという2通り考えられたのです。ただ、途中に踊り場を設けるとすれば、途中で吊る機構がもうひとつ必要になってしまうので、1階の部分を1m上げて(踊り場にして)、そこかららせん階段が始まるという基本的な図面が決まりました。
次のこの画像は、糸で吊った模型に10円玉を貼付けて揺らしてみたものなのですが、揺れがどこから始まり、どこで終わるのか、など模型で試してみました。

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