イベントレポート詳細Details of an event

第38回 AGC Studio デザインフォーラム
「新しい建築の楽しさ2013」展連動企画 講演会 “展示デザインの楽しさ”

2013年10月29日(火)
講演会/セミナー

 

中﨑 こんにちは、中崎です。
今日は建築模型展と連動したエクストラなフォーラムになります。テーマは企画展のタイトルに寄せて「展示デザインの楽しさ」としました。
この企画展は建築の楽しさをどう表現するかがテーマでしたので、その展示自体を担当してくださった建築家に出席いただきます。“建築の楽しさ展”は昨年が第一回、今年が第二回目でした。そこで、昨年、会場構成を担当していただいた青木弘司さんと今年の担当者である松島潤平さんに、このスタジオでの展示デザインについてお話しいただきます。
また、ゲストとして中村竜治さんにも参加していただきます。ご存知のように中村さんはさまざまな展示デザインや舞台美術などを手掛けられ、世界的にもとても評価の高い方です。
その中村さんにまず、これまでの展示デザインについてお話しいただき、その後、青木さんと松島さんにも発表していただいた後、3人で展示の楽しさや難しさについてトークセッションをしてもらうつもりです。それではまず、中村さんからお願いします。

 

 

中村 中村です。よろしくお願いします。
展示デザインは建築と違って文脈が希薄なので、建築家にとっては難しい分野、仕事だと思います。もちろん、やる以上は希薄な中でも、そこから文脈を引っ張りだしてやっていきます。
いくつかの事例をお見せしながらお話しするつもりですが、少なくとも3つの手がかりを考えることができます。1つは重力という手がかりです。
2つ目は床、壁、天井で、これはどこにでも必ずあるので、それを使います。
3つ目は会場の広さを手がかりとして、全体のサイズが失われないように仕切る、ということを考えます。

 

この写真はリボンを展示するための会場構成です(散歩 ミナ ペルホネンのリボンプロジェクト/2008年リビングデザインセンターOZONE)。皆川明さんがリボンをデザインして、それを展示する、というものでした。
この会場で行ったのは、リボンを天井の2点で吊ると、けんすい線(カテナリー曲線)というきれいなカーブができます。その曲線を使いました。
多くのけんすい線をグリッド状に並べて、その(ギリギリ床に触れない)下端部を跨いで中へ入って行く。ほとんどのリボンは白色ですが、そのうちのいくつか色の付いた、皆川さんがデザインしたリボンがあり、それを発見する、という展示です。

 

*画像で紹介。人が動くと、リボンも繊細に揺れ、あたかもリボンの森の中を散策しているような感覚になる。

 

次の画像はイタリアの服飾ブランド「CoSTUME NATIONAL」のアーカイブ展の会場構成です。ギャラリーの中に服が12着ほど展示してあります。
ここでは、服と、それを見る人の間に、リボンのような布を垂らして、先のけんすい線に近いカーブを細かいピッチで並べ、視覚を遮る効果を出しました。
これが会場入り口からの見え方で、こうやって遠目から見ると、全部の服が見えますけれど、近づいていくと正面の服1着だけしか見えなくなります。このように、ある1着を前にしていると、左右の服はほとんど見えませんが、隣へ移ると、今まで見えていた服が見えなくなり、新しく正面になった服だけが見えるようになります。こうやって1着1着と出会うことができます。

 

次は六本木ミッドタウンの地下での会場構成です(DESIGNTIDE TOKYO 2010)。50組ほどのデザイナーが参加しております。
ここは天井高が7mくらい、奥行きもかなりあるのですが、柱のないガランとした大ホールになっております。その空間の広さを強調するようにこうした特殊なものを並べました。
これは薄い2枚の鉄板を上部で一対に固定して、下部を人型に広げて自立させます。それをひたすら並べて、空間に方眼紙を広げたような雰囲気にします。
鉄板は波形に曲げて加工してあり、7mもあるのでその自重でたわみ、人型になります。
このように平行に並んでおり、ここが通路になり、ジグザグに進んで行きます。ここでは壁がしつらえてあるので、床を使ったわけです。

 

*写真を使って解説。700枚350対の人型鉄板が並んでおり、硬いはずの鉄なのに多少、たわんで柔らかみを感じさせ、微妙にゆらゆら揺れている。

 

次は、オペラシティギャラリーでのファッションの展示です(感じる服 考える服 東京ファッションの現在形展)。東京で活躍している10組のファッションデザイナーの作品を展示する、というものでした。
ここは壁を使って構成しています。壁から人の目線ぐらいの高さに梁を架け巡らせ、展示室を大小さまざまな形に区切りました。
展示者は自分の好きな場所を選んで展示します。鑑賞者は、この梁によって目の高さだけ視界が遮られ、梁、梁より上、梁より下、と3つの空間に分かれます。そして区画の展示物を鑑賞するとともに、梁の向こうが借景のように見えます。
順路はなく、この梁をくぐって好きな区画へ自由に移動する仕組みになっています。そのようにくぐって鑑賞していくと、多少ストレスも感じますが、鑑賞者自身も、他の区画からは借景の一部になっているので、つまりは鑑賞者たちも展示物の一部になることになります。

 

次の画像は、国立新美術館で開催された「カリフォルニア・デザイン1930-1965 モダン・リヴィングの起源」の会場です。20世紀半ばのカリフォルニアで展開されたモダンデザインをテーマに、家具やファション、陶芸、建築写真、日用品から車までの約250点を展示するというものです。
この展示室は2000㎡もあるのですが、日展を見た時にスクリーンで個室のように区切るということを行っていたので、それも参考にしました。
天井のレールを使って可動壁を立ててみました。鑑賞者は25枚のリング状に並べられた可動壁に沿って歩きながら見て行くことになります。
稼働壁にはレールによる制約があり、うまくつながらない個所があり、そこを活かして隙間を設けています。そこからところどころ向こう側が見えるのですけれど、どうやったら、あちら側へ行けるのだろうと、回遊しているうちに自然と内側へ導かれるという仕組みです。
展示としては年代が古い順に並んでいて、外から内へ入っていくようになります。ちなみに、こちらは同じ展示会で最初に出した案です。下に鏡があるので、反転するなど、いろいろな角度から展示物が見える仕掛けにしていました。
以上です。

 

中﨑 どうもありがとうございました。その最初の案が採用されなかったのは、どうしてなのでしょうか?

 

中村 日用品が中心の展示なので、生活感とか身近な印象を出して欲しいと注文が付きました。また、貴重な品々もあるので、台に載せる際のリスクもあります。

 

中﨑 では、次いで青木さんの発表をお願いします。

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