イベントレポート詳細Details of an event

第28回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念対談イベント

2013年3月8日(金)
講演会/セミナー



 

米澤 米澤です。今日はよろしくお願いします。

 

スタジオ1階に実寸展示してある「Glass Pavilion」と題した作品の紹介をします。
この画像は、初期の、コンペ提出時のイメージ案です。森の中にガラスだけが浮遊しているような、そんな小さな小屋をイメージしました。

 

まず、話をいただいた時、ガラスについていろいろ考えました。「ガラスとは何だろう?」と。
いろいろな可能性があると思いましたが、今回はガラスのシンプルな性質、誰でも知っているような特長を使って、新しい現象を起こせないか、と考えたのです。
ガラスの代表的な特徴は「光を透過する」「反射する」「手前のものを映り込ませて、奥は透ける」といったようなことですね。またそのガラスを細かくすることによって風が抜けるということもある。そこで、ガラスを大きく使わず、微分化していくことによって新しい表現を起こす、と考えました。

 

例えば、1枚1枚に分けることによって、また角度を少しずつ変えることことによって、映り込みや透過が様々に変化する。この画像のような形で、入り口と屋根には鉄と木という重量感のあるもので構成していますが、それを支える壁は、鱗状のガラスをワイヤーで連結したものになっている。
構造としてはシャボン玉のようなものを考えました。シャボン玉は面内に表面張力が働くことによって成立しています。そんなシャボン玉のように張力を連結して構造体にしようと考えました。
この図のようにあらかじめワイヤーにテンションをかけておき、要は、ワイヤーの間をガラスが引っ張る構造です。これが、この引っぱりと圧縮に関する理論計算です。こういった計算をしつつ試作を繰り返しました。
この画像はアクリルで試作したものです。

 

森の中にガラスのパビリオンが存在していて、近づいてみると自分の姿が映り込んだり向こう側が透けて見えていたりする。その中に入ってみると普段とは違う体験ができる。
実際にどうやってつくったかといいますと、あらかじめ鉄のフレームを用意しておきます。このワイヤーに金物を通しておき、そこにガラスを付けていく。このワイヤーは金属といえども編んでいるので、荷重がかかると伸びますよね。そこで、想定される80kgの重りを付け、施工の前にテンションをかけておく。施工時に伸びるのを防ぐためプレストレッチングしておきます。
こちらに基礎の鉄板、屋根と入り口も鉄のフレームでつくり、ある種の重しにして横風などで横転しないようなものになっています。施工は、周囲に足場を組み、壁の部分を合板で覆って、それを順次ガラスに置き換えていきます。1枚の小さなガラスに対して4つの金物が取り付きますが、最初は1点だけフィックスしておき、3つはルーズにするという形から作業を進めます。
そもそもガラスをこのように「構造」として考えたことはなかったので、どういう性質があるのか、よくわかっていませんでした。そこで、いろいろと実験をしました。

 

これは試作1回目の失敗例です。失敗の原因を究明しますと、例えば金物とワイヤーの接合部でのスベリという問題がありました。そのわずかなスベリで張力が抜けてしまうのです。
計算上では80kgのテンションで成立するのですが、0.5mmくらいズレると16kgくらいの力が抜けてしまい、もう構造が成立しなくなります。
この写真は、金物とワイヤーのスベリを実験している様子です。最初に設計した金物では80kgの荷重で滑ってしまった。そこで金物の設計変更もしました。
またこの写真のようにあまりにも引っぱり過ぎると、ワイヤーのほうが切れてしまったり、そのような失敗と実験を繰り返し試作しました。
またこの写真は、もしもガラスが1枚割れた時に果たして構造が成立するか、を検証したものです。わざとガラスを1枚割っています。1枚割れるということは1本のワイヤーがだめになるということですね。ワイヤーは全部で42本ありますので、つまりは柱が42本あり、そのうちの1本がだめになるということで、残りの41本で支えられるから成立する、ということなんです。
こうした試行錯誤でたどり着いたのが、1階に展示してある実物です。

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