イベントレポート詳細Details of an event

第91回 AGC Studio Design Forum
新しい建築の楽しさ2017展 プレゼン&トークセッション③
 「ワークプレイスのアメニティ・デザイン」

2017年11月28日(火)
講演会/セミナー

トークセッション

 

中崎 ありがとうございました。これから、「ワークプレイスのアメニティ・デザイン」というテーマで、トークセッションを行いたいと思います。
 大野さんのプロジェクトはIT企業、玉上さんのは物流施設の中のアメニティスペース、長谷川さんと堀越さんのはモノづくり企業となり、周辺環境も、それぞれ、五反田、大阪南港、仙台郊外ということで異なります。周辺環境によってアメニティスペースも変わってくるのではないか、また、働き方によってアメニティスペースのデザインが変わってくるのではないかと思います。
 大野さんのプロジェクトでは、働く場とくつろぎの場がシームレスにつながっているのではないか、と。それを調整する役割としてインフィルをうまく活用している、という印象があります。また、入口に風除室のような空間があり、以前、働く場所に直接入るのではなく、一旦気持ちを切り替えるような空間を用意した、とおっしゃっていましたが、それについても伺えますでしょうか。

 

大野 そうですね。先程、外皮と呼んでいた窓側にもコミュニティスペースがたくさん並んでいますが、コアのエレベーターホール側にも、同じようなスペースがあり、そこに一度入ってから執務エリアに行くという広めのアプローチを設けています。そこでモードチェンジしてもらう場所になっています。

 

中崎 なるほど。完成して1年くらい経っていると思いますが、実際にそこでワンクッションを置いて入るのか、あるいは急いでそのまま入っているのか、そのあたりはどうですか?

 

大野 いい空間にはなっているようです。想定外の使われ方もされているようで、社員の方々がプレゼン合戦をしたり、飲み会の待ち合わせ場所になったり、朝、コーヒーを飲む場所になったり。そういう空間として機能していると聞いています。

 

中崎 アメリカの大手IT企業の採用者が、IT企業はフォロワーシップ力がある人材の方が向き、リーダーにもフォロワーにもなれて、その切り替えができる人材が多いほうがうまくいく、と言っています。働くときもそうだし、先程の飲み会の打ち合わせのときなども、そういう役割の切り替えがよくあるのではないかと思うのですが…。

 

大野 フォロワーシップは、まさにそうですね。通常の事例では、「この環境で働いてくれ」という執務エリアを用意して、そこで各社員が働くのが多いと思います。そうすると、設計者側としては、合理的な執務エリアを圧縮できるので、「アメニティ」と言われる造作を、面積を広くとって楽しくつくりたくなる。しかし、よく話を聞くと、フォロワーシップがとても大事だ、ということを伺いました。
 そこで、社員の方々が能動的に場所を使いこなし、自らチーム編成して場所をつくって働くことを重視した、あのようなプランとしました。皆さんがどれだけレイアウト変更をしても、いつまでも風景が乱れないようなデザインにしようと思ったわけです。  

 

中崎 なるほど。玉上さんのプロジェクトは物流倉庫ということです。
 私は「倉庫リノベーション研究会」をやっていまして、既存の倉庫をリノベーションして使うのですが、その時の使う側の評価としては、天井高がある空間に魅力を感じている人が多い。今回の玉上さんのデザインでは、アメニティ空間をつくるために天井を低くして、そのデザインをしている。私は、建築における床の意味と意匠を考える会もやっています。建築において床はかなり意味がある。天井も意味があるけれども、あまり議論されていない。玉上さんは今回、天井のことをとても考えたのではないか、と。天井と人間の居心地の良さの関係をどういうふうに考えたかに興味があります。

 

玉上 倉庫のような巨大な空間自体、経験することがない人が多いと思います。知らない身から倉庫空間を見ると、天井の高さは魅力的でしょうが、巨大空間に年中いる人にとっては違うのではないかと考えたのが、一番想像力を働かせた部分です。あまり考えずにやると、高い天井をどう生かそうか、と思いがちなのですが、そこにぐっと想像力を働かせました。
 その場で仕事をしている人たちが普段、どういう休憩をしているかを伺うと、居場所がないところで、足が疲れるので片足を壁につけるような格好で寄りかかっている、とのこと。つまり、安心して休める場所がない状態でした。そういうことをふまえて、どういう空間があったらいいか、と思ったのが一番のポイントです。床の造作という意味では、パッと腰かけられる場所がたくさんあるといいと思い、DC2は床をもちあげて、階段状になる部分をつくりました。
 また、全体の空間を小さくすればいい、ということではなく、メリハリだと思っています。高いところと低いところがあることで、低い空間をより心地よく感じる、という考えでやっています。

 

中崎 なるほど。長谷川さんと堀越さんのプロジェクトのSNG officeには、ラウンジはあるのでしょうか?

 

長谷川 はい。先程言った四隅の一つにあり、ギリギリまで木材が下りてきていて、片側が有機的に変化していく屋根になっています。天井が高い、吹抜け空間です。

 

中崎 吹抜けの空間は、四隅の他の三つも同じなのでしょうか。

 

長谷川 そうですね。打ち合わせスペース、エントランス、実験室になっています。

 

中崎 ラウンジは、壁・床・天井の素材を他の空間と変えるようなことをなさっているのでしょうか?

 

堀越 意図的に同じ設えにしています。この建物では、それぞれの場所で大架構との距離感や開口部の先に見えるものなどが大きく異なっています。それらの違いがおもしろいと考えて、素材は基本的には同じにしています。ただ、一体空間であるオフィスの中を移動することが、楽しさや快適性につながるようプランや架構を決めてきたことから、床の素材はレベルごとにかえていて、固さや足音の違いをうみだすことは意識しています。

 

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