イベントレポート詳細Details of an event

第91回 AGC Studio Design Forum
新しい建築の楽しさ2017展 プレゼン&トークセッション③
 「ワークプレイスのアメニティ・デザイン」

2017年11月28日(火)
講演会/セミナー

中崎 どうもありがとうございました。続いて、長谷川さんと堀越さんの「SNG office」です。宜しくお願いします。

 

「SNG office」(事務所/ 宮城県富谷市)

長谷川 欣則氏+堀越 ふみ江氏(上野アトリエ/UENOA)

 

長谷川 上野アトリエの長谷川と申します。私たちは、「SNG office」というプロジェクトを発表いたします。概要・敷地・建築・植栽の大きく4つに分けてお話します。
 まず、概要についてです。SNGは「シネジック株式会社」という宮城県にある会社でして、このような木造建築に使うビスを扱っています。そこで、まず木造のオフィスとすることが第一条件でした。構造設計は東京大学の稲山正弘先生で、18mの大スパンを一般流通材で構成する計画としています。また、一部にCLTを採用しています。

 
 
 次に敷地についてです。仙台市の北にある富谷市という場所で計画しています。富谷市は近年東北で一番人口増加率が高い自治体で、昨年人口が5万人を超して単独市制を施行しています。これは1960年くらいの地図で、今回の建物の敷地はこの写真の真ん中あたりにあります。その後を見ていくと、山が少しずつ切り開かれて、宅地が増えていっている。この写真を見てわかるように独特の敷地で、道路が円形状に走り、その円形状の内側に工場・企業を誘致する計画になっていて、外側には宅地が並んでいます。1970年代くらいから、仙台市のベッドタウンとして発展していった土地柄です。
 元々はこのように起伏の激しい場所で、いろいろな樹木があったという「土地の記憶」があります。
 そういう歴史に対して、どういう建築をつくっていくかが、僕たちがなすべき仕事なのではないかと思い、第一段階でそれを考えました。例えば、車で敷地周辺を走ると、先程のように円形状になり、外側には家が並んでいて、内側にはいろいろな企業が参入し、箱型の建物がたくさん建っている。移動手段は車が中心となるため、駐車場も多いです。

 

 この模型は、円形の道路に対して、敷地にどのように建物を配置していくかという概念を表しています。先程述べたように、円形道路の内側には企業が多いので、敷地の手前に駐車場がたくさんあり、敷地奥には箱型の建物がたくさん並んでいます。それに対して、自分たちなりの建ち方を考慮し、円形の場所に対して裏表がないような配置を考えました。つまり、建物を前面の道路側に「街に参加できる」ように置き、駐車場を周りに配置する案です。
 手前側に建築が出てくるので、建物が高いと圧迫感があります。そこで、四隅の屋根が低くなっているような形態はどうだろう、という案が生まれ、それがスタートになりました。それに対して素直にプランを入れていくと、四隅が吹き抜けているような空間になります。残った十字形の空間に、いろいろな用途の部屋が入る計画を考えていったかたちです。
 円形道路のため、周りに視線がぶつかる場所がなく、面白い視角の抜けができる、というのも発見でした。こちらは模型を上から見たものですが、2階建ての段々になった十字形プランをとり、対称性を持った屋根形状とし、四隅が低いので、一画にラウンジなどを配置しています。
 先程の「土地の記憶」や業務内容などの条件から、このようなプランとしました。平面はこの図のようになり、純粋な対称性を保ちつつ、各部屋の機能・用途を考え長いビジョンを持って計画しています。

 
 
 SNGオフィスではビスを開発するにあたり実験をする部屋があります。実験・研究施設があるのも特徴的なので、そういう場がデスクワークをする事務所と一体空間に盛り込めないか、という提案を行いました。
 社員の方それぞれに職能があり、幅広い技術を持った人たちが「ひとつ屋根の下」で仕事ができる空間になるように計画しています。先程、十字形プランと言いましたが、業務間の移動に合わせて、高低の微妙な調整をしています。 

 

 加えて、木造のオフィスという点もポイントです。会社で製造しているビスが建物のどういうところに使われているかを、伝えられるようにした、という点があります。
 木の架構を、かなり低い場所からつくることで目に触れ直接さわれるようにしました。この低い空間から部材を積み上げていき、それがだんだん高くなり、遠くの屋根になっているような連続的な変化を持たせました。
 今回の建物は、木造トラスを採用しています。単純にトラスを採用するだけではなく、線材でできている半透明な存在の中に、空間が一つ浮き上がる仕組みとして、下側のトラスの下限は三角形が有機的に変化していくかたちになっています。室内に家の形のような場所が定義されるような趣向です。トラスは単純に立ち上がっているだけではなく、中心から少しずつ角度を変え、トラスを倒すことによって、より包まれているような特徴を強調しています。
 腰高くらいのところから細い木材を立ち上げていき、それが、いつのまにか遠くの部材になっているような空間です。2階に上がって執務空間を眺めると、有機的な木質材が連続し、なおかつ、包まれた家形のような場所が生まれています。

 

 次に、植栽計画についてお話します。外構計画にはSfGの大野暁彦さんに参加頂いています。
 最初にお話したように、この地域は元々起伏が多い山間部で、いろいろな種類の植物・樹木がありました。そこで、シネジックの社員の方々と一緒に、在来種のタネを拾い新社屋の敷地に植えるという活動も計画しました。それを通じて、社員の方々が新たな社屋を身近に感じ、建築を育てていく感じになるといいな、という思いがありました。先日実施したタネ拾いには、たくさんの社員さんご家族の方にご参加頂き、子供たちはとても楽しsんでいました。今はみんな芽が出るのを楽しみにしています。
 こちらは、大野さんのスケッチです。今は平らになった敷地ですが、元々の起伏がある土地では、高さなりの樹木の種類があったことを教えていただきました。それをベースにして敷地内にわずかに起伏をつけ、本来高い場所にあった樹木のタネは高い場所に植える、という植栽計画をこれからやっていく予定です。
 
 以上です。ありがとうございます。

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