イベントレポート詳細Details of an event

第91回 AGC Studio Design Forum
新しい建築の楽しさ2017展 プレゼン&トークセッション③
 「ワークプレイスのアメニティ・デザイン」

2017年11月28日(火)
講演会/セミナー

若手建築家の最新プロジェクトを展示する「新しい建築の楽しさ2017」展は、本年で6回目を迎える。AGCスタジオでは、その展示期間中に、出展建築家によるプレゼンテーションを開催。企画者・中崎隆司氏をモデレーターとし、第三弾となる「ワークプレイスのアメニティ・デザイン」をテーマに、3組の建築家が熱いトークを展開した。

 

モデレーター
中崎隆司氏 
建築ジャーナリスト、生活環境プロデューサー

 

中崎 こんばんは。これから、新しい建築の楽しさ2017デザインフォーラムを始めたいと思います。今日の講師をご紹介します。奥の方から、大野さん、玉上さん、長谷川さん、堀越さんです。皆さんには、Re-SOHKO GALLERYで実施している「新しい建築の楽しさ」模型展に出展いただいています。まず、そのプロジェクトについて語っていただき、その後に、「ワークプレイスのアメニティ・デザイン」に関してのトークセッションを行います。
 では、大野さんからお願いしたいと思います。「GDO本社オフィス及び撮影スタジオ」のプロジェクトについてです。宜しくお願いいたします。

 

「GDO本社オフィス及び撮影スタジオ」(事務所/ 東京都品川区)

大野 力氏(sinato)

 

大野 大野と申します。宜しくお願いします。今、ご紹介いただいたように、GDOという会社の本社オフィスと撮影スタジオの計画を担当しまして、それを展示しています。今日は、施主にプレゼンした資料を用いて、お話して参ります。
 GDOはゴルフ関連のポータルサイトを運営している「ゴルフダイジェスト・オンライン」という会社です。ポータルサイト上へのゴルフ関連記事の掲載、国内外のゴルフ場のサイト予約、クラブなどゴルフ関連グッズのネット販売という3つの柱を運営しており、五反田にあるオフィスビルの1階と7・8・9階に本社があります。
 これが断面図で、1階の黄色部分が撮影スタジオです。ビルの足元にあたり、元々は店舗区画として使う場所でして、GDO本社が入る前は、店舗が入っていました。7・8・9階にオフィスがあり、図の青部分の7・9階の2フロアに執務エリア、緑部分の8階に来客フロアと社内用ラウンジ・コミュニティスペースを計画しました。
 左が平面図で、ワンフロア340坪くらいで、トータル1000坪ほどです。この白い部分がビルのコアで、エレベーターホールなどがあり、専有部分はL型にスペースが広がっていて、3方にカーテンウォールの開口部があるという建物です。 

  

 施主から最初に与えられたキーワードは2つありました。一つは、「ワークファースト」という言葉を大切にしている企業なので、迅速で効率的な仕事を体現するオフィスにしたい、ということ。もう一つは、効率性だけではなく、冒険やワクワクする状態になれる場もつくりたい、という話をいただきました。
 そこで、効率性を求める場所を「フェアウェイ」、冒険・コミュニケーション・ワクワク・ドキドキの場所を「ラフスペース」と呼びましょう、と提案しました。ゴルフコースはフェアウェイとラフからできていて、「両方があるから楽しい」ということで、2つのスペースを混ぜて計画したかたちです。
 来客フロアには、来客用会議室・「クラブハウス」と呼ばれる社員用ラウンジ・管理部門の執務スペースを置きたい、という要望がありました。左の図が施主からの当初案で、青部分が来客スペース、黄色がラウンジの「クラブハウス」、ピンク色が執務スペースになっています。
 キーワードなどを受け、こちらから提案したのが右の図でして、来客用エリアとラウンジの間に中間領域を設ける案です。セキュリティ的に分けなくてはならない空間もありますが、社内外を分断するのではなく、この図の緑部分のような中間領域をつくり、お互いを混ぜるようなことをしましょう、と。これが最初に提案したプランで、来客はエレベーターホールからまっすぐ専有部に入れ、社員は左側からも入れます。真ん中にセキュリティラインがあり、来客スペースから社員用ラウンジへはセキュリティを通らないと行けない、というようになっています。

 

 ポイントになるのは、真ん中の中間領域のつくり方です。図のように、y軸方向に薄い壁、x軸方向に引き戸が並んでいます。これは全部可動間仕切りで、片方を開くと、社外スペースに向かって空間が広がり、逆側の間仕切りを開くと、社内スペースに向かって空間が広がります。場面に応じて、どちら側からも使えるかたちです。
 一番デフォルトの状態が左の図です。赤い線がx軸方向の巨大な引き戸を示し、真ん中の緑のスペースは4部屋に分かれています。緑スペースの両サイドの可動間仕切りを閉じたままにすると、基本的に、真ん中の個室群、社内の4つのオープン・ミーティングブース、社外のミーティングブースに分かれるかたちです。y軸のガラス間仕切りを全部開け、さらにx軸の引き戸を全部開けると、一体化した空間として全体を使えます。
 また、社外側への間仕切りだけを開けると、そちら側の空間が広がり、社内側だけを開くと、そちらの空間が広がる。このように、その時々によって空間を変えられるようになっています。

 

 もう一つのポイントは、社内ラウンジです。大きなスペースを求められ、カフェのような使い方に加えて、朝礼やレクチャーなどにも対応する空間に、という要望がありました。そこで、それらに対応できるようにバリエーションを変えられる案を提案したかたちです。
 まず、日常的にスムーズに使えるように、ソファ・ダイニングチェア・スツールなどのシッティングポジションをたくさんつくりました。しかし、それだと、レクチャー時などには使いにくいので、窓際にカウンターテーブルを配し、大勢が一方向を見てレクチャーを受ける際などは、ソファなどの椅子とカウンターテーブルの入れ替えだけでOKとし、利便性を高めています。このように、家具を含めての提案も行っています。

 
 
 次は執務スペースですが、ここは明快なつくり方としました。
 施主の話を聞くと、元々あったオフィスはフリーアドレスで始まったのですが、運用がうまくいかず、最終的に固定席になったということでした。働き方を詳しく伺うと、プロジェクトに応じてチーム編成が変わることが多い。その度に席を変えていたが、自分たちでのレイアウト変更が難しく、立ち行かなくなったので固定席となった、という話でした。
 それを受けて、チーム編成に応じて、机を自由に動かせるようにしましょう、と提案しました。具体的には、この絵の青いラインのように、3200mmのグリッドで駐車場のような白線をひき、そこに4人がけのデスクを2400×1200mmの天板サイズで置いています。ルールとして、駐車場のような白線の中にデスクを横・縦のどちらの向きで置いても、またデスクを連結させても、デスク間の通路が担保される寸法になります。白線の中でどうデスクを動かしても、風景は絶対にくずれないので、その時々のチームの状態に応じて最適なレイアウトを保てます。

 

 またそのスペースを取り囲む外皮として、H1400㎜の腰壁を環状配置しました。外皮の外側は、ビルのカーテンウォールに面したスペースを間仕切るような格好です。
 この外側のペリメーターゾーンには、ファミレス席を設けたり、スタンドで話せたり、深く腰を下ろせたりなど、いろいろなコミュニケーションの設えを用意しています。先程の合理的なモジュールの周りを、それらが囲っている状態です。デスクで作業しているときに、違うかたちのコミュニケーションをとりたくなったら、外側に出ていけば、いつでもオープンなミーティングができます。社内の会議は、元々個室で行うことが多かったのですが、「会議から会話へ」というコンセプトで、この空間を活用して、パッと始めてパッと終わるミーティングを推奨しました。
 こちらは現場の写真です。駐車場のようにシンプルな白線がひいてあり、この枡の中でデスクを動かしてもらうという計画です。外皮の外側には、先程述べた、いろいろなシッティングポジションがあります。そこでコミュニケーションをとれるように、時間軸で区切りながら、様々な設えを用意しました。例えば、ここは立ったまま10分くらいで会話して終わる場所、こちらはリラックスしながらプレゼン合戦をする場所、というようにつくっています。
 この図は、グリッドのモジュールの中で、いろいろな置き方ができることを説明するための資料です。開設当初は、全部の枡を使いきるほど人数がいなかったので、赤い部分で“空き地”を示しています。当時は、周辺のグループが自由に使える場所にしましょう、という設定としました。空き地をどう使うかは、チームごとのワークショップで決めてもらい、デスクを置くチーム、パットゴルフを置くチームなど、いろいろでした。

 
             
 これは補足資料として、執務フロアの外皮の使い方をプレゼンテーションしたもので、外側にコミュニケーション設備が必要であることを提案しています。こちらはパースで、来客エリア・「クラブハウス」と呼ばれている社内ラウンジがあります。来客エリアからラウンジ側を見た絵がこちらで、先程の中間領域の一部に、ネットを張ってゴルフの試打スペースをつくり、実際にボールを打てる場所を用意しました。
 周囲はガラス張りとなり、社外エリアから社内側を望むと、ゴルフのスイングの様子が見え、その奥に社内ラウンジを眺められます。逆に、社内側から社外側を望むと、同じようにゴルフスペースが見えるかたちです。
 施主からの当初案のように、社外と社内のスペースを完全に壁で仕切ると、空間の広がりが感じられず、面積が二分割された分だけ狭く感じてしまう。そこで、視線が社内から社外へ、社外から社内へと伸びる状態を設け、さらに、間にゴルフスペースを挟むことで、様子は伺えるけれども、はっきりとはわからない状況をつくり、空間の広がりを感じるようにしています。
 これは執務スペースのパースです。外側にR状に見えている壁が外皮にあたり、この壁の向こう側の窓際に、いろいろなコミュニケーションスペースがある状態です。

 

 最後に、1階の撮影スタジオについてお話します。
 これはエントランス部分の竣工写真です。写真のように、ビルの共有ホールからの入口と、外部から直接入れる入口があります。1階は撮影スタジオやイベントに使う多目的な場所なので、床を広く開けておきたい、という要望がありました。既存の天井がアルミパネルでしっかりつくられていて、それがビルの共有部分と連続しているので、なるべく壁や天井を触らずにつくることにしました。天井高が8m近くある空間で、その中に独立した架構を新たに自立させるという、“建築の中に建築をもう一つつくる”という方法をとっています。

 

 こちらが全体像の模型写真です。基本柱をΦ48くらいのスチールで建て、それらをつなぐ梁を2×12の木材とし、さらに、キャットウォークが2層回っていて、それも構造的に重要な役割を果たしています。
 これがΦ48の柱でして、工事現場で使う足場の単管サイズです。このサイズを使うことで、後々、アタッチメントの金具を使って追加設備をつけられるようにしています。梁については、下のレベル側は長手方向に木梁をとばし、上のレベル側は短手方向に梁をとばし、その周りを水平ブレースで組んだキャットウォークがある、という構成です。

 

 写真のこの緑部分は、撮影用の背景幕になっていて、使う際に、このように幕が落ちてきます。GDOではゴルフ関連のグッズの撮影も日常的に多いので、こういう大きな背景幕がついている1箇所と、小さめの背景幕がついている2箇所を設け、同時併行的に撮影できるようにしています。
 イベントの際は、2層のキャットウォークからいろいろな演出ができるようになっており、照明の演出を行ったり、桜吹雪的なものを上から撒いたりしています。こちらがキャットウォーク周りの写真です。この「塔」のような部分は、モデルさんの着替えスペースが必要、ということでつくりました。1.5×1.5mくらいの面積で、高さは7mほどです。
 以上、プロジェクトについてご説明しました。「ワークプレイスのアメニティ・デザイン」というテーマについてのお話は、後のトークセッションでさせていただきます。ありがとうございました。

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