イベントレポート詳細Details of an event

第27回 AGC studioデザインフォーラム
陸前高田発 ”地域の力” 明日へ ~暮らしの再建・地域の再生~

2013年2月23日(土)
講演会/セミナー

第二部 ディスカッション

 

 

城本 まずは住まいの再建をしなければならない。同時に自分たちの手で仕事を創り、新しく生きる力を生み出す。そして未来を担う子どもたちへの支援が必要だ。「」と「」、そして「子ども(未来)」という3つの課題について報告をいただきました。
われわれメディアもずっと関わってきて感じるのは、実は、なかなか復興が進まないというジレンマなんですね。
もちろん、国も自治体も、企業や団体などもそれぞれに困難を抱えながら懸命に取り組んでいます。そうやって取り組んでいるが、どうして復興が遅れているのか、どうすれば今の困難を乗り越えられるのか、ということを議論したいと思います。

 

ここでひとつお願いなのですが、どうか本音ベースで話してもらいたのです。というのも、みなさんはいろいろなつながりの中でご活躍なさっているので、各方面へ気を配らなければならない側面があると思います。
確かに予定調和型のシンポジウムやフォーラムだとよく見かけることですが、それぞれの「立場」から話しをぶつけ合っても議論にならないんですね。ですから、ぜひ「立場」を外して、本音のところで話をしたいのです。
そこで、最初に武蔵さんへお聞きしたいのですが、集団移転での用地取得や手続きがなかなか進まないという現実がありましたね。そういう時に、いちばんの壁となっているのは何でしょうか?

 

武蔵 まず、被災住民は本当に無知です。そんな中で専門家の方々などからかなりの支援・アドバイスを受けました。
本来は、国の制度として専門家を派遣してくれる事業があるのですけど、最初はそんなことも知らなかったし、アドバイザーが欲しいと要望書を出しても簡単にはいかない…。
今、北総研の鈴木さんを始めいろいろな協力を得ているのですが、そこには2市1町(大船渡市、陸前高田市、住田町)が事業体で実施している「気仙広域環境未来都市構想」などの国の予算があるから、頻繁に来ていただける。
私たちの生活が軌道に乗り、住まいがきっちり建つにはまだまだ長いスパンがかかり、長い時間の間にはおちこぼれもたくさんでてくる可能性があるので、専門家の方々が数年間のスパンで来ていただけるような、そういう制度をしっかりつくってほしいと考えています。

 

城本 予算や、公が発信する情報が入ってこないという問題があるのですね?

 

武蔵 そうですね…、入ってもなかなか理解しにくい…。とくに高齢者は、生の声で説明してくれないと、きちんと理解できない。私でも分からないのです。だから専門家の視点やお手伝いが必要と思います。

 

城本 一方で、伊藤さんの子ども支援に関するお話では、学校を通すと情報がうまく整理・流通するし、マッチングもうまくということでした。行政や地元との連携を上手にする秘訣は何でしょうか?

 

伊藤 私たちが比較的うまくできた理由は、僕自身が地元の住民だったということです。知り合いが多かったので、そのつてでいろんな話や情報を聞いたという経緯があります。地域の人も「してあげる」という姿勢だと信用しません。
ボランティアにもさまざまな方がいらっしゃって、それを不審がる住民が少なくないのです。だから、実際に活動をして、それを見てもらうと信用してくれるし、周りも一緒に動いてくれるようになる。
先生方も「この団体は信頼できる」となって、その情報が流通する。実際のところ混乱していたので、当初、僕らの活動について、教育委員会や児童福祉課への連絡は「事後処理」していたのです。「ここで支援してきました」「あそこで子どもを預かりました」という報告しかしなかった。
市も当初は手が回らないので、それをわかっていることもあって、こちらからも協力してくれとは言わない。けれど、そういう実績を積んでいくと、結局、行政の人たちも動かざるを得ない状況になる。そういう状況をつくって、巻き込むのが大事と思います。

 

城本 一方、高橋さんのような起業家にとってみれば「行政なんて」というタイプに思えるのですが(笑)。もともと人や国、行政などに頼らず、自分でやるんだ! という考えですよね。

 

高橋 悪口を言うつもりはないんですが、私のような民間企業を立ち上げてきた人間からみると、行政の人たちは何をするにも時間がかかる(平時がそうだから、非常時にはもっと対応できない)。(笑)状況はどんどん変わっていくんです。
行政の人はダメとかアテにならないと言うつもりは全くないのですが、自分と関わりのある故郷が危機的な状況であれば、自分が自ら動くが一番。
で、私のところにも住民の方々が高台移転関係の相談に来るのです。私は製麺業なんですけれどね。(笑)
さっき出たように「この文書の意味が分からないんだ」と、暗い顔をして聞きに来られる。そんな時、自分の家の風力発電やスマートフォンでパッと灯りが点くところなんかを見せると、急に明るい顔になられて「俺んところもできんかなあ」と生活に対する新たな興味が湧いてくる。
今の高台移転は最低限の暮らしを確保できるかどうかで必死になられて余裕がないんですね。夢や未来を思い描く段階まで至っていないという印象があります。でも人間は、夢がないと生きられませんよね。

 

 

城本 私たちマスコミもきれいごとしか言いませんから、よくお叱りを受けるんです。
例えば被災して復興住宅をつくるのだから「それは最低限でいいだろう」と言う人がいる。高橋さんのようにスマホや風力発電を使って、家に帰ったらもうエアコンが始動していて、風呂も沸いているなんて、想定外ですよ。

また武蔵さんたちが取り組んでいるのは、いい意味での未来に向けた「最小」住宅でしたが、他所からは「最低」住宅でいいだろうと言ってしまう風潮がある。でも人間は、住まいや仕事、子どもの教育など、最低限でもいいから「未来」が見えないと生きていけませんよね。(世界と比較しても自殺者の多い)日本人はそれを十分に認識しているのか、という問題があるでしょう。
被災していない普通の人なら、やはり、仕事を終えたら家へ帰って酒でもちょっと飲んで、それでまた英気を養うのが普通ですし、当然、子どもの教育にも気を配ってほしいのです。そういうような感覚は、被災地にも、被災地を見守る目にも欲しいですよね。
また、これもあまりマスコミが報道しないことなんですが、被災者の中でも家を失くした人、家族を亡くした人、と被災状況はそれぞれ異なっていて、同じ地域の中でも被災感情に差やズレが生じていて、それが復興の妨げになってきている、という話はありませんか?

 

伊藤 よく聞くのは、家を再建して仮設住宅から出て行くときに「夜逃げのように出て行った」「夜逃げのように出て行かざるを得ない」という話です。新しい一歩を踏み出した人に対して、あまりいい顔をしないという人もいて、そうなると本当の笑顔になれないから、それは子どもにも悪影響が出ます。
また最近になって、仮設の壁の向こうの部屋から、子どもたちの遊ぶ声が聞こえてきて、「うるさい!」と壁を蹴ってしまう人もいると聞きます。被災直後にはなかったことなので、人によってはストレスのやり場がなく、がまんのきかない状態なのかと思います。

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