イベントレポート詳細Details of an event

第27回 AGC studioデザインフォーラム
陸前高田発 ”地域の力” 明日へ ~暮らしの再建・地域の再生~

2013年2月23日(土)
講演会/セミナー

城本 では次に伊藤さん、お願いします。

 


伊藤 私は陸前高田市の米崎町に住んでおります。NPO法人P@CTという団体の代表と復興サポートステーションというボランティアセンターの所長をしている伊藤です。
今日のテーマに”明日へ“とありますが、その明日を担う子どもたちへの支援の状況と被災地の子どもたちのニーズや課題を報告いたします。

 

さて、大震災当日、私も陸前高田市におり、私自身も被災しましたが、直後の3月27日に災害ボランティアセンターが設置され、そこへボランティアスタッフとして加わりました。
そして昨年の12月23日までボランティアスタッフのマッチングやオリエンテーション等をしてきました。ボランティアセンターにいますと、もちろん地元住民とつながりはあるのですが、外部の企業や大学、支援団体等いろいろなつながりができてきます。
そんなある日、友人が「自分の子どものためにイベントをやりたい」と言い出したので、「つないでフェスティバル」という子ども向けのイベントを一昨年、昨年の2回開催しました。

 

最初の回は出店を開く程度しか地元の方々に”体力”がなかったので、出し物は大学やメディア関係の方々にお願いをして開催しました。
その際、保護者の方々からは「子どもの受験が近いので、彼らの勉強をみてもらえないだろうか」という相談が出ました。確かに塾などは流されていましたし、仮設住宅という狭い環境もあり、子どもたちが気兼ねなく勉強をする場所も、教える人もいない、という状況でした。
そこで最初は被害が最も大きかった高田町で中学生の自習室のようなものを始めたところ、気仙町や広田町、横田町などからも同じ要望が出てきましたので、それに応えていきました。

 

後になってわかったことですが、市の教育委員会がそれまで何をしていたかというと、ほとんど何もできていなかった。なぜなら、教育委員会には2名の方しか生き残っていなかったのです。
活動をまったくできないような状況なので、残った中学校や小学校などで中学生の自習室を設け、そこへ全地域の子どもたちを集めて、夕方の受験勉強とか子どもの居場所づくり「みちくさルーム」を始めました。

 

一方、幼児から小学生まではどうするのか、と聞いたところ、教育委員会も「まだ手が回らない」ということでしたので、僕らの団体で子どもの支援活動をしてもいいかおうかがいをたてて取り組みました。現在、気仙町、広田町、矢作町の3地区で取り組んでいます。
そこには計8大学からのボランティアが延べ350人参加し(今年1月末時点)、利用した子どもの人数は延べ695人(同1月末時点)となっています。隔週の開催ですが、毎回20人くらいの子どもたちが来ます。
気をつけているのは、ボランティアですから毎回同じ人が来られるわけはないので、1つの大学や団体に、常に同じ地区を定期的に支援してもらう、ということです。各団体のユニフォームがありますから、子どもたちにはそれで覚えてもらうようにしました。
その後、企業の方々にもご協力をいただき、遠足に行ったり、がれきを用いた工作などにも取り組んでいます。

 

そうやって子どもたちの支援をしていたら、「学校の先生たちが疲れ切っている」という声が、保護者の方々から入りました。どういうことかというと、学校への支援過多が起きていたんですよね。
例えば、クリスマスやこどもの日などさまざまなイベントがあります。その際、サンタクロースが来て子どもたちにプレゼントを配り、それを見届けて職員室へ帰ると、また別のサンタがやって来ている。そういったことに対処しているうちに疲れ切ってしまうのです。
1学期、2学期はまだいいとして、3学期になるとホッとして燃え尽き症候群みたいになっている。その負担を軽くしたいと考えました。
それから、子ども用の支援はたくさん入ってきたのですが、先生方が使うものについてはほとんど入ってこないのです。学校の予算は決まっているので必要な備品を買えなくなります。比較的自由になるのはコピー用紙の費用だったので、それを別の費用へ転用し、コピー用紙については現物で寄付をいただいたりしてしのいできました。
そのような先生方への支援をはじめ、各学校に「他に必要なものはないか?」と声をかけています。

 

2012年の6月からは部活動の支援も行ってきました。
例えば、スポーツの大会に出るためのユニフォームがないといった問題がありました。最初の支援品はお下がりなので、チーム単位で揃わないんですよ。ユニフォームはかなりコストのかかるものですが、写真にあるように、そういうところにも支援をいただいております。

 

もうひとつ、2011年の11月から「子ども支援ネットワーク会議」というものを始めました。というのも、先にも少し触れましたが、陸前高田市には子どもの支援だけでも約20の団体が入っていて、8つの町があるにも関わらず、特定の町に集中したりして、さまざまな団体と支援が偏在し、個別に支援を行うような状態になっていました。

 

そこで、関係者全員が情報共有をし、互いに協力し、均等な支援と団体同士の垣根を取り払ったりするための会議を毎月2回開いています。「子ども支援ネットワークのニーズ解決の仕組み」は次の図のようになっています。
確かに、報道されるように「支援慣れ」している保護者さんや「もらうのが当たり前」という人もいますけれど、それに対して「何が適切であるか」を外から来られた団体や私たちも判断しかねるところがあります。
そこで、学校に間に入ってもらうのです。図にあるようにPTAからのニーズは学校に上げてもらい、まずは学校の判断で教育委員会や児童福祉課に振り分けます。それらへ振り分けられないニーズの中で、「絶対に必要」と思われるニーズを僕たちP@CTに振ってもらう。そこから各団体へ僕らが振り分ける、という仕組みを構築しました。こういうネットワークです。
また、子どもたちには遊び場がまったくなくなってしまっていたので、遊べる場所の情報や子どもをいさせられそうな場所の情報、イベント情報などをまとめてマップにもして、市内の全小中学校に配布する予定です。現在までの支援状況はこんなところで、課題についても触れておきます。

 

現在の課題は、
①遊び場がない
②保護者や先生など支援事業者の心のケア
③父子家庭への支援

などです。
ご存知のように日本は母子家庭に対して手厚い支援をつけることがありますけれど、父子家庭は置き去りにされていますので、そこへの支援を強化したい。お母さんが亡くなったという家庭もありますのでね。
そして「つないでフェスティバル」というイベントに関しては風化させないで継続することが大事と考えます。一方「みちくさルーム」に関してはニーズの増加に反してボランティアや支援団体が減ってきているので、対策が必要です。
もともと陸前高田市は学童保育や日曜保育などがない地域でしたので、マンパワーや財源不足が出て来ています。震災から2年経って町からがれきはなくなりつつありますが、子どもたちへの影響がなくなったかどうかはまだ分かりません。
阪神淡路大震災で被災した子どもたちの中には、成人後にPTSDのような心の傷が突発的に出てくる例も報告されています。これからもまだまだ時間がかかると思われます。

 

今後とも外からの支援をいただきながら地元のコミュニティがどのように子どもたちと接し、より良い環境を整えていくよう自分たちで取り組まねばなりません。引き続きみなさまの温かいご支援、ご協力をお願いします。

 

城本 有難うございました。

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