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第26回 AGC studioデザインフォーラム
これからのキッチンを考える

2013年1月29日(火)
講演会/セミナー

キッチンでの行為と流れ

 

このように台所の使い方は人それぞれなんですが、(行為として)加工する時だけでも大きく分けて5つの要素があります。①洗浄、②切断、③加熱、④調味、⑤演出と、この5つが揃わないと料理はできません。
これらを細かく見ると、まず①の洗浄として今は食洗機というものがあり、ボールなどの道具、洗剤や水栓、シンク、お湯を使うならボイラーというものもある。これらが全部合わさって台所の「洗浄」という機能になります。

 

次の「切断」は、まずナイフ・包丁、まな板、切った素材を一時置くバットやザル、ボール、他にはおろし器や肉たたき、ミキサーなどがありますよね。包丁にもいくつも種類があるし、まな板だって、人によって使う枚数が違う。私のお客さんだと、1人で5枚のまな板を使い分ける方がいます。肉、魚、野菜、パン、チーズなど、どの程度の道具を使うのかを押さえないとキッチンのプランはできません。

 

加熱」についても道具の確認が必要です。コンロはガスかIHか、オーブンやトースター、電子レンジなどがありますし、「魚は絶対に七輪だ」という人、「鮎の串焼きは頭が下だから」と、その串を刺すところまでプランしてほしいという人がいます。もちろん、鍋、釜、やかん、フライパン、トングやヘラ、菜箸など使う道具をしっかりと把握する。

 

そして「調味」ですね。塩、砂糖、味噌、醤油や酒などの液体、それらを測るもの、乾物類、スパイス類。私のお客さんでスパイスを200種類揃えている方がいます。専用の抽き出し収納を作りました。

 

そして「演出」「盛りつけ」ですね。コップや皿、トレー、箸やナイフ、フォーク、スプーンなど。
人によっては「安っぽいものは嫌」という方もいますし、茶碗も朝用と夜用を分けている人、和洋中の料理によっても変化します。要は、それら5つ、洗浄して、切って、加熱して、調味して、盛りつける。それから食事をして、また洗浄、片付けをして、最後はゴミの処理をどうするか、その流れとそれにまつわる道具類を整理するのが大切ということです。いずれもみなさんが知っていることなんですけれど…。

 

収納については、柔軟性を持って考えてみる必要があります。これはつまり、システムキッチンだけで完結しないということなのですが、その理由については後ほど事例でご説明します。
なお、先に言いましたように、ゴミ処理は、その人の性格や習慣、自治体によって千差万別です。
私はお客さんに対して、必要ならダストボックスをつくるのですが、私自身はそれを使っていません。では、どうしているのかというと、個人的なことですが、スーパーでレジを通った後に備えてある無料の小袋がありますよね。あれを使っています。
水気のあるものは絞ればいいので、あの袋1つに、だいたい1日分の生ゴミは収まりますので、毎日小袋に入れてから大きなゴミ袋へ収める。
生ゴミはだいたいどこの自治体でも1週間に最低2回は回収してくれますので、そうやって捨てていると生ゴミ特有の臭いも発生しません。これは、私がそうやっているだけで、各人の流儀や習慣がありますから、それを考えてゴミの処理をプランする必要があります。

 

次に、キッチンの給排気は他の部屋に比べて格段に多いのは常識ですが。そんなことは知っているはずですが、多くの設計者はそうした数字の魔力に取り憑かれてしまい、数字さえ合っていればそれでいいと思い込みがちです。
しかし、最近は24時間換気の家も増えていますし、そういう家だと昔に比べて給気量が増えますから、そういったことも十分に気を配る必要があります。

 

見直したい教科書的な設計概念

 

ここからが新しい概念になります。この図は従来の「ワークトライアングル」です。
本日、ご参加の方々や実地の設計者の方はご存知のものです。シンク、冷蔵庫、加熱調理機器を三角形で結び、その離れ具合の寸法を参考値として出したものです。
日本の場合、この3辺の和を3,600~6,000mmの間に収めるということになっています。海外だと最大値が8mです。教科書では、こうなっていますけれど、この数値は1960~70年代にかけて提唱されたもので、有名な建築家の方々は現在でも、こういう説明をなさいます。
私もこのトライアングルを否定しません。しかし、現実として、この長さに関しては、あまりこだわる必要がないと考えております。
理由ははっきりしていて、今現在、日本のどこの台所を見ても、そんなに大きなもの、6mも使わなければならない台所はない。どんどんコンパクトになってきており、アイランド型にしたところで、やはりそれほど大きくありません。
そうすると、その条件を満たそうということは物理的に成り立ちません。定理の前提が成立しないのです。

 

そこで私が考える概念は、次の図にある新しいワークトライアングルです。キッチンでの作業の流れをよく考えてみると、作業台というものが必ず動線の中に入ります
例えば、シンクから直接冷蔵庫に行く食材はあまりありません。いったん作業台で包むとか、容器に入れるなどの行為が挟まります。
同様にシンクから直接加熱機器へ行くものもほとんどない。逆の方向や違う組み合わせで考えても、加熱機器からシンクへ直接行くもの(ゆでたそばやおひたしなどは例外)、冷蔵庫からダイレクトに加熱器へ行くものは、ほとんどありません。必ず作業台でのひと手間を経て旧トライアングルの間を動くわけです。
だから、そういった構図で考えると、やはり先のトライアングル寸法の設定はあまり意味を持たなくなります。
カウンターや収納の高さについても、教科書に縛られるような考え方はしていません。

 

これはよく見るキッチン各部の高さを示した、JIS規格にもある断面寸法ですけれど、私はこういうように杓子定規に考えていません。では、何を基準に高さを決めているのか? といえば、それは背筋力です。
背が低くても背筋力の強い人だと高くしますし、逆に背が高くても背筋力の弱い人には低めの高さを提案します。キッチン各部の高さを身長や数字で規定するのはちょっと違うと思っています
収納に関してもそうで、昔から、こういう高いところや足元の部分は使えないスペースとされてきて、数値で規定されてきましたけれど、そういう場所はかえって有効に使えます。
天井近くも足下も、デザインをいかしたり別の機能を持たせたりすることができると考えます。

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