イベントレポート詳細Details of an event

第89回 AGC Studio Design Forum
新しい建築の楽しさ2017展 プレゼン&トークセッション①
「にぎわいのデザイン」

2017年11月14日(火)
講演会/セミナー

若手建築家が取り組むプロジェクトを集めた「新しい建築の楽しさ2017」展が開催された。AGCスタジオでは、その展覧会に伴い、企画者である中崎隆司氏をモデレーターに、出展者たちによるプレゼン&トークセッションをテーマ別に実施。第一弾は「にぎわいのデザイン」をテーマに、3組の建築家が集まった。

 

モデレーター
中崎隆司氏 
建築ジャーナリスト、生活環境プロデューサー

 

中崎 こんばんは。新しい建築の楽しさ2017のデザインフォーラムを開催します。まず、今日の講師の方々をご紹介します。一番奥から、山路哲生さん、次にStudio YYの田中裕一さんと中本剛志さん、そして設計領域の吉谷崇さんと新堀大祐さんです。最初は各講師の方々に、品川のRe-SOHKO GALLERYに模型を出展されたプロジェクトについて話していただきます。その後、にぎわいのデザインというテーマでトークセッションを行います。では山路さんからお願いします。

 

「Bicycle Parking @ Commune」(駐輪場兼商業施設/東京都港区)

山路哲生氏(山路哲生建築設計事務所)

 

山路 こんばんは。山路哲生建築設計事務所の山路と申します。今回、展覧会に出展したのは「Bicycle Parking @ Commune」という駐車場兼商業施設の模型です。図に示すのが敷地全体の立地です。表参道交差点近くにあり、敷地の前面道路は青山通りですが、旗竿形状のため開発が進まない遊休地であり、今も港区の有料駐輪場として使われております。ここに建築的な要素を入れて自転車パークを計画しようというものです。

 

 こちらが全体の概要です。敷地は表参道の交差点近くで、このあたりが青山の中心的な場所ですけれども、隣にはコミューン246という屋台やカフェなどで構成された広場があります。この赤い部分が今回の敷地で、今は駐輪スペースとして使われています。国道246号線とは少しだけ接道していて、このような超旗竿敷地になっています。敷地面積は約1000㎡で、隣のコミューン246と同じ運営者が敷地を拡張して立体的なものにし、利用度を上げようとする計画です。

 

現状は、このような状態です。ここ(コミューン246)は屋台村のようになっており、建築家がいくつかの屋台やショップを設計しています。私もこの屋台の一つを設計した関係から、今回のプロジェクトの話につながってきました。現在の駐輪スペースは、正直本当に高度利用されているとはまだ言いがたい状態です。そこに新しいバイシクルパークを考えようということがミッションでした。この写真を見てもわかるように、コミューン246のほうは、にぎわっていますが、その隣の駐輪スペースはこのように寂しい状況となっています。ここの土地はURさんの持ち物で、借りているのが港区になり、運営がサイカパーキングさんになります。港区としては特にここが高度利用される必要性がなく、表参道の駅前から近い場所に駐輪場をきちんと確保されていることが重要なのです。ですから必ずしもここが整備される必要はないというのが現実なんですけれども、この場所に、さらににぎわいを創出して、まちを活性化させたいということが計画の目的です。これが全体です(*図解する)。

 

これが246号線から見たところです。中規模のビルが立ち並ぶ中に歯抜けしたような隙間がありますが、その隙間が敷地への入り口という位置づけになります。台湾にはU-bikeというレンタサイクルがありますが、各地下鉄の出入り口のすぐそばににこういうレンタサイクルが置かれています。日本で使う「SUICA」みたいなものが台湾にもあるのですが、それを使うことによって地下鉄からレンタサイクルに乗り換えて街に出ていける。地下鉄で都心部に来て、ここで自転車へと乗り換えができるとう仕組みです。日本でも震災以降、自転車文化に意識が向けられており、乗る人も増えているんですけれども、それが都市に根付いているというレベルにはまだ到達していないように思います。ここの敷地でレンタサイクルなどもやりつつ、自転車文化の中心地というか、表参道に来た人がまずここに立ち寄り、自転車に乗って街に出ていくことがひとつのインフラになるような、そんな提案が立地上もできるのではないかと考えています。

 

これが配置図です。入口の細い道路を通って中へ入っていく形状の敷地になっています。もともと300台ほどの駐輪スペースなのですが、その台数をキープしつつ、ショップやカフェを配置しています。また敷地の中央に大階段をつくることで、自転車文化の中心地として、みんなが集まれるような広場をつくろう、と考えています。この敷地は、周辺の建物が立て込んでいて、周りのどこからでも見下ろせるような場所になっているので、周囲の中層の建物を含めたオーディトリアムのような場所ができるのではないかと考えています。コンクリートの建物が立て込んでいる都市の中で、それを外皮と考えた中に、木の構造体が露出しているような、そんな状況が生まれないかと考えています。このスペースはできるだけ柔らかい雑多なものになるようにつくりたいと考えています。

 

この画像が先ほどの大階段なのですが、コミューン246ともゆるやかに接続されて人が行き来でき、互いの広場の中心となるようイメージしております。駐輪スペースについても、木質で親しみ易い場所になるのではないかと考えています。また、もともと路地状の敷地なので、現存の街路と連続するスペースがつくれるのではないかと考えています。これが断面図です。ここにある高低差を利用して階段をつくったり、この屋上に上がれるようにしたり、2階部分にもイベントスペースをもってきたりなど、積極的に立体的な関係性をつくってあげることで、イベントがまちぐるみで広がっていければ楽しいかなと考えています。

 

これが構造です。2年という短期間で考えられていますので、耐久性についてはその間もてばよく、そういう簡易な建物に対して防火緩和規定がありますので、それを利用して、街中でも木構造を露出した状態をつくることが可能ではないかと考えています。素材は、住宅で使われる105角の柱材や210幅の梁を使い、一般的な木造軸組みの在来工法をベースとして考えています。基本的にはローコストで誰にでもつくられるような工法を考えております。この画像はよくある上棟時の木造軸組みの現場写真ですが、この軸組の状態が僕は好きで、自分の設計した建築でも上棟後、ここで建てるのをストップできないかなぁ、と思うことがあります。今回はちょうど、そこでストップさせたような状態にもっていけたので、未完成の軸組の生々しさ、その骨組みの露わなところを見せたいと思っています。

 

今日、同席させていただいている新堀さんと吉谷さんに寄せていうなら、「設計領域を、ここで設定した」ということもできます(笑)。非常に単純な軸組でつくるのですけれど、外壁をつくるということまで踏み込まなかったことを表現にしているという考えです。木造軸組み工法でつくられた一般の住宅から外皮がはぎ取られたような状況であり、都市の硬い外皮に囲まれた建築未満の建築みたいなものができればいいのではないかと考えております。以上です。

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