イベントレポート詳細Details of an event

第24回 AGC studioデザインフォーラム
「省エネ法基準改定でこう変わる、ビルの設計作法」

2012年11月20日(火) 開催
講演会/セミナー

新省エネ基準の全体像

 

では、大きな枠組みからお話しします。
そもそも省エネ法とは「エネルギーの使用の合理化に関する法律」というのが正式名称です。

 


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この法律には「建築物に係る措置等(主務省庁:国土交通省)」「工場に係る措置等(主務省庁:経済産業省)」「器械器具に係る措置等(主務省庁:経済産業省)「輸送に係る措置等(主務省庁:国土交通省、経済産業省)」という4つの系からなっています。
今日、ご説明するのは、最初の「建築物に係る措置等」で、いわゆる建つ前のところですね。
この中身を見ると、まず文書で書かれた基準があります。法律の対象が誰であるか、について書かれ、その対象者に対する義務や措置についてフローにしたのが、次のスライドです。現状ではまず「判断基準」が公開されています。

 

それから「設計指針等の公表」、つまり省エネ主体に対するガイドラインも公表されています。そしてこういった判断基準に対して誰が対象者になっているかといえば、「第一種特定建築物」という2000㎡以上の新築・改築物件に対しての届出義務、省エネ計画書や維持管理等の定期報告が義務づけられています。
また第二種は300㎡以上2000㎡未満の建築物が、さらに、これら建築物とは別に住宅という枠も合って、これは年間150戸以上の建売り・戸建て住宅を新築する事業者となっています。このうち、第一種と第二種の特定建築物の方々には省エネルギー計画書を届け出る義務が課せられており、本日は、これに限定してお話しします。
現状でも届出だけを義務としているのですが、基準に達していない場合は、ここに書いてある通り、「基準に照らして著しく不十分な場合」に対して「変更指示」がなされる場合があります。またその指示に従わない場合は公表・命令(罰則)となっておりますが、そこまで行った事例はこれまでほとんどないと思われます。

 

またこの横に書いてあるのですが、2008年の改定から定期報告義務も入ってきております。今回の改定では、この枠組みが原則として変わっておらず、変わったのは「判断基準」ということなのです。つまり、「何が変わった?」と言えば、こういった仕組みではなく、「届出義務の判断基準」が変わった、というように理解してください。

 


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では、どういう判断基準なのか、ということを説明いたします。スライドに示すように数値基準と仕様基準の2つがあります。
数値基準については現在PALやCECの数値が示されています。みなさんご存知の通りPALとは建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失防止のための措置のことであり、ガラスの性能などが関わってきます。
またCECというのは設備システムのエネルギーの効率的利用のための措置ですね。要するに、「建物自体と設備の両面で建築物のエネルギー性能が成り立っている」というのが現状の基準です。

 

一方、仕様基準というのは5000㎡以下を対象として、PALやCECなどを計算していられない、そんなこと外注に出す余裕もない、という方々が、定量的計算ではなく、ある取り組みをしたから何点、また別の取り組みをしたから何点、という具合にポイント評価でも届出できるというものになっていました。しかし、今回の改定ではこの2つとも変わりました。
具体的にご説明すると、次のように計算されていたわけですが、今回の改定ではこのPALとCECを一つにしてしまって、一次エネルギーの消費量で基準値にしてしまうという考え方です。この図のように建物用途別に細かく規定されており(詳細は略)、現状でいうと、実は85%以上の建物がすでに新基準に適合している、と国交省は発表しています。そう考えると、現状をいっそう強化していこうというのが、改定の1つの狙いとも言えます。ただし、今回の改定では従来のポイント制もなくなったので、これから建つ建物はすべてこの基準に合わせないといけないことになるわけです。

 


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さらに具体的に見ていきましょう。見直しの全体像の図にありますように、これまではPAL(外皮)、暖冷房(CEC/AC)、換気(CEC/V)給湯(CEC/HW)、照明(CEC/L)、昇降機(CEC/EV)などそれぞれに対する基準でした。だから、例えば、すごく省エネ性能に優れたLow-Eガラスを使ってPALだけはすごくいいとしても、設備が悪いレベルだったら不適合になったのです。

 

しかし、今回からすべて一次エネルギーの消費量で計算するということになり、外皮や、設備のどの要素で頑張ろうが、全体として減るならば(基準に適合していれば)いいことになります。ただし、そこに小さく書いてありますが、最終案としてPALがまだ併記されています。
この意味は、次のようなことです。建物の外皮=PALというのは一次エネルギー消費量で見るならば、空調負荷の要素とも考えられるわけです。最終的にエネルギーを消費するのはあくまでも設備である、と。
そこで行政の考え方としては、どこで頑張るのかの選択は自由です、としたわけです。省エネ実現のどこへ投資してもいいのです。それに対して建築の先生方から「学生に教えていることを否定しないでほしい」という要望が出まして、最終的にPALも残して併記となったらしいのです。

 

 


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個人的な見解として、外皮性能を高くすれば、例えば結露に強くて耐久性も上がるなど、建物全体の性能は上がると考えられます。その意味で、PALは省エネというよりも建築基準法の括りではないだろうかと思っています。
ともあれ、今までと大きく違っているのは、空調の要素が全体の50%を占めているような建物では、空調だけで頑張っても基準に適合できる、ということになる。付け加えると、住宅もトップランナー基準が一次エネルギー消費量基準になり、建物と同じ枠組みに入ったのです。
実際の計算は次のようになります。
~(詳細は略)~

 

簡単に言うと、今までの基準よりも約15%程度厳しくなっている。すでに85%の建物が現行の基準に適合している現状を鑑みると、この基準値は2030年のゼロエネルギー化に向けて、徐々に強化されていくのではないかと思います。

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