イベントレポート詳細Details of an event

第24回 AGC studioデザインフォーラム
「省エネ法基準改定でこう変わる、ビルの設計作法」

2012年11月20日(火) 開催
講演会/セミナー

省エネ法の告示が2013年4月より改定される予定となり、建築物の省エネ設計が一次エネルギーの消費量で評価されることになる。またその手順として、新築や改築に対して省エネに関する届出義務が厳格化されており、ビルや住宅まで建築そのものや設備機器の設計も大きな影響を受ける。そこで、建築物の低炭素化や省エネに関する幅広い支援を行って来た工学博士の林立也氏に、”新基準”に適合するビルの設計手法や具体的な計算方法、図面上の工夫など、設計実務者に求められるノウハウと対応策を講演してもらった。

 

改定のスケジュール

 


 

日建設計総合研究所の林です。今日はよろしくお願いします。
まず、タイトルにあるように「こう変わる」と言ってはおりますが、法律が変わっても設計のあるべき姿はそう変わるものではないと思います。そういう意味で、設計の本筋は変わらないのですが、今回の省エネ法の改定で、どのような手間が増え、やり方の一部を変える必要があるかについて、簡単にご説明いたします。今日の内容は、次の6項目についてです。

 

1. 省エネ基準見直しのスケジュール
2. 新省エネ基準の全体像
3. 計算法の概要
4. 設計等への影響(作業負荷、空調熱源容量選定への影響、図面表現上の留意点)
5. 基準達成スタディー
6. 低炭素建築物認定について

 


 ※クリックで拡大します。

まず、文字が小さくて恐縮ですが、この図のイメージを見てください。
これは「低酸素社会に向けた住まい方会議」、通称「すますま会議」と呼ばれる、国交省、経産省、環境省の3省合同会議になっており、2012年7月に中間報告まとめを出しています。それによると、「2020年までに全ての新築住宅・建築物について段階的に省エネ基準への適合を義務化する」とあります。
これは法律用語ですので厳密に言いますけれど、これまでの「義務化」というのは「対象建物に対する届出義務」というものになっておりましたが、今回の「適合義務」というのは、「ある水準を満たさなければいけない」ということなのです。
つまり、その水準に達していなければ建築確認申請が通らないということになると思います。現行のままだと、水準に達していなくても届出をすれば良かったのですが、「2020年までに段階的に適合を義務化する」ということは、「とりあえず届けておけばいい」ではなくなるということです。

 

またこのスケジュール表では「2030年にゼロエネルギー化を実現」とも書いてありまして、やり方は分からないですが、とりあえず2030年までにゼロエネルギーを目指す、という方向性は明確に示されています。
そして図の赤で囲んだ部分が「適合義務」となっており、規模ごとに少しずつ始まっていくイメージになっていて、これが3省合同のパブリックな方針となっている以上、私たち業界に対して「準備しておいてくださいよ」というメッセージ、宣言と受け取れるわけです。

 


 ※クリックで拡大します。

次のスライドで見ていただきたいのは、今後の考え方として、「ベースとなる基準の確保」と「性能向上の誘導」という2段重ねになっていることですね。こういう仕組みが行政サイドで制定されます。この「ベースとなる基準」はまさしく法律で定める適合義務になり、その最低基準である適合基準に満たない建物は、今後、新築として建たないことになります。
それに対し「誘導基準」は、適合基準のさらに10%省エネであるという形でインセンティブを与え、減税措置や容積率の緩和などで支援していく方針と思われます。

 

現在の省エネ法の届出は300㎡以上が対象ですが、これが「全ての建物」となるので、例えば、郊外にある2階建てアパートなども対象に入ってくる。そうすると、これまでは省エネ法などに注視していなかった中小の工務店さんも、この枠組みになると適合義務の対象者に入ってくるわけです。
そうした場合、行政の方々が気にするのは「中小の事務所が届出に対応できるのか?」という実務的な問題なのです。つまり、義務化すると同時に届出を簡易化しないといけなくなるわけです。
今回の改定もそれを意識されていると感じますが、それを意識するあまり「かえって複雑化したのではないか?」という見方もあり、現在、国に寄せられているパブリックコメントにもそういう指摘が多くあると聞いています。

1 2 3 4