イベントレポート詳細Details of an event

第23回 AGC studioデザインフォーラム
U-30設計競技 「多様な光のあるガラス建築」 公開審査

2012年10月12日(金) 開催
講演会/セミナー

公開審査としての追加質疑

 

太田審査員 僕からよろしいでしょうか。ちょっと視点を変えた質問をします。
このコンペの最優秀作品は京橋の交差点という一等地のかなり良いところに展示するので、展示そのものが一種のエンターテイメントでなければいけないと思うんです。それで、特に増田さん大坪さん、久保さんにお聞きしたいのですが、2組の計画は中に入って体験する空間ですよね。外から見ると、ブラックボックスかホワイトボックスかよくわからない。
中も相当暗くしないとその微妙なニュアンスが伝わらないので、中でやっていることがわからない。それをどう考えているかということが1点。

 

もう1点は米澤さんにも言えることなのですが、展示会場は夜も開いているので、夜はどのように対応するのか。
あともう1つは、今回テーマがあって、技術面も発展させると問題が山積みになるでしょうが、作るプロセスも一つの展示だと思ったほうがいいと思っています。その点がこの企画のとても面白いところだと思っており、つまり必ずしも全部を作らなくてもいいわけで、途中までで展示するのもエンターテイメントになると思うのです。
そのようなこともひっくるめて、どのような展示計画をするのかということを3組にお聞きしたい。久保さんからお願いします。

 

久保 1つ目に関してですが、トップライトの部分がいわばガラスの塊のように見えてくるため、通常の一枚のガラスがある状態とはだいぶ存在感が違うと思うので、それがひとつアイキャッチになるというか、存在感になるのかなと考えています。
夜に関しては、展示スペースの上部にライティングレールが通っていたので、それを使って照明で中に光を入れて、光が分かれるように見せることができるかと考えています。
プロセスについてですが、光が2つに分かれるという現象は、普段あまり見慣れない現象なので、それをガラスの厚みだったりプロポーションによってどうやって変化するのか色々な実験をしたいと考えていて、その過程をうまく展示できたらおもしろいかなと思います。

 

増田 実は、初めは壁がなくて屋根だけがあって、外に分けられて散っていく太陽の光を人間が包んでいくようなイメージを持っていました。
なので、ガラスの成り立ち方はもちろんなのですが、壁をなくし、いろいろな場所に光が落ちている状態で展示をしたいと思っています。
それから、実際の環境でどのようになるかを検証するために、1回どこかに作品を置くということも考えたうえで、展示をしたいと思っています。

 

米澤 今回のコンペ案では、森の中を想定して提案していますが、この建築はショールームでも可能だと思っています。例えば、太陽光や人工照明を用いるなど多様なもので光の状態を作ることによって、ガラス一枚一枚に微分化されて、多様な光の状態ができるのではないかと考えています。
1枚の大きなガラスではなく、小さなガラスを積み重ね、微分化するからこそ、反射や透過、屈折、映り込みといったガラス固有の魅力をわかりやすく宝石のようにきれいに、シンプルに伝えられないかなという思いで作りました。

 

 

平沼審査員 こうやって3組の作品を並べると、明らかに米澤さんの作品はすごく展示の想像がつきやすいのです。昨年、最優秀賞を受賞して展示を行った加藤さん・ヴィクトリアさんのケースを思い出しながら質問をします。
彼らの提案は、森の中に木々が自然に立っていて、そこに領域を決めながらハンモックのようにガラスを設置するという提案に対して、この場所での展示では、まずどこに木を建てようかということから逆手でスタートさせたプロセスが、結構良かったのではないかと思っています。
そこで、米澤さんにお聞きしたいのですが、ここの展示場所に対してどのようなプロセスでつくっていきたいと考えていますか?

 

米澤 プレゼンで紹介しました通り森の中をイメージして設計はしましたが、だからといって昨年の加藤さんのように、自然の木を持ってくるということは全く考えていません。加藤さんは構造が木々だったので、それでよかったかと思うのですが、今回の私のプランでは、逆にそうしてしまうと強引さが現れ限定的になってしまうような気がしてしまいます。
今回かなりぼかしてプレゼンしたのもそこにあります。ガラス一枚一枚の性質をもう少し変えて、その環境の状況に合わせて設計ができるような、伸びしろを持たせられないか、ここだけでしか成立しないものが作れたらいいと考えています。

 

平沼審査員 もうちょっとだけ、いじわるに突っ込んで聞いてみます。
結局、この米澤さんの案だと、展示場所という屋内用の小屋で展示をすることが想定できるので、おもしろく無いと思っています。わかりやすくいうと、みんなが想像できてしまうものを実験的だといって実現化しても仕方がないと思うんです。

 

先ほど太田先生も言われた、ここで展示する仕組みをどのように整理するかによって、技術的な見解をどう見せていけるのかも重要なことだと思うのですね。そこの見解が聞きたいし、どういうプロセスをもって、具体的な実現をしようと思っているのか、聞きたいのです。

 

米澤 確かに構造を検証し、このような提案をさせていただいたので、理論上ガラスだけで自立するとどのような状態になるのか、なんとなく想像がつきそうだというご指摘はわかります。
ですが、この不思議な状態を自分でも見てみたいという思いがありまして。こうしたガラス一枚一枚が自立するということもそうなのですが、この1/50模型でやっているようなスケールでは絶対分かり得ないところで、スタディして実験していって自分でも1/1で実現したときの状態を、見てみたいという思いでやっております。

 

佐藤審査員長 やはり私は構造家の立場から安全性が非常に気になるので、受賞作品を選ぶにあたってもその点を考えたいと思っています。ガラスの構造を設計するときには、常にガラスが1枚割れたらどうなるかを考え、そのような意識を置かないといけません。
米澤さんと、増田さん・大坪さんにお聞きしたいのですが、ともに1枚割れると崩落する危険があるような構造に見えますけれど、今思いつく範囲でよいので、なにかフェールセーフを設けるとすると、どういうことが考えられますか?

 

増田 フェールセーフまで、まだ具体的に考えが行き着いていないのですが、単純に屋根に芯材を入れて、上面が支えられていれば、全部が落下することはないのかなと思っています。

 

佐藤審査員長 屋根の5ミリの板が割れるとどうなりますか? どのガラスが割れるのか分からないので、それを想定しないといけない。もしくは取り替えるという状況もあるんです。

 

増田 芯と横座屈のところに何か施せば、全体が崩れることはないかなと思っていて、十字にかんでいるところの芯と上部の辺に、2次材を使用する方法を考えるのが、1番早い対策かなと思っていますが、まだそこまでの考えにいたっていません。

 

佐藤審査員長 わかりました。先程どうしてガラスが4枚なのかという質問をしましたが、枚数を増やすことで、何枚か割れても構造的に保つことが出来るという設計案もあるでしょうし、他にも何か考えられるだろうと思いますけれども、まずはわかりました。

 

米澤 表面張力を使用したシャボン玉のような構造と言いましたが、実際そのような状態をつくってしまうと、パンとシャボン玉のように割れてしまう、崩壊してしまう可能性が考えられます。
実は、この案はあくまで鉛直方向にしか張力をきかせていません。要はワイヤーが何本か通っているので、それが分散して板ガラスの壁柱のようになっていますので1枚割れても大丈夫ではないかと考えています。

 

佐藤審査員長 例えば弱くなっている部分が割れてなくなり、正常な部分、健全な部分に寄りかかった場合、かなりの付加がかかるので、そのような注意事項はあるかと思いますが、そういう場合に面外に曲げられてしまうとか、水平荷重などのテストはしていますか?

 

米澤 テストはできていないので今後検証しなくてはいけないのですが、樽の構造のように、リング状に水平方向にも上と下と真ん中くらいで張力を働かせようとは考えています。それが例えばやじろべえのようなものになるのか、その辺りも検討していかなければならないと考えております。

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