イベントレポート詳細Details of an event

第23回 AGC studioデザインフォーラム
U-30設計競技 「多様な光のあるガラス建築」 公開審査

2012年10月12日(金) 開催
講演会/セミナー

「Sun For Two」のプレゼンテーション

 

 

久保 今回のテーマは”多様な光のあるガラス建築“ですが、一般的に使われている板ガラスは通常の使い方だと、ただ光を通すだけです。
しかし向きを変えてみると、ちょっと面白い現象が起きるということが分かりました。

 

ガラスの小口の方向を太陽の向きに向けると、太陽の光が2つに分割される、という現象が起こります。何故このような現象が起こるかというと、丁度光ファイバーと同じような現象が起きていて、ガラスの内側で光が全反射を繰り返します。
その反射の数が奇数の場合と偶数の場合で光の向きが変わってきます。その結果光が2方向に分解されるのです。
では、いったい光の角度が変わることで、どのような可能性があるのかを考えました
もともと、太陽の光の向きを測定して、暦や時間を決めていたように、時間と太陽の光の向きというのは密接に関わっています。
また、普段僕らが生活している中で、太陽の光の角度が変わることで、時間の変化を感じたり、あるいは季節の変化を感じている、ということを考えると、光が2つになるということは、2つの時間があるような、そんな空間が、もしかしたらつくれるかもしれない、と考えました。

 

また、建築的側面ではどのような可能性があるのか、ということを考えたのですが、素晴らしいトップライトを持った建築というのはたくさんあるとは思いますが、実は、それは2種類しかないのではないかと思いました。
1つは、パンテオンのように1方向の光を空間に落とし込むもの。もう1つは、すりガラスを使って空間全体に光を拡散させるものの2種類です。

 

今回、ガラスによって光を2方向に分解することができたら、これらとは違う、また新しい光環境をもった建築をつくられるのではないか、という可能性を感じました。そこでスライドのような空間をスタディしました。板ガラスを重ねたトップライトと、2方向に分かれる光に対応した2つのスペースをもつ建物です。
下のスペースは上から光が落ちてくるような空間で、右上のスペースは横から光が差し込んでくる空間になっており、その2つの異なった光環境を持った場所が、1つの空間の中に同時に存在する、というような建物になっています。
それぞれスペースは階段を上ることで行き来ができるようになっています。トップライトの部分は、合わせガラスの要領でガラスを重ねて、膜で接着しています。それを長辺方向に渡すことで、構造的にもたせています。

 

ガラスの許容力度を計算すると、ガラスの厚さを100ミリぐらいにすると3mぐらいまで伸ばすことができ、150ミリにすると6mまで伸ばすことができるので、通常とは違った、フレームの無いガラスだけのトップライトを作れるのではないかと思います。
トップライトの角度は35度にしているのですが、これはちょうど夏至の太陽高度と、冬至の太陽高度の平均値を反転した角度になっています。このような角度にすると、夏の太陽の光は、冬の太陽と同じ光に分解され、逆に冬の太陽の光は、夏の光と同じ太陽の光に分解されて、1つの空間に夏と冬が同時に存在するような、光環境を作り出せます。

 

様々な方向の光のデータを、比較した表を見てみると、例えば夏の12時の光において、ガラスが無い場合は下の空間にしか光が当たりませんが、ガラスがあると両方の空間に光が分解されます。
冬の場合だと、右上に光が偏ってしまうのですが、それが2方向に分解されます。
通常トップライトをつくると、夏場は1カ所に光や熱が集中してしまい、逆に冬場は下の方まで光が降りてこないので、なかなか熱や光をとることができないという矛盾があると思うのですが、このガラスを使うと、そのような問題が解決できる可能性もあるのではないかと、思っています。
1つの太陽の光が2方向に分解されて、1つは冬場と同じような光の環境になり、もう一方は夏のような日差しが入ってくる。
またあるいは、朝のような横からの光を全身に浴びることができる場所と、昼間のように上から光が差しこんでくる場所がある。2つの時間帯が、あるいは2つの季節が、同時に1つの空間の中に内包されているような建築がつくられるのではないか、と考えています。
展示計画については、人が実際に中に入れるような、3m角のモックアップを作りたいと考えています。展示会場が南向きなので、実際に太陽の光を入れてどのような光環境ができるのか、それを観測できるようなものを作りたいと思います。

 

模型だと光の変化の仕方が分かりづらいと思うので、ムービーを作成しました。この映像は、太陽が昇ってきた状態です。2本の光の筋が、少しずつ動いていってクロスしていくのが分かると思います。太陽が何重にも重なった後、ここからまた光が下がってくると、2本の筋が1つできます。一般的に使われている板ガラスの向きを少し変えるだけで、多様な光のガラス建築が作れるのではないかと考えています
以上で発表を終わります。

 

質疑応答

 

太田審査員 今のムービーは、CGではなくて模型なのですか?

 

久保 模型で、光源は人工光源です。


 

太田審査員 人工の光点でガラスを使っているのですか?

 

久保 模型はアクリルです。

 

太田審査員 なるほど、アクリルでやっているのですね。ガラスの場合、光を上手く拾ってくることが出来るかが重要なのですが、これはガラスを使ってやらないと分からないことだと思います。それは、ガラスの内部だと、反射するわけだからですよね。
その時、光ファイバーの様に光が出ないように導く必要があるわけですよね。この場合高透過ガラスがいいような気もしますが、ガラスの膜の特性はどの方向がいいと感じていますか?

 

久保 まず、高透過ガラスがいいのか普通のガラスがいいのか、という話ですが、反射率はあまり関係がなく、色の問題があります。やはり普通のガラスだと緑色が強く出てしまうので、光の色を変えないためには高透過ガラスの方が向いているかなと考えています

 

また、光を2つに分けるために反射させるのですが、反射に関してはトップライトの角度が重要です。太陽の向きにガラスの左右を向けると、光とガラスが平行になるので、反射率が90%位まで急激に上がり、2方向に確実に分解されるのではないかと思っています。

 

平沼審査員 冬至と夏至、それぞれ太陽の南中高度の平均的な関係性から、建物のこの大きな開口部の角度を決定し、それぞれの時間変化によってできる部屋の明るさを部屋の位置によってデザインされたのだと思っているのですが、それで合っていますか?

 

久保 はい、そのように考えています。

 

平沼審査員 その場合まず、この開口につけている断面方向に使うガラスは何ミリ厚で何枚くらいを使用する予定ですか?

 

久保 15ミリのものを60枚くらいです。

 

平沼審査員 重量はどのくらいになりますか?

 

久保 展示用のモックアップでは90×180の梁でガラスを受けて、支えられる重量であることを計算で確かめています。

 

平沼審査員 もう一度教えてください。ガラス塊という重量物が設置されることを前提に、その開口部の向きだけを見ていると不安定にも感じてしまうのですが、開口角度を決めた理由は、夏の暑いことも考えて日射の向きだけの話ですか?

 

久保 太陽とガラスが平行に近い方が、光が2方向に分解されやすいのですが、あまりガラスを寝かせ過ぎても時間帯によっては2方向に分解されなくなってしまうので、その点も考慮した結果、この角度が良いと思いました。

 

佐藤審査員長 お二人の先生方と少し質問が被りますが、まずはガラスの奥行きです。構造上必要なデプスで背を決めたのはわかったのですが、それは構造だけで決まるのではなくて、太陽光をどのくらい透過させたいかによって決まってくると思うのですけれど、その点はどうお考えですか?

 

久保 そこは是非実験したいと思っているところです。光が2方向に分解される現象が、ガラスのデプスをどのくらいにするとどのように変わるのか、その関係性がまだ分からないというのが現状です。色々試してみたところ、デプスがある程度あった方が、光が綺麗に2方向に分解されるということが分かったので、それをどの位まで縮めると分かれなくなるのかは、実際のサンプルを使ってもっと検証したいと思っています。

  

佐藤審査員長 15ミリという厚さも検証しないといけないところなのでしょうか。その15ミリには何か根拠がありますか?

 

久保 なるべく分厚い方が、光が入りやすいので15ミリとしました。

 

佐藤審査員長 そうすると、できる限り厚いものを入手したいのですね?

 

久保 そうです。19ミリでもいいと思うのですが、施工の問題があって、今回はおそらく大人数で施工、展示の計画はできないと思うので、15ミリ位が作業しやすいかなと思いました。

 

佐藤審査員長 先程の模型のテストを見て、角度が2方向に分かれた光が入れ代わっていく様子なども非常に綺麗で、実際の状態を見てみたいと思いましたが、一方、我々構造屋からすると、これは相当な重さになると思うので、屋根の上にこれだけの重量をのせることに非常に抵抗があるのですが、どう思われますか?

 

久保 出来るだけガラスのデプスを縮めたいと思っているのですが、光を2方向に分解するために、どれだけ縮められるのかという葛藤があります。
また構造的な面で言うと、今はガラスをかけ渡しているだけなのですが、ロッドのようなものを部分的に間に通して、デプスが小さくても構造的にもたせる方法を、もう少し検討したいと思っています。

 

花澤審査員 先生方とはまったく違う視点で質問をさせてください。温熱環境のことでおうかがいします。回折機能というのでしょうか、そのような形で光をコントロールするのはすごく発想に富んでいて、おもしろいと思って見ていました。
ただ、夏場の外気温35℃のときの室内温度はどのくらいになってしまうのかな、という心配があります。そのあたりは、何かシミュレーションをされていますか?

 

久保 温熱環境のシミュレーションはしていないのですが、通常のトップライトだと、直射光が1カ所に集まってしまって人がいられないくらい暑い場所が出来てしまいますけれど、光が分散されることで、ある程度はばらつきが出るのではないかと思います。
あとは熱を上手く換気できるような仕組みを考えられるのではないか、と考えています。この形状を使って、上部から熱を外に出すことも出来るかなと思っています。

 

花澤審査員 ガラスを1枚ずつ短冊状に縦にくっつけているのは、非常におもしろいアイデアと思うのですが、光を曲げるのであれば、フィルムを使うことは考えなかったのですか? つまり、ガラス以外の他の素材との組み合わせを選択するようなことは考えなかったのでしょうか。

 

久保 そうですね。僕の知る限りでは、このように綺麗に2方向に分けられるフィルムはないと思います。ガラスそのものがもつ光学的特性を活かして、何か発想の転換を行うことで新しい光環境をつくるということに興味があります

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