イベントレポート詳細Details of an event

第22回 AGC studioデザインフォーラム
「震災における非構造部材の被害について」

2012年9月20日(木) 開催
講演会/セミナー

二つ目の被害パターンは「鉄骨造のラスシート」です。
ご存知のようにラスシートというのは少し古い構法で、角波鉄板にラスを付けモルタルを塗るというものでした。昭和30年~40年代に鉄骨造の外壁として多く採用された構法です。しかし、ALCの普及に伴い最近はほとんど使われなくなっていますが、建て替えられずまだ残っているものも多い。
これの被害の特徴は錆です。ラスと鉄板の取り付けに使っている金物、ビス周囲が錆びていて、地震による変位に追随できずラスシートとモルタルが一体となって崩落してしまう、というものです。中越地震の時も多く被害が出ましたけれど、これが典型例の写真です。
こちらは水戸市の8階建て商業ビルです。上から下まで外壁がバラバラと落ちています。錆も見えていますね。
こちらは郡山市の例で、こちらも錆が原因で全面的に脱落しています。壁体内の換気ができずに錆が来て、全面的に脱落している。富士宮でも下地のラスシートを留めていた金具が錆びて全面的に脱落している。同じような例をたくさん見ました。
この類いは点検するのが難しいと思います。一度点検するとなると、内装材をはがさねばならないからです。

 

ラスシートによる外壁は全面的な脱落をした場合、人的な被害が大きくなる可能性があります。そのため外装の改修や建て替えが必要と考えられます。「ラスシートは落ちる」と分かっている構法ですので、対策が必要でしょう。
ラスシートの構法は、ある地点にあると、必ず周辺にも同じつくりのものがあります。これは名取市の例ですが、街道沿いに連続的にあり、所々で脱落しています。街道は避難経路であり、緊急車両の通り道でもありますから、避難路確保の観点からも改修が望まれます

 

次のALCについては、みなさんご存知のように取り付け方法が主に2つありますよね。うち「縦壁挿入筋構法」は2002年に廃止になりました。最近は「縦壁ロッキング構法」へと全面移行し、ALCメーカーはすべてロッキング構法を採用しています。
今回、被害が大きかったのは、やはり旧い挿入筋構法のほうです。パネルの破損があったり、目地の損傷があったりしました。
縦壁挿入筋構法は、確かに被害は多いのですが、もちろん無被害のものもあり、それらは施工がきちんとしていて、日常的なメンテも行き届いている、というものでした。
一方、ロッキング構法のほうは無被害のものが多かったと思います。ただ、よくあったのは、ALCパネルの上に仕上げ材としてタイルを貼ったものです。パネルの下地とタイルの仕上げの目地が一致していないと、そこで剥がれていたり、仕上げのタイルがパネルをまたいでいたりすると、割れているものが多かったです。
実例をお見せしますと、これは水戸市の縦壁挿入筋構法の被害例です。真下に小型車があって、落下したパネルで車体が潰れていますね。もし、中に人がいたら大変なことになったでしょう。
ALCは大空間用に使われますが、代表例の一つに倉庫があります。これは縦壁挿入筋構法の栃木の倉庫ですが、大規模な鉄骨造になると、変位も大きくなりますので、そのために落ちたと考えられます。
具体的にどの程度の変位だったかを推測するのは難しく、つまり完全な解明は困難なのですが、やはり大スパンのものは被害を受けやすいし、幸いにして落ちなくても目地の損傷はあります。
一方この写真はロッキング構法の被害例です。耐震性が高いと言われていたにも関わらず、名取市ではこのように被害が見つかりました。

  

それと、ALCでつくられた看板が落ちていたケースもありました。こうした工作物については明確な基準が定められていませんが、今後、基準の策定が求められると思います。
そしてALC全般の被害原因を解明しようとしても、実際のところは難しいと感じます。というのは、挿入筋構法でも落ちていないものがあるからです。施工の問題も考えられます。
また、今はロッキング構法だけですので、挿入筋構法だった建物のALC1枚だけを換えるとなると、そこだけがロッキング構法になってしまいます。そうなった場合、周辺のパネルとの変形をどう取り扱うかも検討しないといけないでしょう。

 

「その他」の外壁に関しては、湿式外装と乾式外装の2つの被害例を見ました。
まずは特殊な例として、隣接する建物同士がぶつかって破損したものがあります。
またこれは横浜で大きく報道された例で、RC外壁の剪断亀裂の例です。モルタルの付着が不十分で施工も良くなかったのでしょう。こういう建物が身近にあったのか、と驚きました。
それから、こちらは押し出し成形セメント板、いわゆるECPの破損例です。名取市です。ロードサイドショップでよく使われている建材ですけれど、これが破損して落下しているというケースが見つかりました。他の乾式構法では、低層階の石張り構法の脱落があります。

 

 

一方で、PCカーテンウォールについてはあまり被害がなかったです。
例えば、この横浜の施設では少し面がずれていますし、こちらの水戸のビルではPCパネルの目地が少し広がっていますけれど、被害というほどでもない。
またこの両者はどちらも地盤の弱いところという共通する条件があります。さらに新宿超高層ビル群のように表面上は無被害と思える建物も多かったわけです。あそこまで長周期の振動にさらされても目立った被害は少ない。仙台の高いビルもそうでした。

 

さて、今後の課題としては、構造体と非構造体の被害を合わせて考えなければいけないと思います。特に変形が大きい建物についてはそれが必要です。
二つ目の課題として、過去の構法の早急な点検と改修が求められていると思います。もちろん、ラスシートの建物の改修というのは現実的でないため、全体のリノベーションを考えないといけません。ですので、今後の耐震改修は、「フェールセーフ」の発想で考え、落ちても大丈夫な工夫をする。
例えば天井なら、落下防止のネットを張るなどし、ガラスで見られる、合わせガラスに変更するような、そういう知恵と工夫を取り入れて行くことが大切だと思います。

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