イベントレポート詳細Details of an event

第22回 AGC studioデザインフォーラム
「震災における非構造部材の被害について」

2012年9月20日(木) 開催
講演会/セミナー

東日本大震災から1年半が経ち、名古屋で開催された日本建築学会大会(2012年9月12日~14日)では、非構造部材における震災被害調査に関する発表があった。その調査に関わった研究者をスタジオに招き、板硝子協会による調査報告を含め、大震災による非構造部材の被害を概括した。

 

外装の被害について

 

 

私どもは日本建築学会の一員として被災地を回り、現地調査を行いました。もともと非構造部材の研究をしているメンバーは全国でも少ないのですが、とにかく現場を見ないといけないので、計11回に及ぶ現地調査を実施しました。
今日は主に非木造建築物の被害を報告します。

 

さて、地震発生直後、私は近場の横浜から調査を開始しました。3月16日のことです。東北の被災地へ入ったのは4月に入ってからで、それ以降、各地を回りました。地図で紹介しますと、この赤い色の付いたエリアが震度6強、紫のエリアが震度7、黄色が震度4の地域です。
一方、赤い○が私たちの調べたエリアで仙台、郡山、いわき、水戸、宇都宮、横浜、千葉、東京、そして3月15日に地震が起きた富士宮へも行っています。改めてこの地図で見ると、かなり広範囲にわたって震度5以上のエリアが広がっていることを確認できます。非構造部材は、だいたい震度5以上になると被害が出ると言われますが、こうして広範囲にわたっているのが今回の特徴です。
今回の震災では津波被害が大きく報道されましたけれど、地震によって非構造部材がどの程度やられたかということはあまり報道されませんでしたので、そこを詳しくご紹介します。

 

さて、繰り返しになりますが、今回の被害は、広い地域で広範囲に被害があったということです。構造材はもちろん、非構造材でも被害が各地で散見されます。
まず、どんな地震だったのかについて触れますと、これは常陸太田市の木造家屋が全壊している写真です。調査全体を通して、全壊の被害はそれほど多くないのですが、それでも次の写真のように、仙台でもRCの建築物が3、4棟全壊していました。これは卸町という市街地での被害です。阪神淡路大震災の時に比べ、今回、こういう全壊被害は数としては少なかったようですけれど、やはり、いくつかあります。
郡山でもこのようにピロティが完全につぶれている例がありました。不幸中の幸いで、たまたまここには人がいなかったようで、人的被害を避けられたということです。
それから液状化の問題も出てきました。これは浦安の駅前です。地盤沈下しています。駐車場も水が噴き出して砂が広がっています。また、地盤が大きく動き、例えば東海村では、その地盤の動きで建物が傾斜してしまう被害も起きました。
さらにこれは埼玉県の小学校ですが、向かって左側の部分が右下に傾いていますね。元々田んぼだった土地のようで30~40センチも沈下しています。これも全壊扱いになります。

 

この辺で今日の本題に入ります。最初にちょっとだけ木造について触れますと、とくに戸建て住宅の木造の非構造部材で見られる被害は主に瓦と湿式の外壁です。この写真が典型例です。似たようなケースが関東近郊の至る所で見受けられました。こちらは寺院です。塔や墓石、灯籠などがずれています。これらは地震で動いたのです。

 

私たちの調査のメーンである、非木造の非構造部材に入ります。
先に申しました通り、この調査は3月から5月にかけて各地で行ったのですが、やはり広範囲なので全容の把握が難しかったです。
被害の起きた場所へ行くきっかけが、報道だったり、ネット情報だったり、あるいは市役所等の情報に基づいて出かけて行きました。
また余震も多発していたので、被害発生時点の特定が困難だったりしますし、この調査を終えてから被害例が新たに出て来た、ということもあるわけです。もともと非構造物は、壊れたらすぐ片付けられてしまうことが多いので、詳細が不明なことも多く、なかなか本当の実態に基づいて分析するのが難しいのです。
とはいえ、そんな中でも分かったことをご報告します。主な項目は次の4つです。

 

一つ目が「鉄筋コンクリート造の外壁タイル」、二番目が「鉄骨造のラスシート」、三つ目が「鉄骨造のALCパネル」、そして「その他」という分類になります。うち三つ目までは従来から頻繁に見られた地震による破壊です。典型的な被害例であり、「今回もまた」ということです。
最初のRCの外壁タイルに関して言いますと、このタイプの被害は、地震直後に見つかるものもありますし、見付けづらくて、ある程度時間が経った後で、よく見たら分かった、というものもあるのが特徴です。
被害パターンは3つです。RC壁とタイルの付着面が剥離する、RC壁そのものに剪断による亀裂が入って、それが原因で仕上げのタイルが剥離したり割れたりする。この2つがほとんどを占めます。
また被害箇所は開口部周辺が目立ちました。これも従来と同じ傾向です。
これらのパターンはいずれも広範囲に点在し、震度が大きかった地域限定、ということではありません。
例えばこれは横浜の例です。開口部の周りに力がかかってタイルが剥離しています。次の写真も横浜の例で、9階建ての横連装の開口部で、この場合は少し鉄筋まで見えています。
次の写真も横浜です。横浜の例はすべて関内のオフィスビルです。つまり、かつて海を埋め立てて造成した、地盤があまり強くないところなのです。
これもRCの亀裂に伴って大きな欠損が見られるビルです。なお、階段室は(構造躯体と)挙動が少し異なり、大きく動くので、被害が起きやすいとの印象を持っています。
これは水戸の4階建てオフィスビルの例です。またこちらは郡山のビルですが、こちらも外壁剪断のひび割れに伴うタイルの剥離です。オフィスビルに限らず、マンションでも同様の例が見られます。こちらは名取市の8階建てマンションです。

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