イベントレポート詳細Details of an event

第18回 AGC studioデザインフォーラム
「新しい建築の楽しさ」展連動企画 講演会”世界とつながる”

2012年6月5日(火) 開催
講演会/セミナー

トークセッション

 

中崎 残り時間があまりありませんが、短いトークセッションをします。

 

先ほど、平田さんからは台湾と日本のクライアントに関する発言がありました。また前田さんは、建築を求めている人がいれば世界中のどこへでも行って仕事をしたいと仰っていた。日本のクライアントと海外のクライアントの間に、大きな違いはありますか?

 

平田 海外の建築家に対する期待が大きい、というのは、やはりわざわざ海外から呼んでいるので、そういう期待がないと呼ぶ意味がないと思います。逆に、日本のクライアントでも海外の建築家に頼む場合は、それなりに期待が大きくなると思います。

 

前田 私の印象では、海外のクライアントは日本のクライアントに比べ、複雑な問題を建築家へ投げかけてくるように思います。日本では、その複雑さをいったん仕分けしてしまった後に建築家へ投げかける。海外の場合は、複雑なものの解を建築家へ解かせるようなところがあるように感じます。
ただ、僕はまだ日本の状況をよく分かっていないかもしれません。感じるのは、日本では建築に求める期待や必要性が、それほど大きくない。

 

一方、バングラディシュのようなところでは、単純に建築が必要なわけです。これは命を守るという点で切実ですよね。ああいう土地では建築のできることがたくさんあると思います。

 

 

中崎 私は今回の展示会のタイトルを考える際に「新しい建築の楽しさ」というものを考えていました。しかし、そう話すと建築家のみなさんから「楽しさって?」と問い返される。「中崎さんだけが楽しんでいるのではない?(笑)」と言われて、実は日本の建築が楽しくなくなっているのじゃないかという気がするのです。

 

一方、世界とつながるという点では、インターネットの影響に触れざるを得ません。竹口さんはネット上で被災地向けに図面を公開しておられるし、高野山の宿房も、たぶんネットで見た海外のバックパッカーがネットで予約をするような状況になるのでしょう。インターネットが建築に与える影響を、どう感じておられますか?

 

竹口 普段は住宅の仕事をすることが多く、そういう小さな規模でやっていても、それを紹介したホームページにみなさんアクセスしてくださるという状況があります。先日もまったく縁のないタイの建築家協会から講演依頼がありました。インターネットによって空間的な距離が関係なくなっていると感じます

 

それから先ほどの日本と海外の違いに関して言えば、今、開発が盛んな国と、成長期を終えた成熟した国では、やはり違いがあると思います。発展中の国では、成熟した国の建築に興味を持っている。

 

前田 社会の成熟度と建築への期待感がリンクしているとすれば、それは嫌だなぁ(笑)、と思います。確かに日本は成熟して人口減少社会も進行し始めている。その中では建築というハード面よりもプログラムそのもののほうが大事という感覚がとくに若い世代にあると思います。学生を見ていても、そう感じます。つまり、ネットで言うと、ケータイそのものよりも、その中のアプリのほうが大切という意識ですね。
そういう現実と社会の成熟がリンクしているとすれば、ちょっと嫌だな、という印象です。まぁ、例えばフランスに対しては様々な意見がありますけれど、一応、政策や制度によって少子化傾向を反転させることができている。

 

 

平田 ネットは確かに多岐にわたる影響があり、もう日本で建築をつくっていようと、海外でつくっていようと、全く関係なくなってきている。
突然、インドあたりからメールが届いたりしますしね。以前はこんなに海外出張するようになるとは思ってもいませんでした。気負うことなくその状況に対処しています。

 

身体的にも時差の少ない国だとダメージもないので、今後はもっと流動性が高まると思います。それから日本の人口減少は間違いない事実で、いろいろなことの縮小も仕方ないように映りますが、一方で世界的に見ると人口増大は収まっていません。しかもその人口は都市へと集中する傾向ですよね。そういうことを意識しながら仕事をしなければいけないと思います。

 

前田さんが話されたようなバングラディシュのような状況、あるいは竹口さんも考えられたエネルギー問題などがありますけれど、そうした問題へ積極的につながっていく必要がある。ただし、ネットはすぐに情報が行き渡るので、みんなで微差を競うような不毛な状況も生まれつつあって、世界が急速に均質化している中で、どうやって楽しむかという問題はあるでしょう。

 

中崎 日本の建築がいま世界のどこに位置しているのか、どこを目指して行けばいいのかを、いま一度考え、はっきりさせる必要があるように思います。今日はどうもありがとうございました。

 

1 2 3 4