イベントレポート詳細Details of an event

第18回 AGC studioデザインフォーラム
「新しい建築の楽しさ」展連動企画 講演会”世界とつながる”

2012年6月5日(火) 開催
講演会/セミナー

「Hotel J」について

 


今日のテーマは「世界とつながる」ですので、これまで自分がどのように世界とつながってきたかをプロジェクト例で紹介します。
まず、これは建築ではなくイスなのですが、煙や海中生物がヒダになって積層する幾何学的原理を実験的に再現してつくったものです。ベニアを250枚積層させて、このような形を作っています。人が座るところはヒダを細かくし、荷重が伝わる部分はヒダを大きいままに成長させたイメージです。

 

2008年にロンドンのアートフェアに出展したところ、ヨルダンの王女の方に購入していただきました。それが初めて”海外とつながった”経験です。

 

このイスはオブジェクトでしたが、この幾何学的原理は限られた空間の中で面積を広げていくというものですから、建築にも応用可能と考えました。建築は限られた敷地の中で人が生活する面積を最大化する行為でもあるからです。
そういった「ヒダの遺伝子」を住宅に働かせるとどうなるのか、という考え方で臨んだのが、この台湾の(今回の企画展作品とは別の)プロジェクトでした。台湾から19人、海外から19人の建築家を招き一大住宅地をつくるという計画です。

 

私の設計ではこの写真のようにヒダがたくさん積層しながら、じつは1枚のヒダでできている。一見ランダムだが部屋周りのヒダはうまくつながっています。全体の85%が平面、残りが曲面なのですが、非常に複雑で有機的なイメージを受けます。
次の画像のプロジェクトは2009年にミラノサローネでキャノンの会場構成をした時のものです。映像アーティストとコラボして「結び目」と呼ばれている形をつくり、メビウスの輪のようなものを面構成しました。
その時の反応がとてもよくて、2010年にも同じ展示会でアーティストと一緒にインスタレーションを行いました。それは数カ所のプロジェクターから角錐状の光を出して、全体で100面以上もあるらせん状のスクリーンをつくり出します。いわば光だけでつくる建築みたいなものです。すべてをコンピュータ制御しています。
この展示が非常に日本的ととられました。というのは、海外の人たちと違い、日本人は徹底して細かなところにこだわってやりきってしまうところがあります。

 

確かに、ああいう展示は日本のアーティストとのペアでなければできなかったと思います。外国の方々と、日本人がやることはそういう点で違いが出る。その時以来、それまではどちらかというと違和感があった「日本的なものを特別視する意識」が変化し、日本的なるものへの自覚や自負、帰属意識みたいなものを感じるようになりました。

 

次の画像もミラノサローネでのものです。パナソニックさん出展のパビリオンですが、主催者から2012年のグランプリをいただきました。パナソニックは太陽光発電パネルや蓄電池、LEDなどを総合的に製造している希有な企業ですよね。それをインスタレーションに、という依頼でした。
太陽光パネルを光合成する葉に見立て、自然界のエネルギー循環を展示しようと考えました。場所は15世紀に建てられた元修道院の中庭で、現在はミラノ大学の中庭になっているところです。その真ん中に樹のような3次元分化した太陽光パネルのパビリオンを建て、昼間につくったエネルギーを蓄電池に貯めて、夜はLEDが光るというものです。
それまではエネルギーのことをあまりよく考えなかったのですが、イタリアの脱原発の動きなどもあり、高い評価を受けました。これはインスタレーションに過ぎませんが、同じ考えで街や建築をつくっていくとこれからの生活環境が変わっていくかもしれないと思います。

 

さて、次は今回の企画で模型を展示していただいた台湾のリゾートホテル「Hotel J」です。これはとても難しい注文を受けました。というのは、リゾートといっても周囲に建物が立て込んでいたのです。台湾の法規に照らしても、新たな建物を建てるスペースが非常に少ないと分かりました。しかもヴィラタイプですから、そんな環境下で独立性やプライバシー性の高いものにしないといけません。
バリ島などにあるようなヴィラの作り方をするなら、周りを壁で囲って監獄みたいなものになってしまい、そんなリゾートへは誰も来てくれませんよね。そこで、それぞれの領域を最大化して共有空間を削るという考え方を捨て、まったく逆の発想をしました。
つまり、個別領域を狭めて、壁になる部分をセットバックすることで視線が変わり、共有領域を増やします。これはロビーからの眺めですが、各ヴィラの様子はまったく見えませんし、自然地形のようなものが出現します。
また、それぞれのヴィラの庭に植える植栽が共有の庭の風景のように見えます。クライアントの意向もあって、この真ん中の渓谷のような共有空間を舟で通って各ヴィラへアプローチする仕組みになっています。ヴィラのそれぞれはこのように柱のない構造です。このリゾートホテルでは、お互いに譲り合うことによって全員が得をするといった結果になりました

 

最後に、同じく台湾・高雄のポートタウンのビックプロジェクトに触れておきます。これは高い評価をいただいたものの最終的には次席になったコンペでした。
このプロジェクトで感じたのは、海外の建築家は、地元の建築家では持てないような視点、発想をできるということ。しかも、街を客観的に再評価できる、ということであり、実際、海外の建築家である僕らはそれを強く求められているのだと感じました。

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