イベントレポート詳細Details of an event

第17回 AGC studioデザインフォーラム
エコハウスのウソ ガラスは透明?

2012年5月25日(金) 開催
講演会/セミナー

建築誌で大きな反響を呼んだ『エコハウスのウソ』。連載した前真之氏は、エネルギーや住環境の研究を続ける立場から、現代建築が抱える「エコ」な課題について、実験や現場の解析データを駆使しながら丁寧に解説する。そこには建築家が普段気付きにくいディティールや日本の気候風土に関する問題も含まれる。雑誌連載と同題のテーマで、とくに開口やガラスの「エコ」について詳しく聞いた。

 


エコは流行? 様式? 実質?

 

昨年、建築誌で「エコハウスのウソ」という連載をさせていただきました。今日はそのガラス編ということで話そうと思います。
あらかじめ結論を申しますと、建築ではガラスについて真剣に考えることがとても大切です。これはお招きいただいたAGCさんに気を遣っているわけではありません。本当にそうなのです。

 

ガラスはすばらしい素材です。しかし、それを使いこなすのは容易ではありません。
というのも、今日のタイトルにあるように「ガラスは本当に透明なのか?」という疑問があります。その答えを後で述べますが、『日経アーキテクチュア』で連載した「エコハウスのウソ」で何を伝えたかったのかと言えば、例えばこういう日本建築ですね、大きな屋根と大きな開口を設けて「夏を旨とする日本家屋」の建築様式が、果たしてどうなのか? という問題なのです。

 

また、今、世の中にはエコハウスというものが非常に流行っています。呼び方はいろいろありますが、だいたいイメージが一緒だと思います。
「南面の大窓+通風重視」というもので、さながら建築の様式のひとつであるかのようにエコが多数出現しています。その”エコ様式”では「大きな吹き抜け」を備えているものも多数あります。

 

私は、建築家の方々や建物を貶めるつもりはまったくないのですが、いくつかの建築を例にしてご説明します。
ちなみに雑誌の連載時は苦情やクレームが殺到いたしました。直接メールで来たものもあります。
「一般紙にあのような専門的なことを載せるのはけしからん」とか「こんな奴が東大の准教授でいいのか」とか、いろいろお叱りを受けました(笑)。まあ、連載のときは私の力不足もありましたし、何より、実物件の例を載せるわけにはいきませんので、本意がきちんと伝わらなかった部分もあると思います。今日は口述なので、いくつかの例を参考に話させていただきます。
繰り返しますが、個別の建築家や建築物を批判中傷するつもりなどまったくありませんので、ご了承ください。

 

さて、あの連載で強調したのは「反・大窓」「反・吹き抜け」というアンチテーゼでした。つまり、安易な大窓や安易な吹き抜けには注意しないといけない、という論理を展開したのです。
もちろん、時にはそういう建築がうまくいく例もありますが、往々にしてそれが「エコ」や「快適」になっていません
私は20年近く住宅を研究してきた者ですが、本当は窓やガラスなどとは縁がないはずだったのです。元来は自立循環型住宅の研究を、これはつくばの建築研究所でやっているものですが、そこに所属していたこともあり、給湯やコージェネといった地味なテーマに取り組んでいました。
ただ諸事情で環境省のエコハウスと関わることになり、全国のエコハウスを多数訪ね歩く機会を得ました。

 

各地では、環境省の指針、国のお墨付きで地元の建築家が建てたエコハウスについて、現場の方々が地元の人向けに説明することになっていました。
ところが、そのエコ(なはずの)ハウスをどう説明していいか、現場の方々がよく分からずに困っていらっしゃった。「何かおかしい気がする」とみなさん言われるのですよ。その“エコ”ハウスで起きていることを見学者にどう伝えていいかわからないというのです。
エコがうまくいっているかどうかも分からないし、設計の意図通りなのかも分からない、という現実がありました。

 

つまり「エコ」は往々にして当たり障りのない、無難な、表面的なイメージに収まってしまっている。ものによって玉石混淆なのに、本当のエコについて実際にはほとんど議論がなされていないのです。だから、本当のエコとは何か? について真剣に議論しなければいけません。
ということで、ここからは関係者にとってあまり気持ちのよくない話をします。
繰り返しますが個別事例を誹謗中傷するつもりはありません。今後、建築をよりよくするための方向性を具体的に考えるために話します。

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