イベントレポート詳細Details of an event

第16回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念トークイベント

2012年4月
講演会/セミナー

石上 実は昨年、展覧会を控えるようにしていて、たとえ出展依頼があっても断るようにしていたのです。でも最後の最後になって……(笑)。

 

佐藤 妹島(和世)さんから「何か出しなさい」と(笑)。妹島さんは石上さんの師匠筋にあたります。展示会の統括としてプロデューサーの1人をなさっていたので、石上さんも断れなかった(笑)。

 

石上 締め切りまでの時間がなく、1ヶ月半でできるものを考えて、出す以上はきちんとしたものにしよう、と。建築展だからガラスのドームをつくってみようということになったわけです。
実のところ僕はドームとか膜構造はあまり好きではありません。というのは、仮設の匂いがするからです。僕にとっての建築は、ある程度永続性があり、時間とともに変化していくものと考えていて、それに対し膜構造のようなものは、仮設的なので魅力を感じないのです。

 

ただ一方で、微妙な空気のバランスによって成り立つ空間も建築のありようの一つとして興味があり、ガラスという耐久性の高い材料を使って空気膜構造をつくるのも面白いと考えました。
とにかく時間がなかったので、最初はステンドグラスのようなものを膨らませることを考えてみました。ガラス自体を変形させるわけではないので、けっこう簡単にできるかもしれないと思ったのですが、何千個というガラスをつなぎ合わせるのは逆に時間がかかる。
しかもよく考えてみると、そもそもガラスもたわむわけで、「変形しないもの」と考えるのをやめ、大きなガラスに空気を入れて膨らませようとしました。それで佐藤さんをはじめ、旭硝子さんにも相談したりして……。

 

太田 佐藤さんは最初からあんなにきれいにたわむとわかっていたのですか?

 

佐藤 まぁ、大変でしたね(笑)。石上さんに新しいプロジェクトがある、と聞くとちょっとドキッとします(笑)。
ドームという方向で何度か打ち合わせて、同じ膨らませるにしても、大きく膨らませる案もあるし、丸く膨らませる案も考えられるし、細長くしてみたりとか、いろいろ考えられる。
そういう形状を考えているうちに「塩ビをジョイントにしてつなごう」となって、手間がかからないように可能な限り大判のガラスを使おうとか、話していくうち、石上さんが「浅いドームに」という案を思いつかれて、それを計算してみると、いけそうだという感触がありました。

ただ最初は小さなピースのつなぎを想定したので「たわみ」までは計算しなかったのです。そして「そもそも浅いドームが本当に実現できるか」と、きっちり計算すると、厚いガラスではコストが合わなくなるのです。

 

一方、コストが合うのは3mm厚ということになり、それだけ薄いと空気圧はそれほどかけられない。もしかすると、石上さんのイメージしているような多角形のきれいなドームではなく、空気マットのようなモコモコした形状になる恐れも出てきたのです。
さらに計算をすすめると、結局は棚ぼたというか、結果オーライで、あのドームのような形になる程度しかたわまないという結果になりまして、実際のところ、構造計算で変形を予想するのはとても難しいのです。たわまなければ多角形になるし、たわみ過ぎるとモコモコになる。かなり不安はありました。

 

石上 やはりガラス単体の構造だと一気に割れてしまうことがありました。実験の途中で何度か割れたのです。
ただ、1枚割れても一気には沈まない。空気がシューと抜けていくけれど、徐々に下がってきた。

 

太田 興味深い話ですね。もっと話したいのですが、そろそろ時間なので、平沼さんにまとめの言葉というか、U-30の感想なども含めてお話しいただきたい。

 

平沼 石上さんと佐藤さんはうらやましい関係ですね。構造家の方々の力で建築家もいい影響を受けたい
逆に建築家が強くなり過ぎると、構造に反したものができてしまうので、お二人の話を聞いていて、非常にいい関係だと感じました。

 

またU-30に関して言うと、実はいろいろな見方があり、例えば「まだ20代なのにそういうイベントのステージに上げて発表してもらうのはどうか?」という意見もあります。ただ、建築に対する価値観が多様化していく中で石上さんのような、いろいろなタイプの建築家が存在してほしいという思いがあります。今回のガラスの建築展もそうです。
様々な素材の作り方、使い方があって、また佐藤さんのような構造家の方々、AGCさんのような素材の専門家の方々に支えていただき、僕らの世代とはまた違う、新しいタイプの建築家が出てきてほしいと願います。

 

太田 ありがとうございました。

U-30やこのAGC studioの取り組みなどを通して、単にガラスを使うということだけでなく、そもそもの物質の理や物質の謎というものを切り出していくことも重要と思います。そういうガラスの活かし方、ガラスの表情などを切り取れるような試みを今後も続けていければと願っています。

パネリストの方々にもう一度拍手をお願いします。

 

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