イベントレポート詳細Details of an event

第16回 AGC studioデザインフォーラム
U-30 Young Architect Japan. 開催記念トークイベント

2012年4月
講演会/セミナー

石上 僕は空間をつくる際に「そもそもその空間は何の役立つのか?」ということを強く意識しています。で、よくよく考えてみると、空間というものは構造のフレームだけでできているものではなく、また仕上げに囲まれて、仕上げで切り取られてできたものでもなく、それらすべてが一体となって初めて空間になる。だから、そういうもろもろをできるだけ等価にしたいと思っています。
力の流れが見えるとか見えないとかではなく、仕上げが構造に伝えられているとか、空間が仕上げに切り取られているとか、そういう境界線をなくしたいのです。

 

また例えば、「空間」と「風景」の違いは何か、ということも考えていて、僕は「風景」も切り取られた大きな「空間」である、と考えています。その輪郭が地平線であったり、山並みであったり、そういうもので切り取られている大きな空間であり、盆地は狭く感じ、砂漠や海は広く感じる空間、であると。
そして、そういう境界線を全部取り払ってすべて等価でつくっていくのが僕の基本です。

 

太田 溶け合って等価になっていくのは分かりますが、ガラスには反射や映り込みというものがありますよね。

 

石上 僕は映り込みも空間のひとつと思っています。例えば、ガラスを単純に見えないもの、透過するものとして使うのは意図するところではなく、ガラスの透明性や空気の透明性もそれぞれ物質性を含んでいるので、その特性に合った効果が現れてしかるべきものと考えます。
空気であれば、曇天の日は遠くにいくほど光が拡散して景色そのものが消えていくとか、ガラスのようにある程度平滑なものであればまた別で、(映り込みを含めて)その透明性そのものが持っている特性が空間へ与える影響も重要です。
だから、当然、反射する光も構造体と同じように使いたいと考えており、つまり僕の中では映り込みも等価なのです。

 

太田 佐藤さんは先ほど、ガラスとアクリルの混在する構造をご紹介いただきましたが、そういう発想をよくされるのですか?

 

佐藤 もともとガラスは扱いが難しいと分かっていて、一般的にはそれに対する恐怖感があると思います。でも私は構造家ですので、例えば石上さんと極めて繊細な構造を実現する際も、安全率を落とすというようなことはしません。むしろ安心要素を盛り込むということを常々しています。それはガラスに限らず鉄、コンクリート、木材などどんな材料を使うときもそうです。

 

やはり適材適所で必要な性能に応じた固さ、強さ、耐久性をうまく組み合わせて使うのが常です。とくに最近は単一でない材料でつくる設計が普及してきましたので、そういうことをいつも考えています。普段のそうした考え方を、ガラスを使うときも同じようにする、ということです。

 

太田 ガラスを板だけでない使い方、先ほど塊の話もありましたが、形状についてはどうですか?

 

佐藤 ガラスには昔から興味があり、取り組んできました。一般にガラスというと板ガラスを思い浮かべるのでしょうが、「ガラス=板」ではなく、例えば溶かして違う形状にしてから使うとか、曲げて使うとか、あらかじめ柔らかくするとか、さっきのドームのように荷重で変形させる、という使い方もできるわけです。
そのようにガラスの魅力は板だけではなく大きな可能性を秘めています。

 

私は2年前から本格的にガラスの構造を研究し始めたのですが、これまでは構造としての研究はほとんどなされていないことがわかりました。やはり、ガラスは恐いのでルーズにしておき、構造には効かせないということが常識だったのです。
でも最近はそれほど神経質にならずに、手すりやキャノピーなどがつくられていますよね。ガラスは非常に古い歴史があるのに、知りたい性能がまだ分かっていないのです。なので、U-30でも板ガラスを使う例が多かったわけですけれど、もっと違う使い方を考え、自由な発想をすればいいと感じました。

 

太田 石上さん、佐藤さんという二人のコラボは建築界にとって幸せなことと感じます。先ほどの「ガラスのバブル」というものも、お二人でどのようにして実現されたのか、ちょっと教えていただけませんでしょうか。

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